かわりゆくせかい

第30話新しい武器って興奮するよな!

 商業いビルの屋上。熱が冷めた薬莢が散乱し、激しい砲撃の後が伺える。

 屋上の端の腰を下ろしお気に入りの煙草を吹かしている。紫煙は軽く風に吹く消され行き先が分からなくなる。

 

 高層ビルから眺める地上じゃ遠く、足元が崩れるような感覚に陥る。今まで俺を支えてきたものがいないとこんなにも弱くなるものなのかと。自らを嘲笑う。


 たかが買い物ができなくなっただけじゃないか。そう考えるならそれでいいのかもしれない。だが目的があったはずだ。蘇生させると。立ち止まるわけにはいかない。

 いずれミコトちゃんが帰ってくるまでしっかりしないとな。


「よし。一先ずは帰るしかないか」


 立ち上がり背筋を伸ばすと。激しい擦過音が空から響く。


「なん、だ。ありゃ」


 どれだけの高さから落ちてきているのかが分からないが黒い途轍もなく太い杭が地上に突き刺さる。

 突き刺さる衝撃に伴い激しい地震が発生する。まともに立つことができずランスを足元に突き刺し踏ん張る。

 地震は止まず汚染区域に聳え立っていた廃墟がいくつも崩れて崩壊していく。もちろん自身が今いるこの高層ビルも例外ではない。


「くっそぉぉぉおおおぉッ!!」


 視界が地面に向け垂直に傾く、俺が倒れているんじゃない。ビルがお辞儀している。

 加速する精神に伴い世界が減速する。ランスモードも解除し、下半身に全力を注ぐ。足を縮め、足を伸ばす。二段階の行動で斜めに跳躍し落下の衝撃を少しでも和らげる。

 全身を銀へと変化させた体は強固であり、着地した地面を獣の爪がガリガリと削りながらも停止する。


「ふぅッふぅッ、ミコトちゃんと紐無しバンジー練習してて良かったな……」


 自ら【ミコト】と呟くだけで、落ち込むなんてなさけないと思う。相変わらず地震は続いている、地平線までに見えるだけでも何本も黒い杭が刺さっていた。刺さった後何をしているのか分からないがあまりいい物には見えない。赤い光を伴うラインのようなものが黒い柱の表面を走る。

 地球の血液を吸い上げているようだ。もしかするとマグマなのか? わからない。


 黒い杭の根元まで近寄ってみる、ギャリギャリと未だ地中に向けて掘削が続いているようだ。表面は光を反射するように綺麗に磨き上げられている、赤いラインは幾何学的でとてもカッコいいSFみたいだ。

 円柱の直径は国道がまるまる潰されるくらいにでかい。何か制御装置などがあれば調べる事ができるのだが掘削中で沈み込んでいってる。

 この円柱が見渡す範囲で数本、もしこの現象が世界各国で起きているなら地球の終わりを予感させるな。


 しばらく呆けていると掘削が停止する。様子を伺うが何も変わらない。どこかに入り口は無いかと一周回るもない。

 試しに触れてみると妙に生暖かい。 


 試しに同化を試みてみる、武器に同化を試みると詳細情報などが頭に入ってくるためだ。

 

「なっ! ぐぅぅぅぅううう!! 離せッ!!」


 銀色に溶けた腕に黒いものが混じり始め逆に浸食を始める。


[;m;oaisbnv;v;nc]

[;nqng:inqvin:v:qvn:qn]

[思考プロトコル解析完了]

[原住知的生物の言語解析完了]

[支配プログラムの注入開始]


[敵性プログ――m;m;eoigng――管理者権限の保有を確認]

[バベル計画推進端末への支援プランを提案]

[第82764567388柱ユニットシステム順次起動]

[ハンガーへ転送します]







「ここは……」


――目が覚めやがりましたか


 三度目の会合か。相変わらず趣味の悪い風景だこと。青黒いマーブル上の空間に数多の瞳がこちらを見つめている。

 目の前には金髪のミコトちゃんの姿をしたナニカだ。


――ちと権限を奪ってやがりましてな。ついでに制御中のリソースも根こそぎ回収して取り込むやがりますよ? 


「良く分からん、そんな凄そうなことをするよりその言語能力を何とかしろ」


――注文の多い男は嫌われるやがれ? ですか? 簡単に説明しやがると柱のとってもう良いそうび奪いやがりました。リソースでできる事増えマシやがる? ですよ?


「それは嬉しいがもう少し説明なんかしろよマジで。ミコトちゃんは無事なんだろうな?」


――もちろんでやがります? ワタシも混じりやがりますしあなたも混じりやがります。広義的にふたりの子供? でやがりますよ? ポ?


「そりゃどうも、ZPやSPによる恩恵は受けているし俺の生命線だ。全面的に協力するし、命令も受諾する。強制依頼を掛ける時はもう少し猶予や相談してくれ。基本的にはことわらないからさ。たのむよ。あと銃器やすくしろよ」


――提案事項を精査、検証、交換条件提示。他の柱のリソースを奪っていやがるですなら条件緩和と支援を約束しやがるです?


「もちろん、イエスだ。相互理解を深めていいけば効率は上がるんだよ? 頼むぞ?」


――理解が深まりやがりましたですです? 相思相愛なのでやがるです?


「もう、それでいいよ……」


――結納金? あげるやがるです? だいじにしやがれです?


一際大きな瞳から銀色の涙が俺の注がれる、混ざり合いドンドン質量を増していく。身体には赤い光のラインが全身に走っている、それと共に脳内にできる事のリストが増えて行く。


[飛行ユニット確認]

[攻撃ユニット確認]

[移動ユニット確認]

[支援ユニット確認]

[高度情報処理端末同期確認]


――この柱の支援かっさらって混ぜ混ぜしたです? えねるぎぃというやつ必要やがりましたがコアと同化させやがったですよ? 好きに改造しやがれです? 


「たすかった。何かあるとき提案してくれよな? 柱の奪い方とかもちゃんと教えろよ?」


――円満かいけつしやがりました。とっとといきやがれです







 目を覚ませば倉庫のようなものの中にいた。ここは黒い円柱の中なのか。5mほどある四角い黒のキューブが規則正しく並んでいる。試しに触れ同化。今まで以上の速度で浸食が進む。これは攻撃飛行ユニットか空戦機というやつだな。陸戦タイプもあるらしい。試しに起動を念じると外殻がせり出して、頭部腕部が出て来る、キューブの上半分が持ち上がり下半分が回転し真ん中から二つに分かれて脚部が展開される。最後にバイザーのようなものが緑の蛍光色の光を放ち起動が完了する。機体が立ち上がると10mほどのロボットになり、端的に言うと。


「かっけぇぇぇぇぇぇぇええええッ! これ貰っていいの? 駄目って言われても貰っちゃうよ?」


 他にも武装が積まれておりそちらも画一的にキューブ状に製造されており。レールガンのような形に変形したり、ブレイド状になったり近未来SFを現実に持ってきたかのようだ。


「ミコトちゃんはまだ目が覚めないのかな? ミコトちゃんの好きな遠距離装備沢山あるよー」


『ど、どこですかぁ~? 私のぶきちゃんどこにありやがるでぇすぁ?』


「良かった……ミコトちゃん覚えてる?」


『ちゃんとりかいしてるでぇすよ? ■■■さんにいろいろもらったでぇす。死人さんわたしがいなくてさびしかったでぇすかぁ?』


「ああ、寂しかったよ。どこにもいかないでくれよ?」


『ふぇ、死人さんがデレたでぇすよ~春です春がきましたですぅ』


 二人で暫く会話するも早速装備の回収をする。


『死人さんのコアには専用機が格納されてるからいつでもどこでも展開できるですよぉ? こいつらは新しいお部屋[ハンガー]に全部しまっちゃうですぅ』


「ミコトちゃん[お部屋]なくなっちゃったの?」


『それとこれはべつですよぉ? [ハンガー]は生身で入室も出来ますしぃ他の人も入れるですでぇす』


「榴弾砲の収納問題が解決できたな。だけど武装が一気に陳腐化したよな……」


『死人さん以外の機体はエネルギーに問題がありますから一概に必要ないとはいいづらいですよぉ?』


「そかそか、とにかく根こそぎ装備も施設もハンガーに強奪しようぜ」


 次々に機体の頭部に飛び乗り手を触れる。機体制御を乗っ取ると操作権限をミコトちゃんに渡しハンガーに運んでいく。使い捨てのミサイルや、マシンガンのようなもの、ビームガンや、ビームライフルまである。1mほどの小型キューブを起動させるとバイクのようなものに変化し少し地面から浮いている。

 

 どの装備もエネルギーキューブというものが必要でこの柱では生産できないもので数は限られている。そう考えるとコアに同化させられた俺の専用機はかなりの利点だな。無限というわけにはいかないが運用しやすいだろう。


 運動場のサイズのハンガーにワクワクしながらキューブを運び込んでいく。簡易宿泊施設もあるみたいで、いろいろな武装の確認に妄想が膨らむ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る