第28話掃除屋死人です?

 ギルド会館の通りを防塵ゴーグルにパーカーとリュックだけという軽装で練り歩いている、図体ができくなってしまったので多少は目立つか声を掛けてくる奴はいないようだ。この通りに入ってくる前に風俗店のキャッチに声をかかられた時は緊張してしまったけどな。


 ギルドZKゾンビーキリングの裏口に回る。デバイスでギルド長に連絡し開けてもらう。すんなりと倉庫に案内され、そこにある椅子に腰かける。


「随分と派手にやったじゃねえか」


 恐らく榴弾砲の事だろうか? 指名手配はもうされているしな。


「爆発音の事か? あれは試射してたんだけどね。まさか聞こえていたとは」


「あったりめーだ、ここの地区は外壁沿いの地区だからなうちにも聞こえて来てたぞ? しかも標高やや高い所からの砲撃だろ? 防壁都市以外に人の住んでいるとこないから良く響くんだよ」


「もうここまできたら開き直って不明な武装勢力ってことにしよう、どうせ数キロ離れても聞こえるだろうし」


「そこで撃たないを選択しないあたりクレイジーだぜ」


 そりゃたった一日遠距離射撃だけで数百後半のZP稼げるならやらない手はないよな。


「でだ、これが必要物資のリストだ、それでだな近々ギルド同盟にマザー級討伐命令が出される予定だ。軍との共同作戦でな逃げれないんだ。出頭しなきゃギルド資格停止命令が出るんだよ」


「なんだそれ、マザー級はレールガンも爆撃も効果薄いとか言ってなかったっけ?」


「電核石を惜しげなく注ぎ込んだ新型兵器を投入するんだとさ。効果確認していないおもちゃの為に強制命令なんざやってられねえよな? 軍単体でなら話は早いが要は肉壁扱いだな」


 頭の血管が切れそうになってきた。


「そいつら殺して問題ないか? もしくは兵器の破壊か」


「また兵器を作られたら意味ないからなぁ。こればっかりは防壁を担っている軍部と西部防壁都市のシステムだからな。おまんま食い上げになるんだよ」


「せめてゴミくずを殺すくらいはさせてもらう、強硬派のリーダーか悪そうなやつ見繕ってリスト化できるか? 家族がそんな扱いされちゃ黙ってられねえよ」


「悪徳ギルドのリストは作ったが軍人はまだだな。結構な数がいるぞ? 大丈夫なのか?」


「問題ない。むしろありがたく殺させてもらうよ」


「そうかわかった数日待ってくれ。殺意が抑えられないならギルドでも掃除してやってくれ。あんた今凄い顔してるぜ?」


 顔を触ってみても変わってないが、殺意とか分かるんだろうか。気を付けないといけないな。暗殺的に。


「ここの倉庫にリストの物資を出してもらっていいか? 火器は後日防壁外で受け取る、事前に連絡するからその時に頼むな」


「了解。リスト順にだしていくぞ」







 倉庫の半分くらいの物資が山のように積まれている。弾薬が一番多いいくらいだな。おまけで嗜好品に酒も大量に出している。美味しくない兵糧はやっぱり断られてしまった。なんかあんまり終末世界っぽくないな。


「ほんとにこんなに援助してもらっていいのか? 相当な金額だぞ?」


「問題ない。むしろ姉妹が世話になったお礼だ。いつでもとは言えないがこれくらいならあと五回ほど保証はする」


「これだけでも500万IC以上はするぞ? とにかく遠征前にはありがたい。防具一式本気で助かる。生存率がダンチだ」


「他に必要な事や連絡事項があるか? ああ、ギルド員の暗殺は帰り際にやっておくよ、まだそいつらギルド会館に居るんだろ?」


「ああ、いまの時間帯はいつもいるぞ。ハンターなのに収入源は風俗街の斡旋だからな」


「反吐が出るねえ。楽しみだ」




◇ 

 



『ミコトちゃん[カメレオン]取得できる?』


『今日の稼いだZPなくなりますけどいけますよぅ。取得っと』


 身体が周囲の景色に溶け込んでいく、体だけ。


『ミコトちゃんこれ全裸ネイキッドスタイルになるしかないの?』


『ですですぅ。あ、でも舌と尻尾が伸びますよぅ?』


 尻尾が3mだったのが6mにこれブレイドモードと同じ射程か。したが1mの伸びる。舌で殺して汚物を舐める趣味はない、ごはんの時に使えるかもしれないが行儀が悪いよな。後は掌に小さな棘のようなものを発生させて壁面に登れるようになったのはでかい、ぶっ刺して登らなくていいし、爪で捉えつつ掌で補助すれば快適に上ることができる。全裸じゃなければな。


『ミコトちゃん俺は腹を決めたよ』


『ちんちんでぇすか?』


『淑女はそんな事いっちゃ駄目ですよ?』


『はぁいですぅ』


 路地裏に潜み装備解除する(全裸)周囲に体組織の色を溶け込ませ同化する。こりゃ夜だったら気づかねえな、どこの地球外生命体だよ。




 



 顔面に揃いのタトゥーを入れた男たちが裸の女を侍らせながらソファーに座っている。女たちは顔に痣を浮かべながら裸の状態で男の靴足を乗せられている。

 匂いのキツイパイプを燻らせながら品のない笑い声をあげて姿はクズの見本市場だ。


「姉ちゃんよぉ、貸した金はいつ返すんだ? 母ちゃんに習わなかったかぁ? 借りたものは返しましょうってなぁ? あぁん?」


「うぐッ、ちゃ、ちゃんと持って、き、きたじゃないですか? な、なんで?」


「お金借りるには金利ってもんがあんだよねぇ、たったこれっぽっちのお金じゃ延滞金もはらえねえぞぉ?」


「そ、そんなの聞いでないで――ごべぇ」


 裸の女の腹が蹴り上げられ、壁に激突する。蹴り上げた足で女の顔を踏みにじる。


「ああッ! 何口答えしてんだよッ! 払えねえんなら稼げるとこ紹介すっからさぁ? 今から行こうぜ? な?」


「そ、そんなの軍に言えば――ぐぅ」


「その軍人さんの許可もらってんだよねぇ~ざんねんちゃーん、契約書はぁよく読みま――カペッ」


 ソファーに並んで座っていた男達の顔が数珠つなぎに頭を寄せ合う。よく見ると何か鋭いものに耳の中から貫かれ血が噴き出している。


「な、なんだこりゃッ! なにがいがるんだッ! 糞死ねッ!」


 叫び散らしていた残りの一人の男が壁に叩きつけられ何かに踏まれている、万力で握り潰されるような圧力が、男の頭を潰さないように丁寧に掛けられている。

 手に持っていた契約書は破り捨てられ、男は耳を切り落とされる。


「ぎゃああぁ、いだい、いだいよぉ」


「そこの女服を着てここから逃げろ、ホレ、このギルドの連中からご丁寧にプレゼントされたデバイスからIC抜いてあるから、それと核石の通貨なほれっ」


 見えない何かにICと核石を受け取った女性は、訳が分からないまま服を着て部屋から出て行く。

 男の四肢を鋭い何かが蝶の標本のようにピン止めされている。


「いだいぃぃうぅうううぅ」


「自分の痛みに弱い奴が人の痛みを分かるわけないもんなあ~なんだっけ? 人の嫌がることはしちゃいけませんって母ちゃんに習わなかったかぁ?」


「しゅ、しゅみま、いだあぁぁ」


 ぐりぐりと刺された傷口を抉りほじられる。木製のフローリングは鮮血で染まっていく。


「んでさあ、今このギルドに居ない奴の場所と協力している軍人ここに集めてくんね? そしたらさあ生きて日の目を浴びれるかもよ?」


 もう一つの耳も切り落とされる。


「はひっはひっわ、わかりばした」


 寝転がっている顔面が弾け壁に後頭部がぶつかる。


「わ・か・り・ま・し・た。リピートアフタミー?」


「わ、かり、ました」

「呼び出すとき不自然な真似すんじゃねえぞ? 

一人でも欠けたらおめー死ぬかんな?」


 男は仲間と取引先に新しい女の味見と献金の連絡を入れると小一時間後連絡した奴らがギルドのロビーに集まって来る。待っている間に仲間内で下世話な会話を楽しそうに始める。


「あ、お疲れ様です大尉、最近どっすか? いい女見つけましたか?」


「あーいたんだけどな、うっとおしいギルドがあってそこ潰すように根回ししてんだわ。可愛い姉妹なんだけどよ、ガードが固くてさ」


「あー阿岸姉妹っスかハンターでも美人で有名ですもんね」


「そそ、良く飯に誘ってやってんのに付いてこねえの、軍人の仲間さそって薬使おうか話してんだ――ごぇ」


 軍人以外の男達は見るも無残に頭が破裂しロビーに脳味噌がぶちまけられている、軍人の足は関節が逆に折り曲げられ何度も何度も壁に背を叩きつけられている。

 軍人の耳元には誰が喋っているのか分からないが、こう囁かれている。


「時間はたっぷりある、情報を洗いざらい吐けば生きていける、かもよ?」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る