第27話ドカンと花火を打ち上げようぜ?

 何とか榴弾砲を庭に出すことができたその代わり部屋の壁が悲惨な事になってしまった。簡単なベニヤ板を固定し風が入らないようにしている。収納しないのかって? 入らねえよ。

 

「…………」


 朱里がとても怒っていらっしゃる。目の前にそっとチーズケーキを購入して置く。


「……」


 目の前に装飾が丁寧で綺麗な鞘の日本刀を置く


「……もういいわよ」


 許された。


「今度から装備を購入するときは気を付けなさいよね? 危ないんだから。それとちゃんと部屋の修理しなさいよね。まったく手間のかかるお父さんだこと」


「わかった。俺でもあれはないと思う。長距離射撃でいい物はないか探してたんだ」


「あんたどこと戦争するつもりよッ! 街中ではガトリングまでにしときなさい」


『ガトリングもりっぱな重火器ですよぉ~この親子うまがあうですぅ』


 よせやい、照れるじゃないか。







 昨夜に向かいの部屋へ移り睡眠をとる。精神的な気休めの為朝早くに起きてしまう。あまり音を立てないように玄関から外に出ると朝露が落ちておりひんやりとした空気が気持ちがいい。ゆっくりと空気を味わいながら庭に向かう。

 

 片手をブレイドモードにしながら対人を想定して素振りを行う。最大限まで刃を薄くすると空気を切り裂く音すらしなくなる。人体の首など斬られた事すらわからず生存しそうだな。

 最大射程は今の所変わりないが細く薄くすれば5mほどは伸びる折れはしないがあまり固い物に攻撃するのには向いていない。人間の頭蓋なら余裕だ。最近使っていない尻尾が寂しそうにしているが、いつか使ってやるからな。試しにコップを掴む訓練をしてみよう。

 

 振り抜く銀の刀身に朝日が照らし始めている。身体能力が上昇していることに満足しながら家へ戻る。姉妹も起きてきているようだ。


「おはよう、死人あんた朝早いわね。何してたの?」


「ちょっと素振りをな、身体能力の調整を兼ねて」


「確かに何か身長の伸びてるわね、腕周りの凄くなってるし」


「おはよ~お父さん~」

 

 またポカをやらかさないように訓練していたとは言えないな、断崖絶壁紐無バンジーなどしたくない。いや、行けるかな今なら。







 三人で食卓を囲む、今日はあっさりと鮭定食だ、健康的な食事は心が穏やかになるな。


「私達ギルドに行くけど死人はどうするの? デバイスに連絡先入れておいたから何かあったら連絡してくれればいいけど。それと通信可能範囲もあるからね、汚染地域や地下には届かないから気を付けなさいよね」


「そうだな、射撃と砲撃の訓練かな? 夜にはギルドに向かうが遅くなる際には一報を入れるよ」


「ドッカンドッカン都市に聞こえないように気を付けてよね? 軍人がなだれ込んでくるわよ?」


 ヤバい、断崖絶壁で試射しようとしてたわ。


「……」


「ちゃんと釘させて良かったわ。なんだかあんたの行動原理が少しわかって来た気がするわ」


「お姉ちゃんお父さんと相思相愛なの?」


「ちがうわ静里、お父さんがアホなだけよ」


 何も言えません。ごもっともで。


 姉妹でバギーに乗り鉄扉をくぐって仕事をに行く。ヒモ旦那の気持ちが分かるな。さてと、榴弾砲どうしよう。


『頑張ってぇーパパー』


今現在ひいこらと山の頂上に向けて榴弾砲を自ら牽引している、森に入るころには持ち上げて走っているかもしれない。厚さにもよるがコンクリートをぶち抜く膂力を手に入れたので4トン程度持ち運びができるようになった。だがもともと地面に設置して砲撃する為、手に持ち砲撃するなんて考えて作られていない。しようと思えばできるのが恐ろしいがせめて砲脚を排除して使用したい。


「なあミコトちゃんコレ余分なトコを分解して使えたりするかな?」


『できるですよぅ。反動制御は副腕を地面に突き刺せばだいじょうぶですよぅ~ちゃんと壊れないように発射機構と砲身を残してくださいねぇ』


 早速分解、これは無理やりぶった斬れないな。専用工具を購入、必要のない稼働する四脚を解体、回転させるレバーや台座付近も取り外す。これ切らないと無理だな。バギーのバッテリーに変換コネクタと装着、グラインダーを使用する。バチバチと火花が散るも我慢しよう、小一時間作業してようやく完了。

 一度同化してミコトちゃんにいらない部分を指示してもらって良かったな。危うく制御装置ぶっ壊すところだった。


「なんか試射するまでが大変だな」


『ありがとうですぅ~ただの置物になるところでした』


 断崖絶壁の崖でまたひと悶着が起きたが何とか移動する、3トンが2トンになるのはかなり違うが重さは大型の普通車だな。走る速度は落ちるのでお部屋の拡張を最優先にするつもりだ。先にやって置けよとは言わない約束だ。いいね。


 前回目玉の怪物に襲われた神社に到着、ココなら好きなだけ試射できるし。射角も取れる。


「ミコトちゃんに全部任せていい? 指示してくれれば分かるから」


『あいあいさぁ~。そこはかっこよぉ~くいきましょ? ゆーはぶこんとろーるって言えば良いでぇすよ』


「仰せのままに。You have control」


『 I have control 射撃体勢へ移行 アンカーセット 目標確認 射角制御完了 砲弾装填 get ready?』


「ok」


『open fire!』


 激しい爆発音とともに砲弾が射出される、目標としていたゾンビの集団のど真ん中に命中。再び装填。砲撃。弾着確認。射角調整、完了。装填。砲撃。弾着確認。


――ゾンビーポイントを獲得しやがりました。


 砲身冷却の為に煙草を吸いながら周囲の景色を楽しんでいる。でかい薬莢があちらこちらに転がっているのを気にしなければ。射程30kmは伊達じゃない事が分かった。

 なんでみんなしないんだろうと思ったけれどマザーがいるんだったわ。雑魚を殺してZP手に入れられるし核石を必要としない俺からするとメリットしかないな。巨人に榴弾砲をぶちかましても這い寄ってきそうだもんな、奴ら外からの攻撃に強すぎなんだよ。


「ミコトちゃん着弾誤差どんな感じ? あとZPどれだけ溜まったかな?」


『超楽しいですよぅ~、目標に着弾するまでにラグがあるのでそういう誤差を自力で修正すればいけそうですぅ。さすがにマザー級の走行に合わせるのは頑張らないといけないでぇす。ZPは今の所100ちょい溜まりましたぁ』


「うしうし、効率良いな。一先ず夕方まで周辺一帯の雑魚を殲滅しよう、マザー級が視認もしくは移動してたら即撤退しよう。近寄って強制ミッションとかされたらしんどいからな」


『やったぁ。まだまだ撃てるですよぉ~』


「では、You have control」


『 I have control』


 

 夜になって帰宅してみると朱里に正座するように言われた。畳の上に正座すると静里が膝に乗って来た。


「あんた、私の言いたいことわかるわよね? ね?」


「?」


「確か榴弾砲を試射するっていったわよね?」


「ああ、距離を開ける為にダム向こうの神社まで移動したのだが」


「数発までなら違和感感じるぐらいでいいわよ? 朝から晩までドッカンドッカン爆発音が聞こえたおかしいって思うでしょ!? 緊急でハンターに偵察命令がでたじゃない!? 明日発生源周辺の偵察任務出されたのよ! 誰かさんと分かってるからギルド長にコッソリ安全だとは進言したけどねッ! しかもしかも砲撃してゾンビ放置してたでしょ? 同業者が核石漁りの争奪戦よッ!? はあっはあっ」


 そっと、バニラアイスとペットボトルの紅茶を差し出す。


「んくっ。ふうぅ。ちゃんと榴弾砲持って帰って来たよね?」


「ああ、もちろんだ、整備しないといけないからな」


「なら薬莢は? 榴弾砲なんて軍の装備でもなかなか無いからね?」


「……………………ピラミッドみたいにして遊んでそのままです」


「天誅ぅぅぅぅぅううう!!」


 拳を握りしめて頭頂部に拳骨を振り下ろされてしまった。朱里が痛いだろうに。手を抑えて悶え苦しんでいるようだ。


「と、に、か、くぅ。ギルド長に言っておきなさい大丈夫だって。今から行くんでしょ? あ、コレ殺害リストね。暇な時にでも殺っておきなさい、社会のゴミだから」


「あいあいさー」


「あんた、たった一日で慣れすぎじゃない? はぁもぅ……。お母さんも何でこんな人がいいんだか…………」


「阿岸はイイ女だぞ?」


「そうじゃねえッつってんだよボケェッ!」


 また拳骨が、あー、痛そうにしてる。アホ可愛いな。こいつ。


「お父さんお部屋の修理は?」


「忘れてました」


 ほんまごめんて。

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