第26話ドジはするものだ?

 静里の部屋に新しいお姫様のようなフリフリベットに猫足ソファー、ピンクのカーテンに沢山のぬいぐるみを購入する。あとは化粧品関係にゴシック調の服に下着にエトセトラ……。


「どうだい? 気に入ったかい?」


「うん! お父さんありがとう」


 お父さんありがとう……なんていい響きなんだ……これが父性か。静里はまだ十五歳、姉妹で頑張って来たんだから甘やかしてあげないとな。


「欲しいものがあったらすぐに言うんだよ?」


「後ね。近接武器と防具一式が欲しいのっ! 予備の分もね!」

 娘が逞し過ぎる。


「ただいまー、死人いるー?」


「お帰り―お姉ちゃん、あのね私の部屋すごいんだよ!?」


「わかったわかった、あとお父さんじゃないくて死人って呼びなよ?」


「お家くらい、いいじゃない、一杯プレゼントもらったんだよ? 見て見て」


 喜んでもらえて何よりだ、ギリ三桁に届かないほどZP使った甲斐はあったものだ。


「おかえりなさい朱里。欲しいものがあれば言ってくれ。なに、待たせた報いと思って遠慮することはない」


 静里の部屋を見せられ羨ましそうな顔をされたら買ってあげたくなるじゃないか。


「え、本当? 遠慮しないわよ?」


「ああ、もちろんだ」


 静里と違い大人の落ち着いたシックな家具で揃え、服などはパンツスタイルのボーイッシュな服装が多いようだ、他にもコンバットスーツや特に細かく刀剣類を指定してきて博物館でも作るのではないかと思うくらいの量を購入、カタログを見ながら注文された。普段使うためなのか弾薬や手榴弾など倉庫に吐き出させられたな。


 見事三桁を越え、これでもかと保存食や日用品まで出した。出し切った。

 遠慮をするなということは魔の言葉だと思う。これも勉強だな。


「甲斐性は見せれたか朱里?」


「いいとこ見させてあげたのよ? パ・パ? でも甲斐性は世界で一番と思うわよ?」


 パパァ……。


『死人さん私にも買ってくださいねぇ~』


『どんとこい』



 家具の設置や物品の整理で夕食の時間になってしまった、もちろんZPで料理のフルコースだ。娘たちの美味しそうに食べる姿をチラリと横目にウイスキーをチビチビと飲む。家族ってこんな感じなのか。


「むぐむぐ、そういえばギルド長が明日都合のいい時に来てくれってさ」

「了解、夜間にこっそり向かうかな」


「ああ、そういえば解像度は悪いけど手配書出てたわよ? これ。それとハザードマップと識別信号出さないデバイス、後でチェックしといてね?」


「ありがとう、随分画質が荒いな。分かりにくいならそれでいいが」


「あとこれ、殺されると困る関係者や知り合いのリスト。まあ理不尽じゃない限りポンポコ首を飛ばさないでしょうけど利用できる奴らもいるってことよ。あとは親しい人間でも沸点の低い馬鹿もいるわけよハンターってやつは」


「そんなに殺人鬼のつもりはないのだが、喧嘩して首飛ばしてもまずいよな。確かに因縁をつけられたら首を飛ばしてるなと自分でも気づいたよありがとう」


「あんた自覚無しだったのね。まあクズは率先して殺して欲しいわね特に女の敵。質の悪いギルドがあってね、糞みたいな金貸しで暴利なのに脅して契約書にサインさせてるとこあんのよね。んで男はゾンビの餌か肉壁、女は奴隷みたいにはたらかされてんのよ」


 ふむ、殺されていい人間は都合がいいな、そのあたりもギルド長に調べてもらうか。


「わかった、そういうやつは率先して教えてくれ。殺し屋ではなく掃除人としてゴミを殺すよ」


「明らかにヤバい奴しかお願いしないわよ、あんたを道具かなんかと思っちゃいないからね? いい?」


「はいはい、ちゃんと判断してから殺すから大丈夫だよ」


「お父さんもお姉ちゃんもご飯中に物騒な話しないの~」


「「了解」」


 ご飯を食べ終え、倉庫で使用した武装の整備をしていると朱里がやってくる。


「死人、部屋は二階が数部屋余ってるから好きに使っていいわよ? あ、間違っても俺は倉庫でいいのだが……とか言うんじゃないわよ? あんたは可愛い可愛い妹ちゃんのお父さんなんだから身内扱いよ? 間違っても添い寝とかは……まあおいおいね」


「わかった。受け入れてくれてありがとう。色々迷惑かけるが家族の為に死力を尽くそう」


「私にとってもお父さんなんだから……死力とか言わないの。あんた、なんか本当に死力尽くしそうだからね? 守ってねお父さん」


 フリフリと手を振って倉庫を出て行く朱里。これはデレなのか?


『娘ちゃんたちかわいいですぅ~ミコトもがんばっちゃいますよぅ~』



 整備も終わり、二階の奥の部屋を空ける。ココは……阿岸の部屋か、戻ってくるまで使うのは止しておく。隣の部屋を開けると多少埃っぽいが空の部屋がある、ソファーにベットにデスクを購入し配置していく。灰皿をテーブルに置きZPの使い道を考える。


 新規に能力を取るか、火砲の購入かな。


ソフト:[格闘Ⅰ][射撃管制MIKOTOⅡ][殺人Ⅲ]

ハード:[基礎能力Ⅰ][筋力Ⅰ][変形同化Ⅰ][耐性Ⅰ][機械獣Ⅰ][お部屋Ⅰ]


 遠距離武器はアンロックされたし近接能力も人間なら問題ないがマザーの防御力を抜ける力が欲しいな。


[力][貫通力][打撃力][ソート]


[巨人の血脈Ⅰ]1000ZP

[四腕四目]1000ZP

[鋼の血潮]1000ZP

[騎兵のプライド]1000ZP

[竜の本能]2000ZP

[射突の心得]500ZP

[細胞活性]1000ZP


残1753ZP 残49SP


 分からない、説明が欲しい。ん、詳細をバージョンアップしますか? もちろんイエスだ。


[巨人の血脈Ⅰ]

[ちからあがるからだおおきなるかも]1000ZP

[四腕四目]

[うでとめがふえるきもい]1000ZP

[鋼の血潮]

[からだがぶきになるかも]1000ZP

[騎兵のプライド]

[らんすしようにほせい?]1000ZP

[竜の本能]

[りゅうっぽいかっこいい]2000ZP

[射突の心得]

[とっつきができるろまんだね]500ZP

[細胞活性]

[なんかつよくなる?]1000ZP


 ………………(#^ω^)ピキッ

 ビークール、ビークール。少しは進化した、君は立派だ。だがな、これは説明ではない、感想だ。怒ってもしょうがないこれは立派だ。褒めるべきことだ。落ち着け死人。


 ……仕方ない。[巨人の血脈Ⅰ]を選択。[射突の心得]はもう少しZPが溜まったら選択しよう割安な感じがする。

 コアという種族の為かアップデートの痛みはない。身長がとうとう2m程になり腕も足も二回り大きくなる。胴回りは変わりないが腰の振り方が段違いにスムーズだ、ギチギチに限界まで筋肉が絞られ筋繊維の一本一本が生まれ変わっている。巨人という種族は凄まじい物なのだな。とうとうコンクリートを余裕でぶち抜けるようになったかもしれない、感覚だけはな。

 それに伴い腕力、脚力、防御力と満遍なく上がっている。当たりだったな[巨人の血脈Ⅰ]。ランス、ブレイドを出すとやはり太くなっていて、[射突の心得]が手に入ると貫通力は凄まじいものになりそうだ。


『死人さぁん重機えらんでいいですかぁ~?』


『もちろんだ好きなものを買いなさい』


[ハウザー[榴弾砲]]

[とってもとおくまでとどくよ]500ZP


残253ZP 残49SP


 榴弾砲か全長10mもあるものだなm888か。ミコトちゃんが選んだなら問題ない。明日にでも試射することにしよう。自走する戦車はまだみたいだな。というか俺が走れば戦車より早いので設置をして砲撃すればいいだろう。

 部屋の中にドンと榴弾砲が出現する。する? ああああッ!


「………………」


『………………てぃひ☆』


 部屋の窓を突き破り全長10mで砲身が空へと掲げられている。ドタドタドタと走る音が階下から聞こえてくる。


「どうしたのッ…………」


「……………………ごめんなさい」


『てゅいまてーん』


 朱里。お父さんはやっぱお父さんだよ。詰めがとっても甘いんだ。


「捨ててきなさいッ!!」


 はい、てゅいまてーん。

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