第21話クズな旦那って俺の事?
部屋の隅に無造作に置かれていた荷物を回収する、テーブルにハンドガンとマガジンが置かれていたので装填しスライドを引きセフティーを掛けホルスターへ。こいつらの持っているアサルトライフルと核石を回収する。
弾丸はどうとでもなるしな。ZPで購入せずにここらへんで節約できるのは良いねお部屋に収納できるし。
外壁に備えつけらているレールガン欲しいな、もらっちゃおうかな。もう二人も殺したし一緒か、久方ぶりのガスマスクを購入パーカーのフードを被りグローブを装着。
レールガンは詰所の上部に二門設置されていたな。ここの防壁は西部方面で検問所は三か所か遠いので次の機会に回収するか。
足音を立てずに部屋を出る防壁に沿って部屋が並んでいる為に廊下は意外に長い、両サイドに部屋が並んでいるのは刑務所替わりなのかな? 取り敢えず武器庫を探そう、守りの要なので必ずあるはずだ。
似た作りの部屋を素早くチェックしていく、ドアを開く瞬間に目の前に軍人がすかさずブレイドモードでハサミのように首を添え質問。
「武器庫はどこだゆっくりと方角を向け」
「き、貴様ッ!」
「
首の両端が切れ始め血がしたたり落ちる。ゆっくりと顔をスライドさせ停止する。
「ご苦労」
噴水。
先程教えてもらった方角の部屋をチェックする。お、本当のことを言っていたようだ。よほど命が惜しかったらしい。施錠してあるがサックリとブレイドで切り裂き開錠。部屋に侵入する。
久しぶりに心躍る光景だ、小型レールガンらしきものが四丁もある、懐かしきミサイルランチャーにグレネードランチャー、ガトリングまである。もちろん全部回収だ、レールガンが常備されているのは核石で低コストで運用でき始めたからなのだろう。小型化も進み手持ちのレールガンとかカッコいい。
詰所の上部にあるレールガンは二メートルほどあるが俺の身体能力上関係ない。
詰所の出口に居るのだがドアを少し開け確認すると防犯の為か出口が一か所しかない、窓には格子が。
格子は切れないのだろうか? 試してみる錠前が切断できたので斬鉄は行けるはずだ。ブレイドの刀身を厚くして幅広にし、格子の間を押すように――斬る。
あっさりと斬鉄ができてしまった、ブレイドの強度かなり凄いのかもしれない。爪を皮膚じゃ全然違うからね。剣鉈の活躍がとうとう藪を刈るだけになってしまった。まあ正しい使用方法なのだけれどね。
四肢の爪先を鋭く尖らせ外壁登っていく、レールガンの銃座には誰もいないみたいだ。まずは一丁目。下から見えるかもしれないが素早く壁面を横に移動、こちらには人がいるな交互に後退で担当するのだろう。
運が悪かったね壁面に張り付いたままで尻尾を伸ばし首に巻き付けると引き抜く。蛇腹剣のように首肉をそぎ落とし絶命。切り口が納得いかないなあ。
レールガンを回収、銃座から下を眺めるとこちらを指さして
何か叫んでいる。盛大にバレたか、ドアを開き中の様子を伺うと何人か走り寄って来る。
副腕にアサルトフルを装備十分に引き付けてから発砲、次々と倒れて行く。副腕があると顔を出さなくて済むのは利点が多いな。
階段の方向へ逃走しつつ息がある軍人の頭部にブレイドを突き刺していき、アサルトライフルを全て回収していく。
「ミコトちゃんお部屋はどんな感じ?」
『これ以上はむーりーでーすよぅ~寛げなくなっちゃいますぅ』
「分かったここまでにしておくね。ありがとう」
◇
西部防衛都市内は意外にも活気があり、かつての生活を取り戻しているように見える。その代わり武器を携帯している人が多く、軍人の数も多い。
その辺を歩いている優しそうなご老人に話しかけてみる。
「すみません。道を尋ねたいのですが少しいいですか?」
「はい、いいですよ。どこに行かれるのですか?」
「ハンターが集まる地区を探しているのですがどちらか分かりますか? あと治安の悪い場所も教えて欲しいです。危険を回避したいので」
「ああ、はいはい。防壁沿いの――ここですね、さらに奥へ行くとハンターのギルト会館が密集してるので少し治安が悪いかもしれないですね」
「親切にありがとうございます。お礼に茶菓子でもどうぞ、美味しいですよ。不要でしたら捨てられてください」
「あら、ありがとう。捨てたりしないわ、頂くわね。気をつけて行ってらっしゃいね」
「ええ」
とても品のいいご老人だった、世の中のみんなも丁寧に会話ができればいいのにね。大体いつも殺伐としている気がする。
◇
スラム街、というわけではないがどこか草臥れた雰囲気を漂わせるハンターの会館の地区に到着する。
建物は画一的なのに、【味】が滲みてくるものだと思う。
先程から何人かのハンターらしき者に声を掛けているのだが、なかなか知り合いがいないようだ。阿岸が軍人だった為に、もしかすると娘の職業がハンターか軍人かと思ったのだが。
「すまない」
肩にからアサルトライフルを掛け、ベテランの空気を漂わせている大柄のハゲに声を掛ける。
「あんだぁ?」
「阿岸と言う女性を探しているのだが心辺りは無いのだろうか? 友人の娘なのだが、もちろん向こうに確認を取ってもらってからでも教えていただければありがたいのだが。お礼はもちろんする」
「……嬢ちゃん達も大変だな、人気者ってのはよぉ」
「勘違いしないでもらいたい。彼女の母親と約束したんだ、必ず会いに行くと。残念ながら彼女の死に目に間に合わなくてな。もちろん娘と会うのに問題があるなら結構だ。物資や金銭での支援がしたかったのだが」
「…………ちょっと、待ちな。心辺りはある。お前の名前はなんだ?」
「死人だ。十五年前の約束を履行しに来たと伝えてくれればいい、友人が娘に伝えていれば分かるはずだ」
「……わかった。少し待て」
そういうと男は後方に下がりこちらを警戒しつつも、どこかへと連絡を取っている。娘さんと知り合いなのかどうかは分からないが、手掛かりくらいはつかめると良いと思う。
しばらく通話をしたのち、連絡が取れたのかこちらに戻って来る。
「とりあえずお前の名前に心辺りがあるそうだ、こっちへ来い」
「分かった。そうしよう」
ギルド会館の通りを過ぎて行き奥の方に建てられている一際大きなギルドの玄関をくぐり抜ける。受付のカウンターを通り過ぎ会議室と書かれたプレートの部屋に案内される。
「先に入ってな、もちろん荷物は預からせてもらう。チェックはさせてもらうがウチのギルドの看板に掛けて盗んだりなんかしねぇぞ?」
「了解した。細かい配慮痛み入る」
手荷物と武装を渡し、一応上着やブーツの中の身体検査もこちらから申告する。どうやら娘さんはギルドに大切にされていそうだしな。
恐らくこの部屋には監視装置も設置されているので少しは安心してくれるだろう。
◇
しばらく待機しているとドアがノックされたので入室を許可する返事をする。ドアを開け入って来たのは先程の大柄な男と、綺麗な長髪をした――阿岸の生き写しだった。やや背は高いがくりくりとした瞳がそっくりだ。思わず涙腺が崩壊して涙ぐむ。
「――すまない。呼び出してなんだが。少し……待ってくれ」
右手の平で目元を覆い涙を流す、別れ際の彼女の姿を思い出してしまったからだ、支援するだの言っておきながら呼び出してきた男に泣かれるなど彼女も困惑するだろう。
「すまない、あまりにも友人に似ていてな。我慢することができなかったんだ」
「いいわ、母さんの為に流される涙は嫌いじゃないわ」
「俺は隅にいる。勝手に交渉してくれ」
気を取り直し姿勢を正す、あまりボロが出ないように正確に話そう。
◇
「最後に小型バイクで彼女を見送ってからの今だ」
市街地での戦闘や作戦内容、約束など大まかにいった、もちろん能力は省いてだ。
「なんで……何でもっと早く来なかったのよォッ!! あなたが母さんを守らなかったからッ! あんたが早く迎えに来なかったからッ! ずっとッ! ずっとッ! 母さんはずっとッあんたを待ってたのよ!」
「――そうか。」
「誰とも付き合わず、結婚もせず、私達を育てながらずっとゾンビと戦ってたのよッ! 帰ってこれる場所を作ろうねってギルドまで作ったのに……あんたは」
死んで長い事眠っていたからな。言い訳はしないが早く目覚めれば苦労は掛けずに済んだかっも知れないな。
「子供を作るだけ作って帰ってこない旦那なんて死んでしまえ糞野郎ッ!」
「――えっ? 今なんて?」
「だから子供を作るだけ作って……ってあんたまさか知らなかったの? さいってー」
彼女は椅子を蹴倒し部屋を出て行ってしまった。室内には気まずそうなハゲの大男と育児放棄したらしいクズな旦那だ。
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