第20話盗賊に人権はねえよ。な?
ランタンの光を灯し鍋に火をかけたまま二階の部屋から出る、部屋を挟ん奥の曲がり角に身を潜ませる。しばらく待機しているとライトを持ち、片手にハンドガンを装備している男がやって来る。ZPで購入せずとも鹵獲するチャンスだな。
トリガーに指を掛けているので発砲させないように殺す。
部屋に入ろうとした瞬間に後方より忍び寄り副腕で口を塞ぎもう片方は心臓をくし刺しにする、それと同時に両手首を切り裂きハンドガンを回収。死体が倒れて音を立てないようにゆっくりと降ろす。
良かった、発砲されることなく回収できて。
多少血液で服が汚れたが、ハンドガンを手に入れることができて大満足だ。
出入り口とは反対の窓から地面に飛び降りる、足音が多少立つがまだ気づかれていないようだ。足元も見えない暗闇の中だがやけに明るく見える、猫の目も光量が少なくて明るく見えると聞いたことがある。その代わり暗闇の中に瞳が光って見えているかもしれない。
奴らの後方に回り込む都合良く五人が一塊になっている、情報も欲しいのでリーダー臭い奴を残しておく。銃器は二人か。リーダーがアサルトライフルを所持している。隠し持っているといけないので確実に殺すとしよう。
後方より接近する、足音に気づくが四人の首筋に狙いを定め外側に向けブレードモードにし一気に振り抜く。頭部が四つ空中に舞うも気にせずにアサルトライフル持つ手首を蹴り上げる。万歳の状態に腹部に蹴りを突き入れ、倒れたところでアサルトライフルを蹴り飛ばし制圧完了。後方では死んだことにも気づかず鮮血の花が咲いている。
◇
手足を縛り念のために首にも縄をかけ逃げられないようにする。最初は抵抗していたが質問を優しく繰り返しているとあまり喜びにに失禁までしやがった。
『違うのですよー』
『わかってるよ。心読まないでくれたまえ』
奴らはハンターで、ゾンビの心臓にある
発電の触媒になり、液体燃料より発電効率が天と地のほど開きがあるらしい。なんでもガソリン車は、ほぼなくなり驚異的な自動充てんのバッテリーが開発され非常にエコな車が主流みたいだ。オフロードが流行るのは世紀末ならではだよね。もちろん頂きますとも。
残念ながらあれから十五年がたっているらしいそれは色々と変わるわな。世界の状況はも一緒で原子力も火力発電もなくなってるって、近くに核石が有ればそうなるよね。ちなみに汚染地域として近寄れないんだって。
海外からとの接点はやはり核石の取引がメインらしい、国や地方によって熱変動したり、電力、磁力、様々な種類の核石があるらしいなんでも日本の核石は大電流バッテリー要として世界的に人気らしい。それにより食料の輸入や銃器も手に入れてるんだとさ。
なら何でゾンビがまだいるんだと思うけれど。ここ十年でゾンビが死体もないのに増えているらしい、とうとうゾンビウイルスで増えるのではなくマザー個体がいるらしくポコポコ増えるんだって。だから生存権も増やさずいくらでもどうぞってしてるらしい。いつかスタンピードとか起こらなければいいね。ほんとに。
円通貨は無くなり、粉末状に加工しても効果を発揮するので、キューブ状に加工し通貨がわりにしてるらしい。ハンターは講習を受ければ免許が交付されると。
とにかくかなりの量の情報と鹵獲品が手に入った感謝して痛みもなく一瞬で殺してあげなきゃね。
「情報ありがとう助かったよ」
「へい、どうもです! それで助けてくれるって約束で――」
――死ね
ああ、クズでも血液の花火は綺麗だねえ。
◇
ロハでバギーと核石の通貨までくれる何て優しい人もいるもんだ。三台もあったけれど作りは簡素で価値も分からないためにバッテリーだけ回収して建物の裏に置いておくことにしたいつか役に立つかもしれないしね。室内の死体だけ外に放り投げる。
鹵獲品のチェックで、アサルトライフルのBKというアジア全域で乱雑に作られたもので、試射もしたけれど命中精度はそれなりだった、ハンドガンは初期に装備していたグロッキュさんだったのは意外だった。どれだけマイナーチェンジしているか分からないけれど割かしいい物が手に入ったので大切に使ってあげよう。
銃器の手入れをしていると眠たくなったので睡眠、半覚醒状態で警戒を怠らないようにしよう。
◇
清々しい朝だねぇ。
『そうですかぁ?』
「そう思いたいだけだよ。なにあの生物」
昨日の夜放置していた死体にどう例えたらいいんだろう、ブリッジした人間に頭は無く背面に縦に開いた大口が付いているんだよ。たしかスカベンジャーって言うんだっけ?
「さすがに近づくと襲い掛かって来るか」
『ですねえ、ファンタジーで例えるなら森の掃除人スライムですかぁ~?』
「いや、スライムのような益虫じゃないでしょあれ」
仕方なく核石の確認の為スカベンジャーの心臓らしき部分の肉を切り開く、本当に数ミリほどの大きさしかなく血液の排出に手間がかかるくらいだ。
「これさZP使える俺のメリットあまりないよね?」
『町でドヤ顔できるんじゃないですかぁ~? 俺なんかやっちゃいましたってぇ?』
「ある程度は確保して、欲しいものが有った時に頑張ればいいかな」
バギーでアスファルトの上を軽快に走らせていく。排気ガスが出ない電気モーターで内部に磁核石を使用しているらしく使用電力が少ない上に発電のできるバッテリーもあれば核石が流通の中心になるのもうなずけますわ。
◇
地図によるとそろそろ西部防衛都市っていう所に着くんだけど、バギーどうしよう。
「一番小さいバギー選んだつもりだけどお部屋に入りそうかな?」
『何とかいけますよぉ~、キッチンルームにスッポリでぇす』
「よかった、拡張なるべく早めにするからね」
装備はホルスターにハンドガンと腰に剣鉈とリュックだけにしておこう、一応武装してないとおかしいしね。徒歩で向かっていると見上げるほど高い防壁が検問は厳重で城壁の上から銃身が長くSF映画にあるレールガンのようなものを向けられている、検問を行っている軍人らしき人は全く肌の色が見えないくらい重武装だ。
次々に検問に人が飲み込まれていく中、俺の番になる。
「検査だ」
「はい?」
「陰性だ。身分証は?」
「ありません」
「なぜだ?」
「えっと、山の中に住んでいたので――」
次の瞬間四方から銃口を向けられ変な汗が流れる、なんだかこの展開懐かしいなあ。
「両手を頭の後ろにゆっくりと上げ跪けッ! 武装を解除させてもらう!」
ここで暴れても問題は無いが都市に用がある為大人しく従う。手に手錠を掛けられ裏の詰め所らしき場所に連行される。
「座れ」
「はい」
「質問に正確に答えろ。名前、年齢、住居、目的だ」
「阿岸、二十五歳、住居は元都市高速の向こう側です、目的は核石の換金です」
「都市高速の向こうだと? あのあたりは汚染地域のはずだ、それとあの銃はどこで手に入れた?」
「えっと、廃墟に泊まっているときに盗賊みたいなやつらが六人程襲ってきて返り討ちにしました」
「ちょっと待っていろ、調べて来る。おい見張っていろ」
「ハッ!」
尋問していた軍人が部屋を退出していき背後の軍人が見張りを担当するようだ。部屋は無機質でテーブルにスタンドが置いてあるだけだ、いつの時代もこういう所は変わりないのだなと呑気に考える。
しばらくする先程の軍人が戻ってくる。顔をしかめている様子をみるにあまりいい予感がしない。
「確かにハンター六人の外出記録があり帰還予定日も今日だ、しかし銃には盗難届が出ている」
「はあ」
「よって逮捕だ。身分証もなく盗品を所持している。ハンター登録していないもの以外が武装することを禁じられている」
「はあ、不用心っすね」
顔面を殴られる、痛くもないがとりあえず吹っ飛ばされる振りをする。一緒に後ろの軍人も巻き込んでやる。
「舐めた口をきくな。公務執行妨害も追加だ六人も殺害、武器の違法所持、盗難。死刑だな」
「襲われて殺されるのが正しかったんですかね? 外に住んでる人がいても捕まえるんですかね?」
「この国では防壁内以外の人間はゾンビだ。とっとと食われておけば良かったものを。犯罪者め」
「そうか。ご指導ありがとうございます」
「うむ。大人しく牢に入っておれ」
「はい。死んでください」
両手を開き前方に一閃、回転するように後方の首も刈り取る。
「やっぱいつの時代も軍人さんは変わらないねぇ。阿岸以外」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます