先の事は分からないから面白いんですぅ
第19話墓参りに行こうじゃないか?
トボトボと至るところが崩落した元都市高速道路の上を歩いていく、なぜが全裸ので性別の分からないゾンビもどきを始末するとZPが手に入れることができた。しかも2ZPと今までの倍だ、こりゃお得とばかりに廃墟が集落になっていたので殲滅する、流れ出る血液が緑色で内臓が極端に少なかった。
果たして生物として成り立っているのか分からないから取り敢えず【もどき】と命名する。
【もどき】は腕の筋肉が以上に発達しておりファンタジー的に言うとドワーフのようなずんぐりむっくりの体系をしていた。皮膚にランス形態がやや通りにくいが問題なくハラワタをぶちまけてやった。
幼女ちゃん、いや
俺の元部屋をシミュレートしたお部屋が可愛いうさぎのぬいぐるみやテーブルにレースの敷物がされていたりして俺のスペースは押し入れに決まりそうだ。
もちろん俺の装備もある程度整えることができた、懐かしい伸縮性を重視したプロテクターに剣鉈を二本腰に下げ、背に矢筒とコンパウンドボウを背負っている。人がいた時用のカモフラージュだけど遠距離攻撃は弓で対応、火器を手に入れるまでZPが足りないからね。
そうなるとZPは増加しているのは嬉しい、まだまだ数十程度しかないが集落らしきものを狩って行こうと思う。
◇
ZPで地図を購入したのだが、あまり参考にならない。ボロボロの都市高速道路の道の形で現在地を推測している。看板が辛うじて見える時があるので何とか迷わずに行動できる。そういえばZP購入できるものはいつの時代を参照しているのかが謎だ。適当にスキャンして再生しているのだろうか。
もうそろそろ阿岸の住んでいると思われる住宅地が見える頃だろう北部に辿り着くまでにそれだけの時間がたったのだろう、想像できない。
やはり無事な家屋は一軒もないもしかしたらという祈るような気持ちでやってきたが現実に直面すると――堪えるな。
『死人さん大丈夫ですかぁ? まだ決まったわけじゃぁないですよう』
「ああ、気を使わせて悪い。それでも確かめたかったのかもしれないな」
ボロボロのアスファルトの上を歩いて行く、道なりに行くとぽつりと大きな広場に出る。崩れた塀に囲まれており和風の木造建築だったのだろう、割れた瓦などが落ちている。何かヒントは無いかと周囲を探すと大きめの岩が不自然に山際に置かれている。岩の前には枯れた花束が落ちている。いや供えられていたのか?
恐る恐る岩を調べてみると。
「――そうか……間に合わなかったんだな」
[阿岸家之墓 阿岸 宗男 阿岸 薫子 阿岸 桜]
◇
岩の片隅に座り煙草をゆっくりと吹かす。肺が煙を満たすが懐かしく心地いい。精神衛生上、人間としての活動を疑似的に再現しているらしい。眠くなるし腹も減る。摂取してもエネルギーとして分解されるらしいが。三大欲求をなくすと人間として狂ってしまうみたいだ。
先程、お墓代わりである岩を綺麗に磨き、雨に晒されないように屋根付きの小屋を建てた――屋根をトタンで作るのには苦労したな。
大量の日本酒をお供えし大岩に酒をかけ流すと瓶に残っていた酒を飲み干し地面に座り込んでいる。
「あの時は戦闘ばかりで酒を一緒に飲むことができなかったよな」
「一緒に食べた鍋うまかったよな」
「身体を洗ったときとても緊張したよ、まさか誘惑してくるなんて思いもしなかった」
「目覚めた時、抱き締めていると良い匂いがしたな」
「バイクの二人乗り楽しかったよな」
「最後の別れの時君は立派な軍人だったよ」
「考えてみれば三日ほどしか一緒に居なかったんだよな」
「会いに来るのが遅れてごめんね」
『死人さぁん』
「ん? どうした」
『ZP溜めれば蘇生できるんじゃないですかぁ~?』
「…………………………だな」
『条件が分からないので罰当たりかもしれませんが遺骨を回収するのですぅ』
「了解」
◇
大岩を持ち上げると荒い作りの骨壺からひと欠片ずつ回収する、名前が掘られていたので誰の骨片か分かっているが念のため回収。
もし阿岸が家族の蘇生を願うなら一緒に頑張ってZPを集めるのもいいだろう。
「ちょっと気が抜けてしまった」
『私もうっかり忘れてましたですぅ』
「なんでも購入できるが売りのゾンビーポイントだもんな」
『ですですぅ。もしかして蘇生の条件はZPが肉体でSPがたましいとかじゃないですかぁ?』
「――そうかもしれないなZPは物質的なものが多いしな。魂が欲しいならSPで生贄を捧げよ、みたいで少し怖いけど」
『両方揃ってからの方があんぜんですねぇ、魂の無い肉体は腐敗しそうでこわいですぅ~』
先程は酒に溺れて死にそうだったが目標ができるとこんなにも気力が湧くものだな。
「そういえば娘の名前が無かったよな?」
『ですデェス、お花を供えられたのも娘さんじゃないですかぁ? 恋人とはおもいたくないですけどぉ』
「――うん。恋人とは思いたくないな、時間がかなり立っていたらできても致し方ないが心が折れる」
『その時は私がいるでぇすよぉ? ずっとずうっといっしょでぇす』
「ありがとう、これからもずっとずうっと一緒な」
頑丈そうな錆びにくいボックスにお墓参りセットを入れ小屋の隅に置いておく。ココに来るのが誰か分からないがこれだけあれば役に立てるだろう。
ステンレスプレートを購入する。爪の先を伸ばし俺の名前と、ここに来ることが遅れた理由を彫り込み伝言とする、もちろん死んでましたと書くわけにもいかず、避難先が遠かったと書いておこう。恋人でしたと書ける立場ではないのが辛い。
◇
ドローンを上空に飛ばし手元の端末で確認する。どうやら確認できる範囲は人間の生存権では無いようだ。
「ミコトちゃん。端末やスマホと同化したら網膜に投影したりできたりする?」
『できるでぇすけど、結局持っていなきゃいけないからいっしょですよぉ?』
「うまくいかないもんだね」
『機能そのままっていうわけにはいかないですぅ~? 何かしらの技能を取得するでぇす』
「電波Ⅰとか?」
『恐らくできるです? それよりもZPで端末買った方がコストかからないですよぉ?』
「……だな」
来た道を戻りながら地面のをよく確認していく、足跡など何かしら残っていれば方角の参考にできるからだ。住宅地を抜け元国道に辿り居つく比較的アスファルトが残っており、轍が深くできているので恐らく走行できる車両が存在している可能性がある。
今まで向かっていた国道沿いに歩いていこう、いつか誰かに遭遇することを祈りながら。
◇
お墓の小屋を建てるのに時間がかかったため早くも日が暮れてしまった、廃墟の二階に拠点を設営し休息する。アウトドアでおなじみの焚火は焚いていない、煙が発生しゾンビ共に発見される恐れがあるからだ。
光が抑えめなランタンを設置しカセットコンロでレトルトを温める。懐かしさを感じながらも脳内でミコトちゃんも一緒に食べている。現実で食べないと時間が過ぎないからな。一瞬でエネルギーも充実感も得られるが現実では夜のままだ。朝に出発したいのでこうしてのんびりと時間を楽しむ。
「外で食べるご飯ってなんでこんなにおいしく感じるんだろうね? あ、ミコトちゃんに外に居る事を自慢してるわけじゃないよ?」
『大丈夫でぇす、感覚共有できるです~』
「それならよかった。――ミコトちゃんお客さんだよ。怖かったら見ないでね?」
『問題ないですよぉ? そのやさしさにキュンとくるぅ~』
どうやら何者かか接近している感覚を研ぎ澄ませると足音が。六。規則的で秩序だっている事から人間か。ようやく会えたか。
一先ず気づかない振りをする。耳を澄ませていると小声での会話が聞こえてくる。
「おい、何人いそうだ?」
「周りにバギーはねえっすね、人数少なそうっス」
「女だと良いな、楽しめるわ」
「女で一人とかねえだろ?」
「ちょっと友好的に話して来い、一人だったらさっさと殺して来いよ」
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