第13話生活用品が充実すると幸せになれる。
なるべく高いビルへと非難、玄関ロビーは広々としておりゾンビは多かったが処理できる範囲ではあった。
ゲーム会社の所有物件なのかやたらポスターやグッズが散乱している。平時であれば凄く楽しそうに見れたのにな。
階段を上がりつつ妨害工作を行っていく。デスクや社内自販機等重たい物のを階段に倒して侵攻し難くする。
遠隔操作で起爆できるプラスチック爆薬を複数購入。もしもの時には起爆して逃走しよう。
爆薬10ZP×15
「あなた凄いとは思っていたけれど随分力持ちなのね。人間重機みたいだわ」
「まあ強く無ければ死んでいたしな。ホレ行くぞ」
屋上に上がり地上を見下ろすと虫が集るようゾンビが蠢いている。
長尺ワイヤーとフックを購入。そろそろ1ZPくらいなら0ZPで処理してくれないかなと思う、月末請求とかさ? これから腹いっぱい稼ぐから検討だけはしてくれよな。
フックにワイヤーを頑丈に結び付けかしめを取り付ける。投擲する際に破損しないよう強度を増やしたいからな。
「それをどうするの? 駅向こうには距離がかなりあるわよ? まさか――」
「そう、ぶん投げるのさ」
重たい金属性のワイヤーフックを軽く頭上で振り回し始める。
「少し離れて」
空気を切り裂く音がドンドン大きくなっていく。下半身の筋力に全力を出すよう命令する。
ブーツを切り裂き現れた長い爪はコンクリートの床を離さないように食いつく。ミチミチと膨らむ下半身はプロテクターを弾き飛ばし浅黒く変化する。下半身ほどではないが肩回りのプロテクターも悲鳴を上げだす。
風圧に伴い風が巻き起こり始める。目標を定め全力で――投擲。
投擲されたフックは放物線を描き、暗闇に溶け込んでいく。
フックの先端は視認できなくなったがワイヤーが凄い勢いでシュルシュルと減っていく。やがて衝突音が微かに聞こえた後、ワイヤーの張り具合を確認をする。
無事、向こう側のビルに到達し引っかかってくれたようだ。安全の為にもう一本ぶん投げるけどな。
「あなた人間やめてない?」
「俺にも自信が無いわ。だが頼ってくれても構わんよ」
◇
引き続き向こう側のビルにワイヤーを投擲し同じように作業を繰り返す。
ワイヤーに滑車を設置し、遊具のターザンロープ状態にする。安定性はなく恐る恐る向かいの壁面にダイビング、勢いが凄くて本気で死ぬところだった。
無事ではないが辿り着くことができたので、ワイヤーフックの位置を調整し固定作業を行い、無線で阿岸に状況報告する。
「少しこちらで軽い掃討と逃走ルートを確保してくる。警戒しつつ待機していてくれ」
「了解。気を付けてね」
階を下るたびにゾンビを殲滅していくが、そこまで荒らされてなくゾンビも多くは無かった、地上階まで降りてくると玄関付近のゾンビを掃討する。
できる範囲の殲滅と視認できる範囲での逃走ルートも確保していく。
行きより安全な帰り道で困ったことはビルの間のワイヤーが高低差があるため帰還しずらかった。ワイヤーを手で引きながら上って来るのは人力のスキーリフトかと思えたくらいだ。
屋上に着地すると呆れた顔をした阿岸が出迎えてくる。
「オカエリナサイ」
「なんでそんな片言なんだ? 向こう側の安全確保終わったぞ。大分待たせてしまったな」
「いいわよ、あなたは十分頑張ってくれているわ――――ありがとう」
「――あ、ああ。」
まともに感謝された事が無かったために少し面を食らってしまった。嬉しいものだな、かなりの体力を消耗してしまったので今日は休もうかな。一日で辿り着くとは思っていないからな。
「今日はここで休息しよう。肌寒いから塔屋に行こう。お湯を浴びることはできないが貯水タンクの水を浴びることはできるぞ」
「そうね。少し休ませてもらうわ。緊張感が続いて体力が限界なの、申し訳ないけれどZPでインナーとタオル用意できないかしら?」
「それぐらいなら問題ない。むしろ積極的に言ってくれ、君が足止めしてくれたゾンビもいるし気にしないでくれ」
◇
屋上の塔屋にて見張りながら装備を解除し濡れタオルで身体を拭く、肌寒い季節でもここまで着込んで戦闘行為を行えばかなりの汗を掻く。
お得と言えばいいのかどんぶり勘定と言えばいいのか分からない。
顕著なのは銃器だ。拳銃、小銃、機関銃、狙撃銃、投擲銃、と雑に纏められている。物質の生成が容易ならば質量はソファーの方が大きいはずなのにだ。
恐らくゲーム的にすることで理解しやすく、やる気も出るように誘導されている。
今の所困ったことは無いが誘導されるのは面白くない。意思疎通はできないからどうしようもないけどな。
詳細の説明とポイントのバランスをもう少し考えて欲しい。こんなことを考えていればアップデートの時に直してくれるかもしれないとい淡い期待だ。
ソファーとテーブルを設置して煙草をプカプカ吸いながら網膜デバイスを操作する。基礎情報を確認する。恐らく変わっていないだろうが明日の戦闘の準備をする為だ。
個体情報:ヒューマノイドⅡ型
ソフト:[格闘Ⅰ][射撃管制Ⅰ][殺人Ⅲ]
ハード:[基礎能力Ⅰ][獣の因子Ⅰ][ロッカー+][身長+]
タイトル:[指名手配][警羅官殺し][自衛軍人殺し][民間人殺し][盗賊殺し][ゾンビ絶対殺すマン][芋スナイパー][獣の系譜]
残522ZP 残274SP
[獣の系譜]が嫌な感じなんですけど。確かに変身が初期よりスムーズに行えるようになったな。鱗も固くなっている。これは不可逆なタイプかな? ゾンビがいなくなった時に討伐されないように強くならないといけないな。
ZPの増加は駅構内のと逃走ルート確保する際に掃討したからだ。SPは非表示にしてください。そうそう大規模戦闘は起きないよ。起きないよね?
グレネードランチャー200ZP
ガトリングガン250ZP
ミサイルランチャー300ZP
なぜか急にポップが浮き上がり赤い太枠でアピールしてくるこれを買えと。明日が待ち遠しくてしょうがないのだろう、ここまで介入してくるとは。
「それならもう少し安くしろよッ!」
思わず叫んでしまった、文句を言っても安くはならない、それはそれ、これはこれということなのだろう。
どう考えてもグレネードランチャーとミサイルランチャーの組み合わせしかできないため購入。弾薬はおいおい増えるZPで随時購入して行こう。残り22ZPかぁ、戦前に豪華に鍋でもしますか。
◇
カセットコンロに鍋を設置してゆっくりと煮る、コトコトと煮こまれる具材が食欲をそそる、肌寒い夜には鍋だよな。
片手間に照明や暖房器具を設置したりしていると水風呂が終わったのか阿岸がドアを開け帰って来た。
その姿はプロテクターを抱えスポーツブラ姿にタオルを腰に巻いているだけの状態だった。
内心の焦りを頑張って見せずにチラ見する。素早くスウェットの上下を購入し手渡す。もちろんチラ見する。
「すまない。先に渡しておけばよかった、寒いかっただろうから暖房器具で温まってくれ」
「ふふ、ありがと。もう少し見てもいいのよ?」
「いや、俺も水を浴びてくる。鍋を見ててくれないか?」
肌寒い夜空の中、下着とインナーを脱ぎ捨て水を浴びる。思ったよりも冷たい水は肌を引き締めるな、髪の毛を洗っていると側頭部の辺りに固く小さなしこりを見つけた。
「とうとう角まで生えて来たのか、どうやって角で攻撃するんだよゾンビの臓物に顔突っ込みたくねえぞ」
洗い終わり体の水分をふき取り上下共に新品の防刃のインナーを着る。下着類は使い捨てにしている。落ち着けて選択ができる拠点なら問題ないのだが。
塔屋に戻ると鍋はすでにできているようで器に盛りつけられている、こういう所に気を使えるのが母親なのかなとボンヤリと考える。
スウェットを着ている彼女はとても娘がいるようには見えず、女子大生でも通用しそうだ。口には出さないが。
人気のないビルの屋上が、若い女性の家みたいで変な気分だ。
「ありがとう、用意してくれて。やっぱ水風呂は寒かった」
「そうよね、私も死ぬほど寒かったわ。それと暖房器具はありがたいわ、早く食べましょう」
ソファーに二人で肩を寄せ鍋をつつく、ポン酢とゴマダレを贅沢に使用し交互に味わっていく。危険地帯の真っただ中なので酒は飲めないけどな。
「ふふ、美味しいわね。ZPで購入した鍋でも問題ないようね。ゾンビを殺して拠点以外に困ることは無いのかもね」
「補給物資が大切だからな、武器弾薬あれば死なない限り戦える」
「あら、好戦的なのね。死なないでね?」
「詰めの甘さで死にかけているから保証はできないな」
それから穏やかに鍋を食べ終わるが戦闘の連続のせいで凄く眠い、ソファーに寝転がると睡魔が襲ってくる。
このソファーの柔らかさと人の暖かみ心に染みる。
「おやすみなさい。先に休んでね、あなたはとても頑張ったのだから」
返事も出来ずに頭を振り肯定だけする。意識が落ちる際、額に柔らかい感触と良い匂いがした。警戒せず人前で寝るのは久しぶりかもしれない。
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