ドキ!ワク!ヒロイン登場?
第11話新たな出会いか。
検問はあっさり抜けることができた。あの雰囲気は俺のことを分かっているような感じだったね。
もちろんめちゃくちゃ睨まれていたが顔にはさっさと市街地に突っ込んでゾンビと一緒に死んで来いって目で訴えていたね。
軍用トラックに鹵獲品たんまりで良くも顔を出せたなって? いやぁ照れるなぁ。
◇
――ゾンビーポイントを獲得しやがりました
利用していたトラックをバリケード代わりに次から次へと襲い掛かってくるゾンビ共の頭を撃ち抜いていく。
勿体無い根性で車線の多い国道をトラックで爆走していたらゾンビが
鹵獲品の弾丸は切れ、全方位ゾンビだらけ。両手にアサルトライフルで乱れ打ちしながら手榴弾を投擲している。
――ゾンビーポイントを獲得しやがりました
――ゾン――ゾン――ゾン――ゾン
こんな状況にも拘わらず通知ログと小気味良い電子音でDJやってやがる、よほど嬉しいのかスクラッチまでしてきやがる。今までチマチマゾンビを殺っていた事にストレスでも抱えていたのだろうか?
逃走経路を確保したいのだが国道が広すぎた、ドンドン死体が積みあがるたびに汗が顎に滴り落ちる。そろそろグレネードランチャーを購入を検討し始めたころ眼前のゾンビが撃ち殺されていく。
「こっちッ! 援護する」
やや低めながらも透き通る綺麗な呼び声に即座に反応、火力を側面に展開、商業ビルの屋上からの援護みたいだ。分厚いガラスできた大きな扉に銃弾を叩き込みそのままダイナミック入店する。
体当たりによって破壊されたガラス扉が周囲にまき散らされる、躓きそうになるも前転で受け身を取り停止したエスカレーターを駆け上る。
胸に引っ掛けておいた手榴弾のピンに両手の人差し指を刺し込みバタフライ泳法のように後方へ振りかぶる。遠心力によりピンが抜け追いかけて来るゾンビの集団に
破砕音。それほど効果は無いが嫌がらせだ、ビルの中頃まで登れば見失ったのか追いかけて来るゾンビはいない。
身体から緊張感が抜けたのか筋肉が弛緩する。コツコツとエスカレーターにブーツ音を響かせながら煙草を咥え火を付ける。
かなりの汗を掻いたため今の時期の肌寒い空気感が心地いい、ガスマスクはドス黒い血液塗れの為に投げ捨てる。
熱いシャワーを浴びたい気分だ。
血濡れの装備で最上階につく、援護してもらったものの警戒は怠らない。ガスマスクを新しく購入時いつでも戦闘できるよう装備を整えておく、両手にハンドガンを装備しゆっくりと人の気配がする方に銃口を向ける。
「銃を降ろして。あなたに危害を加えるつもりはないわ」
先程の援護をしてくれた人物だろうか、自衛軍人の正式装備に身を包み肩からアサルトライフルを下げている簡易防疫の為か俺と似たようなガスマスクを着けている。
「そんな猫みたいに威嚇しないでよ。可愛いく見えるだけよ
自衛軍人らしき人物はゆっくりとガスマスクを脱ぎ、こちらを見つめる顔は少し悪戯そうに口角が上がっている。髪型はショートで顔が小さくヘルメットがぶかぶかだ、目がクルリと大きく下手をすると未成年にみえる。
始めて友好的な自衛軍人だがいつまでも警戒しているわけにもいかないので、ハンドガンの弾を抜きホルスターに収納する。
「先程の援護感謝する。その名を対面で呼ばれるのは初めてだが死人だ」
友好の証にガスマスクを脱ぎ軽く会釈する。マスクを脱いだことに驚いたのか彼女は目を見開いている。
「驚いたわ案外いい男じゃない、まぁウチの最高に可愛い娘ちゃんが一番だけどね」
「そうか、言われた事は無いが誉め言葉として受け取っておこう。自衛軍人なのは見て分かるのだが俺に対して思う所は無いのか? 背を向けて撃ち殺されたくは無いのだが」
「まぁ、無いわけではないけど。こんな市街地の状況に自衛軍は何してるんだって気持ちが強いわね、さっさと駆除すればいいのに封鎖しかしないんだもん。あ、私軍やめてるから」
「その武装はなんだ? 傭兵でも始めたのか」
「まー、傭兵ではないかな? 実は市街地を抜けて北部にある実家に娘と両親が恐らく残っているの。何度も救助をお願いしたんだけれど断られてね、我慢できずに装備をそのまま持ち出してココに居たんだけど」
「俺をたまたま見つけて援護してくれたのか。いや、何か言いたそうな顔しているな? もう分かっているようなものだがな」
「んー、下心はあったつもり。一緒に家族を助けに行って欲しいなって。ダメかな? 無理を言っているのは分かるけど」
ヘルメットを脱ぎだし綺麗に頭を下げて来た、打算ありきで援護されたが実際助かったのは本当だ。むしろ今まで丁寧に対応されたのが初めてで感動物である。涙が出そう。
顎に手を当て考えるふりをしてはいるが内心全力で協力するつもりだ、自衛軍は脱退しているし、家族を助けるついでにゾンビをぶっ殺せばいい。
「顔を上げてくれ」
右手のグローブを外して彼女に握手を求める。満面の笑みで握り返されてしまった。その身体からは考えられないほどブンブン右手を上下に振られてしまっている。そんなに嬉しかったのだろうか。
「ありがとうっ! 私の名前は
「わかった、阿岸。持てる力の範囲で協力しよう」
◇
ゾンビが昇ってこれないようにエスカレーターに簡易バリケードを築き、窓際にソファーとテーブルを配置する。テーブルの上には市街地の北部の地図を拡大したものが広げられている。他にも携帯ガスコンロで火にかけられている鍋の中にレトルト食品が茹でられている。
阿岸が地図に赤ペンで印をつけながら説明を始める
「現在地はここね、私の実家はここ。市街地南部から北部までの距離はかなりあるわ、国道で車で行けたら早いのだけれどゾンビが雪崩のように群がって来るわ」
「高架上にある鉄道の線路は利用できないか? 中央付近までならゾンビをクリアすることができるんじゃないか?」
「んー降りてからの中央区を進むのは不安だけれどルート的にはかなり安全に距離を稼げそうね」
「線路を降りてからの中央区のルートには、都市高速付近まで慎重に進めば車両を調達して高速道路を利用すればなるべく早く迎えると思う。ただ完全に安心できるルートではないがな」
「そうね。私もその案は悪くないと思う、中央駅から首都高速のルートだけ慎重に行けばね」
「さらに詳細なルートは現場の状況を見て考えるしかないか。お、カレー出来てるぞ」
ガスコンロの火を止め袋の先を摘まみご飯とカレーのレトルトパックを取り出す。ご飯のパッケージをピリピリと捲ると甘みのある匂いがふわりと漂い食欲を刺激する、銀色のカレーの封を切りごはんに掛けると暴力的な香辛料の薫りが刺激で堪らない。
「レトルトなのに馬鹿にできないよな、凄いうまそう」
「美味しそうね。今時のレトルト食品は具がこんなにも多いのね」
「ある程度階下の食品回収してきたから着くまでには持つと思うぞ」
「あら頼もしい。それとゾンビが集まるから火器類をなるべく使用できないのだけれをどうするの? さっきも派手に銃弾をバラまいていたけれど」
「これを利用する」
胸をポンポンと叩くと目の前に黒い枠の[ロッカー]が出現する。手の先のが暗闇に消えるがどこに何があるかは理解している。口を開けたままこちらを唖然と見ている阿岸にコンパウンドボウを渡す。ややドヤ顔をしながら。
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