File No.15:新兵器コピー人間の襲来
――あたし、石ケ谷ヒロミ!
この間は無事に戦闘ちゃん達の再就職も無事に果たして、暫くは一時の平穏が訪れた。
……といっても、自宅の喫茶店『リリィ』の自分の部屋で、一日中トクサツール産のテレビで特撮ヒーロー観てるだけなんだけどね。
トクサツールで産み出したテレビは今までの特撮やヒーロー物を全部見せてくれる優れもの。映画もOVAもドンとこいなもんだから、あたしも退屈しないで済むの。
『えぇ? ◯◯レッドが二人!?』
『どっちが本物なんだ!?』
『皆! 俺が本物だ、信じてくれ!!』
『騙されるな! こいつは偽物だ!!』
――今ちょうどヒーローに化けた悪の怪人が、鉢合わせに合ってどっちが本物か偽物か揉めてるシーン。
こーゆーのって戦隊ヒーローとかは仲間達の信頼を試したり、悪行をヒーローに擦り付けた時の汚名返上だったりで重大なシーンでもあるんだけど……
「本物のグローブとブーツが白で偽物が黒なの分かるわよ! 早く気付きなさいよ!!」
ヒーローによっては化け方があからさまにバレやすいのと、全く分からないパターンがある。今あたしが観てるのはバレやすい方だ。
でもここでツッコんだら、話として成り立たないから仕方ないね。
「ヒロミさーん、ローズティー入りましたよ~」
「はーい、あたしの机の所に置いといて」
ルリナちゃんがあたしの部屋をノックしながら、一服の紅茶を持ってきてくれた。
あたしとテレビの間にあるミニテーブルに、観賞の邪魔にならないようルリナちゃんはそっとティーカップとポットを置く。
ルリナちゃんもテレビをチラッと観ているつもりが、いつの間にかあたしと一緒にローズティーを飲みながらじっくり観賞していた。
「……偽物って、本物に100%似せる事って出来ないんでしょうかね?」
「どうなんだろ、見た目や性格を真似しても細かい癖とか知り合いにしか分からない秘密を見せられたらすぐバレちゃうからね。結局、偽物は本物を越えることは出来ないんじゃない?」
「それじゃ、もし私の偽物が現れたらヒロミさんは直ぐに見分けること出来ます?」
「当たり前じゃない!! それに分かったとしても、あたしは偽物も持ち帰ってWルリナちゃんで百合ハーレムするんだ~♪」
「えぇ…………」
……あれ? ルリナちゃんちょっと引いてる?
――ピリリリリ……
あ、あたしのスマホが鳴ってる。てか話の始まりになるといつも着信で鳴るのよね。またタケルからかな?
『サブロー・スタンバナード』……タケルんとこの総司令官からだ。珍しい。
――ピッ。
「もしもし?」
『ヒロミ君かね? 私だ。忙しいところ申し訳無いんだが、至急指令本部基地まで来てくれないか? 会わせたい客がいるんだ』
……家でゴロゴロしてる分には別に忙しくは無いんだけど、お客さん? 誰からだろう。
「分かりました。またルリナちゃんと一緒で宜しければ至急向かいます」
『おぉ、そこは全然構わんよ。ゆっくりで良いから気を付けて来てくれ』
そして司令官の着信は切られた。
「……また事件ですか?」
「いや、何かあたしに会わせたい人がいるみたい。ファンの一人かしら」
「ヒロミさんの熱烈なファンなら私がいるじゃないですか!!」
「ルリナちゃんはファンと比べ物にならないダイヤモンドスウィートハニーなの!!! それも永久欠番よ、誇りに思わなきゃ!」
「ポッ……♡︎」
照れて赤らめるルリナちゃんを丁重にお持ち帰りしながら、あたしはキューティクル号で再び『W.I.N.D』の本部基地に向かう。トクサツ少女は忙しいなぁ~!!
★☆★☆★☆
――その数日前の頃……
悪の組織『ジャックス』の指令アジト(所在地不明)では。
「……ちくしょう!! 憎きトクサツ戦士め……毎回毎回我々をコケにしやがって――!!」
ジャックスの幹部、ベクター大佐が度重なる失敗で今日も憤っていた。しかも今回はちょっとだけ怒りの矛先が異なっていた。
「ビークイーンが辞めただけでなく、稀少な女戦闘員までも根こそぎ引き抜きやがったあのエロ蜂女め!! これでは我が組織が男一色になるではないか!!!」
ベクター大佐が怒るのも無理はない。ビークイーンが改心して組織を辞める際に大佐宛に手紙を送ったのだが、その内容が……
≪私、ビークイーンと女戦闘員クラブの皆さんはもっとエロいお兄様方に出会うために辞職しまーす。ゴメンね。チュッ♡︎
P.S.【ローヤルゼリー】に遊びに行く際は500ブレイブコースからどうぞ☆≫
まるでキャバ嬢が愛想を尽かされたような手紙を渡されて、大佐の黒軍服が漂白剤を浸けた時以上に真っ白になったらしい。
悪の組織も色気が純粋に欲しかったようである。また今日も大佐のブツブツと小言が垂れる日々が続くかと思いきや。
――ピコーン! ――ピコーン!
突然ジャックスの不死鳥のマークの中央の赤いランプが点滅し、無線が入った。
『随分苛立っているようだな、ベクター大佐』
その無線の持ち主はジャックスの姿なき首領であった。
「はっ! これは首領殿、我ながら大変御目苦しい所を……」
ベクター大佐は即座に姿勢を正して無線元に敬礼した。
『そう堅くなるでない。今日は大佐に素晴らしい土産を用意した』
「お土産~☆ あ、いやいや……それは一体何で御座いましょうか?」
大佐、一瞬下心が出てただろ。
『【人間複製装置】の設計図だ。これを使ってトクサツ少女と協力している『W.I.N.D』を欺かせてやるのだ』
「……と、申しますと?」
『近日、サースマリン地方より収集されたW.I.N.Dのエリート特捜女性隊員をこの装置を使って利用してやるのだ。設計図と隊員の彼女のデータをこちらから転送させる、直ちに計画を実行させよ!!』
「はっ! かしこまりました」
ベクター大佐が最敬礼すると、無線は途切れ点滅ランプは消えた。そして……
――ガーーーッ。
【人間複製装置】の設計図がファックスで届いた。
「ほうほう、成る程……」
大佐が設計図を黙視してから暫くして……
――ピンポーン!
「ニィイ! 大佐様宛に御届け物でーす!!」
「おぉ御苦労様。サインで構わんかね……」
宅配姿の戦闘員が大佐に宅配物が届き、サインを受けとると同時に去っていった。
ツッコミたい人はご自由にどうぞ。
★☆★☆★☆
かくして、ジャックスはベクター大佐の指揮の元で人間複製装置の開発に取りかかった。
設計図の通りに装置の機械は作り終わり、後は人間を複製するための材料を入れるだけだ。
「『複製したい人間の性別によって材料は異なる』……結構細かいんだな」
ベクター大佐は設計図に付いていた説明書を確認しながら、調理実習のような白衣と帽子とマスクを付けた戦闘員達に作業を指揮した。
「えーっと、『女性を作る場合は、牛乳が300cc、卵黄2個、グラニュー糖50gに、バニラエッセンスが数滴』……」
……あれ? その材料どっかで聞いたことあるような。
「『解きほぐした卵黄と牛乳を混ぜた生地を装置のカップに注いで、160度のオーブンで20分間焼く』……」
――――ねぇ、これってプリンの作り方だよね??
女の子ってそんな風に複製するの???
「『そして焼いた後に複製したい人間の毛を最低一本、カップに投入して一晩冷蔵庫に寝かせる』。――これか、首領の言ってたデータってのは」
宅配物の中身は複製させるエリート隊員の個人データと、一本の毛が。
そしてその毛は妙に縮れていた。
「これ髪の毛ぽくないな。何処から手に入れたんだ?」
「ニィイ! なんでも化粧室の所で発見したんだとか。ちゃんとDNA鑑定したところ、彼女の毛で間違いないです」
イッタイ、ドコノケナンダロウナーー。(片言)
――翌日。一晩置かせた巨大冷蔵庫を開けると……
「……うぉぉお!!」
そこには人間複製装置の上に、複製データと同じ姿をした女性が立ち尽くしていた!! (しかもすっぽんぽん)
これにはベクター大佐も大喜び、そして戦闘員達も発情寸前だった。
「これは素晴らしい! 一晩寝かせて複製した甲斐があったわ、すべすべのプルンプルンでは無いか!!」
そりゃそうだろ! プリンの材料で作りゃプルンプルンになるわな!! てか女の子は皆プルンプルンだもんな!!!(ヤケクソ)
「取り敢えず早く服は着させて……直ちに本部基地に潜入し、作戦に入るのだ!!」
「「「ニィイイイイ!!!!」」」
★☆★☆★☆
……一方同じ頃、W.I.N.D本部基地の空から一機のセスナ機が上陸し、一人の隊員が降り立った。
――――彼女の名は、『フィーリア・
タケルと同期のサースマリン地方支部のエリート部員で金髪のポニーテールな彼女は、ルリナちゃん並のナイスバディだった!!
「ヒロミさんッ!?」
いや冗談、冗談だってルリナちゃん……ちょっと怖かった……
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