File No.14:HIROMI・正義の刃!!

「アハハハハ……!!!」


『W.I.N.D』の本部基地のシャッターが開き、魅惑の色気を放つあの問題に成りかねない怪人『ビークイーン』が高笑いをしながら現れた!!


「な、何しに来たのよエロ蜂女!!!」

「また懲りずに来たんですね……」


 あたしは弱点である変態タイプに怖じ気付くのに対し、ルリナちゃんは果敢に立ち向かおうとする。これも個性の違いか。


「あ~らまた邪魔しに来たの小娘達? でも私のターゲットは貴方達じゃないわよ。用があるのは―――そこの女戦闘員よ!!」


 ビークイーンは手持ちのレイピアを戦闘ちゃんに差し向けて指名した。


「「「わ、私達ですか!?」」」

「そうよ、貴方達にはジャックスの組織でとーっても必要な戦闘員なの!」


「一体……何が目的なんですか貴方は!?」とルリナちゃんも腹をくくって質問する。


「教えてあげる。我々『ジャックス』は組織の仕組みからどうしても男の怪人や戦闘員の確率が高いのよ! 別に私の遊び相手になる分には良いけど、他の女戦闘員ちゃん達が可哀想だわ」


 ビークイーンの周囲には、戦闘ちゃんとはまた色が違う別の女戦闘員達が並んでいた。

 コスチュームは同じだが、レイピアを片手に勇ましい視線、謂わば純粋な戦闘タイプと言ったところか。


「私はいつかベクター将軍様に一目置かれるような女怪人の頂点に立つの。

 魅惑の色気と女性の強さをかけ備えた『ジャックス女部隊』を作るために!! そこの可愛い女戦闘員ちゃんは私が頂いていくわ♡︎」


 せっかく辞職して新たな道を目指そうとする戦闘ちゃんを引き戻そうとするビークイーン。それに対して怯える戦闘ちゃんを、あたしは放っておくことなど出来ない!


「止めなさいッッ!!!!」

 苦手なタイプ相手にビビりながらも、あたしは力の限り叫んだ。


「……なーによ、私に文句でもあるの? トクサツール持ちの貧乳娘」

 何をををを!!? もー怒った! あのエロ蜂女ブッ飛ばす!!


「あんたねぇ……戦闘ちゃんの事情も知らないで、そんな身勝手な理由で引き戻そうとするなんて!あたしが許さないわよ!!」


 あたしはジャンパーのジッパーを降ろして、腰に巻かれたピンククリスタルのベルトをビークイーンに魅せた!!


「あ、あれは――!!」

「『トクサツールベルト』だわ!!」


 タケルとルリナちゃんも期待に胸をときめかす、あの無限大のパワーを持ったあのヒーローを!!


「……なぁにそれ?」


「知らないなら見せてあげるわ!無限のイマジネーションで戦う【トクサツ戦士】の変身を!!」


 さぁ皆さんお待たせしました!!

 変身ポーズと掛け声、御一緒にどうぞ!!


「――クルックル~♪ シャキーン!!」


 ……あ、ポーズ分かんない人はもう一度File No.12を読んで見直してね!!


「――巻~き毛クルクル!

 ――わ~たあめクルクル~♪

 ――クルリと回って……


 ――――トクサツ変身へ~んしんッッ!!」


 掛け声が終わったと同時にベルト中央のシャッターが開き、虹色の結晶『トクサツールコア』が現れた!!


 そしてあたしの大ジャンプ!!


「そ~~れッッ!!!!」



 ――ギュビビビビビビィィィィィン!!!!!


(ナレさん)トクサツ少女・石ケ谷ヒロミは、変身ポーズでベルトの『トクサツールコア』にエネルギーを溜めることによって、【トクサツ戦士・HIROMIヒロミ】に変身するのだ!!


 大ジャンプ、空中一回転からの着地!!


「ナレさんと共にやって来ました! トクサツ戦士HIROMI、参上ッッ!!」

 ――クルンッ♡︎(バイザー越しのウィンク時に出る効果音)


「やった~!! ヒロミさんカッコいい~♡︎♡︎」

「相変わらず変身はワケわからんが、何なんだこの安心感はッ!?」

 フフン、ルリナちゃんもタケルも分かってるじゃない!


「何なのよその変な格好! ピッチリスーツ着たってお尻もおっぱいも何も変わらないじゃないのよ!!」


「うるさ~いッッ!!! あんたみたいな変態にこのカッコ良さは分からないわよ!! 皆纏めてブッ飛ばしちゃうから!!!」

「やれるものならやってごらんなさいよ!! ――行け!私の可愛い女戦闘員ちゃん!!」


 ビークイーンの号令と共に駆け出す女戦闘員達。レイピアを構えながらあたしの回りに円を描き、取り囲むようにグルグルと回る。


 でもあたしはそんな女戦闘員達をまじまじと見ながら。


「……皆良く見ると可愛いじゃない! スタイル良いし、戦闘ちゃんと良い勝負だわ」

 そんな彼女らをあたしは倒す気は無い。


「こうなったら、クルクル~~!!」


 あたしは手をクルクル交互に回して、エネルギーチャージの構えを取り……


「HIROMIちゃん・催眠光線!!」


 両手から放つ青白い光線を円を描く女戦闘員達全員にお見舞いした!!


(ナレさん)『HIROMIちゃん・催眠光線』とは、光線を受けた者は脳内に暗示をかけられ、自らの意思で眠りに付くようにさせる強力な光線なのだ!!


『寝不足は美少女の天敵、若い美貌を保つために最低7~8時間は睡眠に心掛けましょう~!』


「「「は~い、お休みなさーいZzz」」」

 割りと素直な女戦闘員ちゃんは、大人しく自らすやすやと眠りに着いた。レディはいっぱい寝て綺麗になりなさい!!


「コラー!! 貴方達寝てる場合じゃ無いわよ! 起きなさ~~い!!!」

「起こしちゃダメ!! 中途半端な眠りは美貌とおっぱいに響くわ! 寝不足はあんたみたいな淫らな体型の元になるのよ!!!」


 ※ただしおっぱいの大きさは個人差があります。


「きぃぃいい~!!!! よくもペチャパイが私のスタイルをバカにしたわね!! 串刺しにしてあげるわ!!!」


 ――ガキィィィン!!


 怒ったビークイーンがレイピアで刺し掛かろうとした直前、あたしは女戦闘員が持っていたレイピアを奪ってそれを阻止する。そして間合いを取り、互いに剣を構えた。


「あんたなんかに戦闘ちゃんは渡さない! いざ勝負!!」

 剣と剣が混じり合う真剣フェンシング勝負! たまにはこんなまともなバトルも良いでしょ。


 時に剣を大きく振りかぶり、隙あらば刺し狙う切っ先を払い、そしてジリジリと互いにつばぜり合う剣。


「私のおっぱいに耐えられるかしら?♡︎」

「ひっ!!?」


 近寄り迫る蜂のぐるぐるおっぱいに怖じ気付くあたし。しかしそこで愛ある救援が!


「ヒロミさんあんなのに惑わされちゃダメ! 私のおっぱいのがダイヤモンドセクシーですよ!!」


 ――はっ、そうだった! あの心を優しく包み込むマシュマロプリンな感覚は……ルリナちゃんにしか出来ない!!


 ぬぉぉぉおおおお、想像しただけで力が湧いてきた!!!!


「ルリナちゃんおっぱいパワーッッ!!!!」

「なっ……!!?」


 あたしの正義の刃が、ビークイーンをも圧倒する猛攻と化した!! そして!!!


「一本取ったあああああああ!!!!!」


 あたしの剣がビークイーンのレイピアを振り払い、丸腰状態にさせた!!


 ビークイーンは即座に両手を上げて降参の意を見せる。それに対しあたしもレイピアを地面に刺した。


「――ビークイーン!! あたしは女相手に殺したりはしない! でも戦闘ちゃんを怖がらせた礼はたっぷりさせてもらうわ!!!」


「……なぁ~にを小癪な!!」


 窮地でも強情な態度を張るビークイーン、そんなあんたに送る必殺技は……これよ!!


「クルクル~~~!!!」


 あたしはクルクルとエネルギーチャージ、胸に蓄えて両手にハート型に掴んで……


「愛情全開! HIROMIちゃんキッス!!」


 ――ちゅぱっ♡︎♡︎

 ハート型ビーム、ビークイーンに直撃!!


「キャアアアアアアアアア!!!!!」


 ビームを受けて倒れたビークイーン。すると全体の妖艶な瑠璃色から、明るい淡きブルーに変色し、蜂のコスチュームは変わらずとも不気味なオーラから晴れて純粋な女の子に変化した!!


「な、何だ!? 雰囲気が変わっただと!?」

 タケルはまだ知らないんだったね。ナレさん説明お願い。


(ナレさん)お任せを!『HIROMIちゃんキッス』とは、HIROMIの愛情によって凝縮したエネルギーをキスと共に解き放つ強力なビーム光線!

 これを受けた者は女の子の場合は悪しき心をも浄化するスンバラシイ光線なのだ!!!


「う、ん……私、今まで何やってたんだろう――?」


 まるで悪い夢に取り付かれた後のような清楚な表情を見せるビークイーン、どうやら邪念は取り払われたようだ。

 あたしは改めて彼女に事情を話した。


「……そうだったの……私としたことが、こんな淫らな姿で男の子だけじゃなく女の子も苦しめてたのね……洗脳されてたとはいえ、恥ずかしい……!!」


 良かった! どうやら恥女なオーラは消えて、元の綺麗な美人さんに戻ったみたい!!


「HIROMIさんありがとう! これでまた仕事に精を出せるわ!!」

「どういたしまして! 仕事って何やってるんですか?」


「私?私はサウザンリーフの小さな町でナイトクラブでをやってるの!」


 …………うわぉ、何と大胆な。コンパニオンだなんて――――待てよ?


 ピーン☆と来た!!


「ねぇねぇビークイーンさん! そしたらあの3人も一緒に働かせてくれませんか!? 戦闘ちゃんって言うんですけど」

「戦闘ちゃん……あらぁ! スタイルも顔も綺麗で可愛いわね~♡︎」


 先程とはイメージが変わり、『綺麗な美人さん』となったビークイーンに戦闘ちゃんは目をパチクリさせながら少し照れた。


「私達、そんなに可愛いんですか……? こんな禍々しい感じで、セクハラもされているのに……」

「大丈夫。それよりも自分に自信を持ちなさい! 真の美は自分を高める事にあるの!!

 ――お客様の疲れた心を満たすサービスをするお仕事、私とやってみない?」



「「「…………はい!!」」」


 戦闘ちゃんのスカウトが承諾された事で、あたしも思わずガッツポーズを取った。


「……オイ、あのコンパニオンに仕事を請け負わせて大丈夫かヒロミ?」

 タケルもヒソヒソとあたしに話し掛けながら心配する。


「平気平気! もうあの人に寒気するようなエロは感じないし、それに……」

「ヒロミさーん! 寝てるこの子達もスカウトしていい!? 思う存分可愛がりたいの♡︎♡︎」

「えぇ、喜んでーー!!」

 催眠光線で眠らされた女戦闘員達を回収するビークイーン。


「彼女も戦闘ちゃん達も、元からエロいタイプだし☆」

「お、おぅ…………」


 ★☆★☆★☆


 ――その後戦闘ちゃんは無事に就職が決まり、改めてサウザンリーフのビークイーンが通っているナイトクラブが明らかになった。


 そのクラブの名は、【ローヤルゼリー】。


 マスターでありピンクコンパニオンであるビークイーン……改め『マリー・B・クイン』を筆頭に、戦闘ちゃんや他の女戦闘員達と共にお酒やエロをサービスする風変わりな店であった。


 店の反響はそれはもう……男子に大人気!!!

 百合プレイに見る方も、やられる方も放心しながら満足に帰っていくんだとか。


 ――――あたしもタケルを店の中に放り込んで確かめてみました。


「ちょ、オイッ! 俺はこんな店興味ないんだ!! バカ、止め……うわぁぁぁぁああああ!!!!」


 ――1時間後。


「まりーしゃん、さいこー☆☆☆」


 はい、この通り。


「……ダメだこりゃ!!」


(ナレさん)こうして、ビークイーンを改心させ戦闘ちゃん達の就職を助けたヒロミは、

 タケルのウブさの再確認と『また【ローヤルゼリー】出てくるんだろうなぁ』と思いながら、次の戦いに挑むのであった!!


 行け、トクサツ戦士!戦え、トクサツ転生少女ヒロミ!!

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