File No.16:キラキラプラチナ美女フィーリア登場!!

 サースマリン地方からエリート隊員『フィーリア・Jジョーカー・プラチナム』がW.I.N.D本部基地に上陸!!


 エリートという風格もあってか、普段のW.I.N.Dの隊員スーツは迷彩の深緑ベースに対し、フィーリアはキンキラキンのプラチナ仕様! どんだけ金掛けてるの!? 迷彩ガン無視だわ。

 ちなみにタケルもエリートだが、色はメタルカラーである。堅物らしいわね。


 あたしとルリナちゃん、そしてタケルにサブロー総司令官も総員となってフィーリアの上陸を待ち構えたはいたんだけど。

 滑走路の彼方から向かってくる彼女の姿を見て目ぇ丸くなるわ言葉も失うわ……そりゃもうびっくら仰天!


 彼女が太陽に見えるほどにキラキラで眩しくて、キラキラプラチナ美女とは彼女の事を言うわ!!


「―――サースマリン地方支部隊長フィーリア・J・プラチナム、総司令官殿の命により只今参りました!!」

「うむ、御苦労だった」


 あらぁ~姿だけでなく敬語も敬礼も綺麗ね!

 フィーリアはこの小説に少し欠けていた誠実で生真面目な人と見た。あたしは美少女なら生真面目でもセーフラインよ。


 フィーリアはサブロー総司令官に硬い握手を交わし、改めてあたしを紹介してくれた。


「あぁフィーリア君紹介しよう。彼女がトクサツールを操る『トクサツ少女』にして最後の英雄、ヒロミ・イシガヤだ。是非とも強力は当然ながらも仲良くしてやってくれ」

「貴方がトクサツ少女のヒロミ……」


 フィーリアの金髪にも負けない位の金色の眼であたしを見つめる……ダメッ! そんな目で見ないで!! あたしにはルリナちゃんがいるんだあああああ!!!


「――――思った以上にクルクルヘアーでね!!」


 ――ガチッ!!(ヒロミの純情ピュアハートが固まる音)


 何でプラチナ美女にまでちんちくりんって言われちゃうのぉ~!? それがあたしの第一印象なの!!?


「し……失礼ね! これでも一応145㎝なんですけど!! 花の二十歳なのにJKみたいな小ささがチャームポイントなの!!」

「そういうことにしておくわ。貴方の事はトクサツ戦士に変身したときから、ずっとお会いしたかったの」


「……ちんちくりんのあたしに?」


 ちんちくりんは認めたくないけど。


 ■■■■■


 ――それは以前ブレイドピア全域に怪人軍団が襲来したときの事。


 フィーリアの所属していたサースマリン地方支部でも、怪人たちが引き起こした津波などの人口災害により、壊滅状態に陥った。

 ただ一人、フィーリアだけがこの災害を潜り抜け生き残ったのだが、周囲には目を伏せたくなるような残骸の山と襲いくる絶望感から希望を失いかけた彼女。


 そんな時、奇跡的に機能していた通信モニターの映像に流れたのが……


『――巻~き毛クルクル!

 ――わ~たあめクルクル~♪

 ――クルリと回って……


 ――――トクサツ変身ッッ!!』


 トクサツ戦士HIROMIヒロミに変身するポーズだった。


 この時フィーリアは普通の人の反応と同じように気の抜けた変身に脱力したが、その常識破りな強さには衝撃を受けた。


『HIROMIちゃん・外出自粛で悪い子はとっととお家へ帰りなさい攻撃!!!!!』


 そして例のあの攻撃でサースマリン地方を含む全ての怪人が撤退し、一時の平和が戻った時、フィーリアは一大決心をしていた。


 ――トクサツ戦士を一目で見てみたいと……!


 ■■■■■


「へぇ~それであたしに会いに来たわけ! それで変身ポーズどうだった? 可愛かった!?」


 あたしはてっきり自分のファンが出来たとウキウキしていたのだが……それは大きな間違いだった。


「ふざけないでちょうだい!!!!」

「ひっ!!?」

 いきなり浴びせられた怒号に、あたしはビックリして飛び上がった。


「こんな茶化したような英雄なんて聞いたことが無いわ!! 変身ポーズも力が抜けるし、運動神経皆無なスタイルだし、戦いの基本がなってない!! 悪との戦いは遊びじゃないのよ!!!」


 ……そんな、そんなアイデンティティを否定するような言い方しなくても良いじゃん~(半泣き)


「まぁまぁ落ち着いて下さいフィーリアさん……」

「何よ貴方は? 私は今ヒロミと話しているの!!」


 気の強いフィーリアに宥めるルリナちゃんもタジタジ。そこで負けじとあたしも彼女の事を説明した。


「この子はルリナ・グリーンリバーちゃん! あたしの助手で、愛で結ばれたパートナーなの!!」


 するとフィーリアは自らルリナちゃんの所を近寄り、眉をひそめながら説教を始めた。


「貴方も彼女のパートナーだったら、こんなだらしない性格を直せる筈でしょう!? それに二人とも運動不足な身体して! 少しは食事や睡眠の改善を心掛けなさい!! 胸だけ大きくなってもしょうがないわよ!!! それに――」

「ふぇえ~! 何で私がこんなに怒られてるんですかぁ~!!」


 ルリナちゃんが『お母さんはもっと優しめに叱るのに!』と言いたげな顔で号泣していた。

 文句言いたいけど、今はフィーリアの気の強さが怖くて言えない……


「とにかく! 今日から私は貴方達二人を徹底的に鍛え直すつもりで来たから、そのつもりでいること!! 分かった!!?」

「「はい……」」

「返事くらいしっかりしなさい!!」

「「はいッッ!!」」


 あたしとルリナちゃんはすっかり背筋ピーンとなるほど恐縮していった。


 参ったなぁ……せっかくトクサツ戦士で無双と思ったのにトンでもナンセンスなお母さん来ちゃったよ!!


「ヒロミ、言っとくけど彼女お前と同い年タメだぞ」

 ……マジすかタケル。同じ二十歳なのが余計に憎たらしいわね!


 ★☆★☆★☆


 説教地獄の対面式も終わり、あたしとルリナちゃんはサブロー総司令官に抗議した。


「何であんな人呼んじゃったんですか総司令官!!」

「私あの人怖いです~!!」


「いや、済まないことをしたな……フィーリア君は昔から不真面目なのが嫌いな性格でね、その正義感の強さ故にどうしても気が強くなってしまうんだ。決して悪い人じゃないから、多目に見てやってくれないか?」

「「はぁ……」」


 サブロー総司令官も彼女の性格は知り尽くしていたと言うか、総司令官自身も頭を抱えている様子だった。

 まぁ確かに今のW.I.N.Dは戦力不足は否めないし、協力したいのは山々なんだけど……


 生真面目美少女はセーフラインだけど、怒りっぽいのは流石のあたしも苦手よ!! でもエロイのよりはマシな方。


 どうやってフィーリアを攻略しようかとあたしとルリナちゃんでぶつぶつと廊下を歩いていると……


「タケルく~~んッッ♡︎♡︎♡︎」


 ……なんかタケルの個室からわざとらしいほどに色気付いた声がしたような。その声は……フィーリア!!?


 え? 何だ何だ!? どんな状況なのこれ!!


 あたしとルリナちゃんは気になってドアに耳を寄せながら向こう側の様子を伺った。


「またお前と二人きりになれるときが来るとはな。地方に異動になってから1年、お前を忘れなかった日々は無かったぜ」

「私だってずっと会いたかったんだからぁ♡︎」


 おぉう、これは音だけでも分かるぞ! タケルとフィーリアがあたし達が日常でやってるイチャイチャタイムだな!! それも正統派バージョン!!!


「あのヒロミやルリナなんかに私のタケル君は渡さないんだからねっ!! 意地でも渡すものですか!!!」

「大丈夫だ。天地が引っくり返っても俺はアイツらには興味は無いし、俺には……君しか愛せないよ」


「タケル君…………ッ♡︎♡︎」


 フェロモンが詰まったフィーリアの声を最後にしばらく会話が途絶え沈黙の時間が訪れた。


 オイ、これまさかやってんのか!? キスか? ハグか? 何れにしてもそれは読者の皆のご想像にお任せしますッッ!!!!


「……それじゃ、あの二人は本気でしごいちゃって良いのね?」

「あぁ死ぬ気でやっても構わないぜ。アイツらアホのくせして変身してからずっと調子乗ってるからな、一回痛い目を見て反省するのも良いだろう」


 あの野郎~! 普段からそーゆー感じであたし達を見てたのね!! もう頭来た、二人纏めておちょくり返してやるわ!!!


 ――と思ったその時。


 バタンッッ!!!


「むぎゅッ☆」

「あら、何か挟まった?」


 突然向こう側からフィーリアがドアを開き、その反動に巻き込まれた私は壁に挟まって虫の息となった……


「きゅ~~………」

「ヒロミさん大丈夫ですか!?」


 心配するルリナちゃんの様子を見たフィーリアはハッとあることに勘づいた。


「あ、貴方達……まさか私とタケル君のイチャコラを――!?」


 慌てふためくフィーリアに反応するようにあたしも直ぐに復帰して言ってやった!


「聞~いちゃった、聞いちゃった! フィーリアもあたしと同じ愛ある少女!! 社内恋愛の事サブロー司令官に言っちゃおうかな~~!?」


「ダメェェェェ!!!! 私とタケル君の愛の契りを引き裂かないでーーーー!!!」

 おおっ、これは効果覿面こうかてきめん!! よーしこいつは使えるぞ。


「じゃ言わない代わりに、あたし達の事ガミガミ言わないって約束する?」

「ぬうぅ……! だったらその減らず口を修正するまでよ、このクルクル頭!!」

「ひゃああああ!!!!」


 おちょくり秘術の一つ、揚げ足取りには流石のフィーリアも美人の顔を真っ赤にしてあたしに襲いかかった!!

 そんなに怒ってたら血圧も上がるわよー!! でも今は逃げろーー!!!


 二人の基地内での追いかけっこを繰り返しているうちに、フィーリアはいつの間にか基地の入り口まで来ていた。


 しかし、その影には……!!


『……居たぞ! フィーリア・J・プラチナムだ。アイツを捕らえて、すれ違いにこのコピー人間を基地の中に潜入させるのだ!!』

「「ニィイ!!!」」


 ベクター大佐の無線で行動するジャックスの戦闘員と、フィーリアそっくりのコピー人間が待ち伏せていた!!


 危うし! キラキラプラチナ美女フィーリア!!

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