第11話 【大多喜 廉次郎】の手記1
こういうのをデスゲーム、というのだろうか?
まぁ、いい。
考えをまとめる為に、この渡されたノートに考えを書いていこう。
所持を許されたガラケーでも別にいいのだけれど、やはり古いせいか充電の持ちがあまりよろしくない。
だから、なるべく節約したかったということもある。
そして、このノートを書き終わった後、そのガラケーの中にあるとある画像を、ほかの招待客に見せるかどうかにもよるが、もし見せることに決めた場合、その時になって充電切れを起こしたら笑い話にもなりはしない。
そのための節約だった。
一応、この洋館には自家発電の機能も備わってるらしいが、事態が事態だ。
いつ、それも壊されるかわからない。
そもそも壊せるものなのか??
詳しくないからわからない。
壊さないでいるのは、この惨状を叩きつけた犯人の情けなのだろうか?
いや、いまはいいか、そんなこと。
考えるべきことは他にある。
僕も、いつ死ぬとも分からない身だ。
だからこそ、この手にある事実をカミングアウトすべきか悩んでいる
悩んでいるからこそ、考えをまとめる為にこのノートを書いている。
その画像というのは、コウサカの死体を発見した時のものだ。
あの時、僕はテル少年と招待客の一人であるワタベの叫びを聞きつけて一番に、あの現場に向かった。
そこで目にしたものは、生きている間ならばよほどのことがない限り見る機会のない光景だった。
ここで、その光景の詳細を書くことはやめよう。
それは、ここで書くべきものではない。
そもそも、画像という証拠がこの手の中にあるのだから。
そう、そうだ、問題はその画像なのだ。
僕は現場につくと、誰が見てもあきらかに死んでいるコウサカを見た。
そして、すぐにテル少年にほかの招待客を呼びに行かせた。
女性には刺激が強すぎたと、あとになって悔やんだ。
しかし、そうも言ってられない状況が立て続いたのだ。
最初は、森谷という男性が毒殺された。
それを実行したのは、コウサカだと思われた。
けれど、そのコウサカは顔をグチャグチャにされて殺されてしまった。
誰が彼を殺したのか?
それはわからない。
わかっているのは、
それが、僕の時代を周回遅れしているガラケーに収められているのだ。
この事実を彼らに伝えるべきか、否か。
伝えたら確実に内部分裂が起こるだろう。
狼が潜んでいる、ということなのだから。
では、その狼は誰だ?
そんな展開になるのは目に見えていた。
画像を撮影したのは、あとで警察に渡せると考えたからだ。
そうして捜査に役立ててもらおうと、現場の画像を残そうとしたのだ。
森谷の時には、いきなりな展開に体が動かず、これが出来なかった。
だからこそ、コウサカの時には、ハッとして慌てて撮影したのだ。
画像は二枚あった。
封筒と鍵が写っていない物と、それらが写っているものだ。
写っていない方は、たしかテル少年にほかの客を呼んでくるよう指示を出した直後に撮影した。
そして、写っている方は、たしか粕田が、
「これは、なんだ?」
と声を上げた時に撮影したものだ。
つまり、誰かが置いたのは明白だった。
問題は、
ということだ。
ひとつ言えるのは、誰にでも置けるチャンスはあったということだ。
粕田は亡くなってしまったので、おそらく置いたのは現時点で生き残っている我々の中にいるのだろうと思われる。
では、それは誰なのか?
いや、わかっている。
考えなくても答えは絞られる。
この時のことを思い返すと、その答えはすぐに出たのだ。
芳賀か、ワタベ、テル少年、この三人の何れかになるのだ。
なってしまうのだ。
というのも、粕田と高倉は駆けつけるなり、僕と一緒にコウサカの死体に近づき、検分もどきのことをしたのだ。
芳賀は怖がって近づかず、テル少年も離れた場所で僕らの検分を見ていたし。
ワタベもたしか青い顔をして、しかし死体には近づかなかったはずだ。
つまり、芳賀、ワタベ、テル少年の三人は僕達の視界から外れていたのである。
この三人なら、封筒とマスターキーを置けたはずなのだ。
時間にして数分。
数分というのは、封筒とマスターキーを置くには充分すぎる時間だと思われた。
この事を提示すべきか、否か。
それが問題だ。
いや、感情を含めれば怪しい人物は自ずと浮き上がってくる。
それは、テル少年だ。
彼はこのバイトとはいえ、この洋館で働いていたのだ。
つまり、建物の構造を知っているし、なんならマスターキーのコピーを作る時間もあったと考えられる。
住み込みとはいえ、本当に文字通りずっと雇われてからここにいたのか?
そんな疑問が出てくるのだ。
誘導尋問をするべきだろうか?
船が来るのは三日後。
もしも、テル少年がこの事件の犯人ならこのまま野放しには出来ないだろう。
仮に彼が犯人でなかったのなら、謝って、はい終わり、だ。
元々身内でもなんでもないのだし、これっきりの付き合いになるのだろうから。
冷たいかもしれないが、人間関係なんてそんなものだ。
妻がこの事を知ったら、怒るだろうか。
でも、こちらとしてもやるべき事はやらなければならないだろう。
必要なことなのだから。
よし、高倉に相談だ。
彼女は信用できる。
勘だけれど、長年生きてきただけにこの勘は大切にしてきた。
そして、外れた試しがないのだ。
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