第159話 インターセプト
「Rangers lead the way(レンジャーが道を拓く)!!」
「「「Of their own accord(自らの意思で)!!」」」
「「|Semper Fi(常に忠誠を)!!」」
ただいま参上、米軍戦隊イナバレンジャー。と、言わんばかりに地球人六名は、ロドス防壁上の
そして、
イナバたちレンジャー4名は、Mk-16ベースの『MMK-16』。
ジョブスら2名の海兵隊は、M4A1ベースの『MM4A1』を各自構え、戦闘態勢。
「
「「「イエッサー!」」」
イナバの問いに迷いなく呼応する地球兵士たち。これまで頼りなくも、イナバの功績により信頼を得た地球チームの動向に、要必見の冒険者’S。
イナバと他三名が所属する【第75レンジャー連隊】は、米陸軍有数の柔軟性を誇り、 通常戦闘と特殊作戦の両方を遂行する精鋭部隊。
18時間以内に世界中に展開できる緊急即応部隊でもあり、主な作戦担当は遊撃戦。つまりは‶ゲリラ戦専門〟。
戦線外にて小規模な部隊を運用して奇襲、待ち伏せ、後方支援の攪乱や攻撃。
古来よりの有効戦術であるもの、悟られればお終い。ハイリスクハイリターンの一発勝負。故に求められるは、隠密にして迅速かつ確実性。
「もう、教練は十分だよな『ワッツ二等軍曹』?」
「当然だろジョブス上級准尉!」
レンジャーを含めた多くの戦死者の中、この場で生き残っている海兵隊員は二名。
ようやく、名無しのモブ兵士からの脱却。海兵隊所属の『ワッツ二等軍曹』。
イナバたちレンジャーチームと共に、地球では如何なる兵部隊も経験し得なかったであろう、異常極地を潜り抜けてきたのだ。すでに連携練度も上々。
「U S A!! U S A!! U S A!!」
「やめろやテッド!!気が散る!!」
元米海兵隊、現異世界冒険者の黒兎獣人が、元祖国民を称えるエールを贈る。
決して、
「フッ、お前たちも海兵隊に遅れを取るなよ ベーコン、ノット、カービー!」
「ハハ、誰がだよ中尉!」
「今なら、デルタもデブグルも余裕でぶち抜いてやるよ!」
「そのままの勢いで‶雷神〟や‶ワルキューレ〟でさえもな!」
アゲアゲのレンジャーズだが、こちらもモブからネームド。
『ベーコン専任曹長』『ノット曹長』『カービー一等軍曹』。
一方、標的の動きは、大量雑兵のアンデッドたちを好き勝手にぶっ込み、諸々の防衛戦力を足止め。そこから抜け出した極々少数を、近衛聖騎士隊が後列の分隊と次々と交代しながら剣技で仕留めていく、乱れ無き連携ライン。
上空戦力には、対空魔術光弾幕。その随所に親衛隊、
「これは、正に【カタフラクト】。いや、それどころではないな……」
【カタフラクト】とは、6世紀初期、東ローマ帝国にて開発された槍騎兵と弓騎兵の機能を合わせ、打撃力、機動力、防御力を兼ね備えた弓、槍重装甲騎兵部隊。
それが魔術により、超常火力と防御性を備えたファンタジー仕様かつ、人類外。
もはやSF人型兵器。云うなれば「機動装甲兵部隊」。
「だが、分かりやすい。先ずのタイミングは‶ここ〟だな」
己が標的と時機を明確に見定めるイナバ。
濃密に練られたオーラがMMK-16に注がれ、淡い蒼光に包まれる。
アンデッド群の荒波から抜け出た超獣数体を、迎撃態勢のところで楔を打つ。
ヴォン──
重音ながらも、僅か40デシペル程。
静かなバラード調で、いざ
聖騎士たちの甲冑は、ドーレス曰く、高性能【ミスリル合金製】。
長年に渡る戦闘とメンテナンス不備にて傷だらけながら、装備者の魔力補正もあり、性能を維持し続けているとの事。
対して放つ【5.56×15mmMAP弾】のセレクトレバーモードは、貫通性特化。
聖騎士一体の腹部から上が消失。
その高耐性をぶち抜き、勢い余って射線上の後続二体も、
「「「!!!???」」」
突然の不可解現象に、即座にカイトシールドで身を隠し、周囲を見渡す聖騎士たち。
「この威力で、減音率は通常銃の70%ってところか…魔ジもんのサプレッサーは、すごいな……」
威力は、
ちなみに、減音100%も可能であったが、味方との連携に弊害が生じるので程々の設定。何より、無音だと「味気ない」理由もありつつの仕様。
ピッ ピッ ピ ピ ピ ピ ピ ピピピピピィィィィィィィィィ──
MPRのスコープディスプレイから、続々と鳴る
魔術式 照準補正機構。感知回避もままならない速度でのピンポイント必中。
標的は、甲冑ヘルムに何やかんやと目立つ、他の聖騎士とは異なる意匠の装具。
それらが、各小隊班で堂々と主張。即ち、THE隊長格。
当然、狙うべきは戦略上基本。要所も要所の‶指揮系統〟。
加えて、超獣たちへの絶好タイミング支援となり、混迷する聖騎士部隊をド派手に蹴散らす。応援に駆け付けた後続隊も、速やかに指揮系統が潰され、陣形が乱れに乱れる。
「そこか……」
ギュスターヴを始め、精鋭中の精鋭中の更に精鋭親衛隊は、魔弾狙撃ポイントを的確に感知。ロドス砦防壁上のイナバレンジャーたちをガッツリ捕捉。
ピィィィィィィィィィ──
「遅い」
捕捉される前にすでにロックオン。目標スペックを踏まえ、三連バースト射撃。
即時に銀騎士たちの頭部ヘルムで連続、爆発的金属衝撃音。
同時に【
だが、超高性能品質素材【
衝撃で僅かに仰け反るも、全くの無傷。ご健康そのもの。
「「「クッソ硬っ!」」」
「あいつら、ジャパニーズロボットかよ!」
「ああ…それに近いかもな」
「ザクとは違うのだよ!ザクとは!ハハン!」
「うるせークソ兎!見物だけなら、どっか行け!」
そんなガヤを嘲笑うかのように、銀灰騎士たちは大弓をロドスに向け、再び攻撃態勢。
「ならば、切り口を変えるだけだよ。モードⅡ!!」
「「「イエッサー!!」」」
MPRモードⅡ【魔徹甲焼夷弾】。
「「「!!!???」」」
一人一射。手元の破砕音に、戸惑いの様子を見せる銀灰六騎士。
これまで、圧倒的な無双ぶりを見せつけ、ロドス防壁にも手痛い被害を与えた大弓を完全破壊。更に、歓天喜地の灼熱猛火が、銀灰色の鎧を
「「「うおおおおおお!!!」」」
「見事だ 地球戦士たちよ!!」
厄介極まる大弓の無力化に歓喜喝采。討ち取るまでには非ずとも値千金。
称賛すべき大金星の功績と言えよう。
道は拓かれた。攻め処はここぞと、冒険者’Sもついに行動開始。
「先手は地球人たちに取られたけど、
「「「イエスマーム!!」」」
「いや、彼らのまねはしなくていいわよ……」
メルヴィ率いるエルフたちが放つ、精霊術式弓矢【
風属性衝撃波を伴う、超速ジャイロ回転にて、対象物を貫き進み種子が定着。
瞬時に、内部全体に根を張り巡らせ、体外で枝葉を伸ばし果実を成す。
「寄生木」たる【ヤドリギ】所以のエグイ御業。
これを受けた聖騎士たちは、もれなく人畜無害な植物化。
各後方支援を受け、半牛半蛇の地獄獣【オピオタウロス】が大角を振り上げ、尻尾をぶん回し、聖騎士隊を薙ぎ払らっていく。
更に、アンデッド大群を掻き分け、他の精霊獣、地獄獣が続々と猛参戦。
「‶よし いくぞう〟!!!」
「「「オラ コンナ ムラ イヤダ~ オラ コンナ ムラ イヤダ~ トウキョウエ デルダ~
トウキョウヘ デダナラ ゼニコァ タメデ~ トウキョウデ ベゴ カウダ~~ガッ!」」」
「「「うおおおおおおおおおおおお!!」」」
ドワーフたちが詠唱【
「いや、まんまだろ……」
「オーホッホッホー!盛り上がってきましたわね!まぁ今のところ、わたくしたちが出張る必要もありませんし、軽く様子見程度に致しますわ」
現状、イナバレンジャー&エルフチームの支援で十分。ミシェルが指揮する
この状況に、親衛隊 重装黄金巨騎士【
これに、地獄獣人面獅子【マンティコア】が咆哮衝撃波を放ちながら突撃。
金灰騎士の一体が、
ここは支援と、レンジャー、ベーコン専任曹長がMMK-16を構えるが、精霊獣【水妖蜥蜴イピリア】が推参。
その金灰騎士の足場を泥地化させフォローするも、即座に別の金灰騎士の大盾で叩き潰されてしまった。
その尊い犠牲を無駄にはしないと言わんばかりに、マンティコアは棘だらけの尻尾を振り回し、泥地でもたついている金灰騎士を弾き飛ばし、騎士同士が激突。
だがそこへ、他の金灰騎士たちが駆け寄り、マンティコアを囲い滅多打ち。
「クソっ!!」
結局、支援の手を迷い屠られた二体に、悲痛の表情を浮かべるベーコン。
敵味方が入り乱れる大激闘。判断材料も複雑過ぎるゆえに仕方がないとは言え、悔恨の念に駆られる。各チーム共々、そんな憂いの想いがちらほら。
その幾重もの暴渦に飲み込まれて、金灰騎士の一体がようやく撃沈。
次々と倒れる近衛隊に、親衛隊の犠牲でさえも一向に構わず。
亡者所以もあってか、情など皆無。ギュスターヴにとっては、ここにある全てが他愛もない些末事。それが、遥か長きに渡り、不壊たる忠義を全うした忠臣であってもだ。
「む……」
同じく超常の王とする神狼女王ミゼーアは、これに何を想うかと謂うべきところだが、視点は全く別のところ。
「如何なされたミゼーア様?」
ふと、何かに気づいた様子のミゼーアに、親衛隊
「ふむ。いつの間にやら、銀騎士らの姿が見えぬな」
「なんですと?……確かに。いったい何処に消え失せたのだ?」
「主武器を失った程度で、彼奴らが退くとは思えませぬし、最前線の戦場下で王から親衛隊が離れるとは……」
阿狼の疑問に、同じく
そんな不可解ながらも、きな臭さが漂う中。
「ぎゃああああああああああ!!!」
突如、戦場の大轟音をも掻き消す絶叫悲鳴が、ロドス防壁上に響き渡る。
「「「!!!???」」」
超感覚を持ち得る異世界陣営、誰一人として感知し得なかった意識外の事態。
混乱と緊迫感が入り混じる視線の先には、ゆるりと倒れる
「な…何故ここに!?」
傍にいた
───と、ゆらゆらと蠢く‶黒い何か〟。
その右手らしきものには、鮮血したたる歪に湾曲した凶刃。
目まぐるしくも情報過多の状況に、時が止まったかのように全員硬直状態。
「なんだ、こいつは…?」
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