第124話 バイバイキーン!
弱体化し、邪神改め大怪獣ドゥルナスに対するウルフ旅団と、元ドゥルナス軍の反乱者たち連合部隊。
現在戦闘に参加している連合部隊の内訳は、トール以外の旅団プラス航空隊のグリフォン2体、ヒッポグリフ2体の75。
反乱勢は、サウルを筆頭とした【
ゲバル指揮の【
ゾイゼが率いる【
スミロドン属の【
ドラゴンのような外殻装甲の【
いずれも、この時点まで
旅団団長トールと言えば、連続の大仕事を終え後方で高見の見物をしていた。
「あー、よく見えるな。こりゃ助かるわな サンキュー」
『ガルゥ!!』
いつの間にやらトールは、反乱勢の魔獣の一体「アンドリューサルクス」の背に跨っていた。その隣には
ぶっちゃけトールは限界を超えていた。脳内はオーバーヒートを起こし、更に「静動の気」と言う対極する二つの気を取り入れたことにより、その負荷は相当なもの。常人であれば骨細胞、筋繊維組織が崩壊し全身破裂していたところで、立っているのもやっとのギリギリ状態。
それを察したこの二体は戦いには参加せず、トールと重症者らの護衛をと、自らの意思でこの場に残ったようであった。実に気が利く優秀な古代ロマン獣たちだ。
重症者は【
⦅ぎゃあああAAAああAA!!オラさのかっけー腕がああAAA!!⦆
破軍
しかし、厄介なメインアームの一つを破壊できたもの、まだ右挟角や巨大な尾も残されている。他にも未知の武器を隠し持っている可能性もあり油断はできない。
⦅おめだづ、このクッソ許さねーべやぁあ!! て、なぬや!?⦆
今度は右挟角を振り上げずに脇に引き、横薙ぎで振るう。が、振り切れない。
地面に陰る挟角の影から無数の漆黒の鎖が伸び、挟角に絡みついている。
『させぬでござるよ』
『我ら忍と相まみえるなら、自らの影も敵だと思え』
それは、忍狼黒鉄と弥宵のTHE影縛りの術。しかし、この巨体を長らく抑えるには至らず。ブチブチと影の鎖は引きちぎられるが、それで十分。
この間に上空から黒き炎の一閃。
⦅UGYAゃあああああAAAAAああああ!!⦆
『むう、硬い! あとちょっとなのー!』
地表すれすれでカレンは急上昇。右挟角は皮一枚と言うところで繋がっている。
『グアルゥ!!』
だが、そこへ今度は下方から白き一閃。ドゥルナスの右腕挟角は完全切断。
それを成したのは、体長4mほどと、魔獣らの中では小柄ながらも機動力では断トツ。そして、魔力により蒼白光を放つ
「見事だ〝ナーヴ〟よ!! これで厄介な両
⦅この鳥っこどニャンコロがぁ!! よぐもオラさの腕をぉおおお!!⦆
上空のカレンと
⦅飛んでるがらってイギがんなよ鳥っこめ!!──鼻ビぃぃいいいいム!!⦆
『『『「「「鼻からかよ!!」」」』』』
カレンに放たれたドゥルナス【鼻ビーム】ブレス。赤光のせいか、鼻血を吹き出しているようにも見える。放つにしても口か、せめて眼であろうと総ツッコミ。
そしてネーミングセンスは、配下の名付けも含めて致命的。
『なんかキモいのー!!』
カレンは加速し、ドオンと音速の壁を突き抜け躱し、鼻ビームを躱し続ける。
──【
ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド!!!
そこへ火力支援。ドゥルナスの左身体に向け、大狼たちが魔術ガトリング砲、風刃の連射撃。
⦅だークソ!!このワンコロだづめ、邪魔すんなや!!⦆
ドゥルナスは標的を変え、左側の大狼たちに【鼻ビーム】を放とうとするも、今度は右側の大狼たちから魔術砲撃。更に上空からグリフォン、ヒッポグリフは風魔術スキルの旋風刃を降り注ぎ、陸空からの暴風雨の如き支援攻撃。
攻撃をそがれ、棘だらけの猛毒の尾を振り、右側の大狼たちを薙ぎ払おうとするも。
『『グラゥ!!』』
そこに、体長7m、2体の
『『『
『『
⦅クソたれがぁあ!!今度はクマっコロがぁあ!!⦆
更に再び、左右大狼たちから一斉魔術砲撃。ドゥルナスに攻撃の的を一か所に絞らせずに、意識を分散させる連携攻撃態勢。
⦅クソども、ナメやがってがらにぃ!!そうやって囲ってくんならばぁあ!!⦆
ドゥルナスは、一旦距離を置くべく包囲網から抜け出そうと移動を開始する。
だが、そこへ。
『逃がさないよ!!』
上空【
⦅だぁあああ!!あででで、
「よし!今が攻め時! 大狼たちと魔獣らばかりに活躍されては、我らの立つ瀬が無いであろう!!」
「「「ウオオオオオオオオオオオオオ!!!」」」
ここから反乱勢側の亜人種らの一斉攻撃。まず狙うは氷結した8本肢を破壊し、完全に移動不可能状態にする。
サウルは居合抜刀術のように、剣を鞘に収めた状態から高速で一閃一文字。
そこから早業、真向、袈裟、逆袈裟、燕返しと連続乱れ斬りの斬撃波。
ゲバルは、魔紋を発光させ、オーラを纏った大金砕棒を最大膂力で、衝撃波を伴う特大
ゾイゼは、ドラミングから紅雷を纏い超速ローリングキャノン。某格闘ゲーム、ストなんちゃらの野人キャラのように、砲弾の如き体当たり攻撃。
他の各亜人種戦士たちは、各々の得意とするスキル技を振るい、ドゥルナスの氷結した肢足を次々と破砕させていく。
⦅あでで、あでで、あででででで!!よるなボゲー!! クソクソクソクソ!!⦆
ドゥルナスは、尻尾を大振りまくりで払い除けようとするも、体移動が封じられている上に、標的が自らに近接過ぎて思うように振り切れない。
そこにドゥルナスの後方、高速低空飛行で近づく機影が二つ、カレンとトア。
尻尾手前で横転から機首上げ、空戦飛行【バレルロール】から急上昇急加速。
メタリカ翼剣とメガデス翼刀が、尻尾の両サイドで閃き
ドスゥゥン!と、地面に重厚に響く重量落下音。大型モンスター討伐における部位破壊の醍醐味〝THE尻尾切り〟をここでキメ、盛大な歓声が上がる。
『『『「「「ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!」」」』』』
「勇者の翼であり
「あがぃは、敵に回したらイケン奴じゃけぇのう……」
⦅ぎょぎょぎょおおおおおおおお!!!オラさのかっけー尻尾までぇぇえ!!
このおおおおおおおおおおおおおおおお!!⦆
機動力と近接攻撃手段の要を失ったドゥルナスは発狂。上空飛行隊に向け【鼻ビーム】と、帯電した歪二本角から赤雷撃を放ちまくる。が、速すぎて当たらない。
この間に連合部隊の一斉近接攻撃。背の上を駆け回り、両脇腹などに各武器、スキルを振るい、外殻装甲を削り破壊していく。
⦅だぁああああああああああ!!クソどもが、
鼻ビームや雷撃は、近接が故に自らに撃つのと同然の為、放てない。残された近接攻撃手段。頭部の二つ瘤から出た触手を伸ばし、
⦅ぶるぅあああああ!!!なぬや!? ⦆
だが、突如ドゥルナスの頭部正面にそれが現れ、顎下から打ち上げられるような強烈な衝撃を放つ。その衝撃とは──。
──蹴りだ。
更に触手が何かにぶった斬られた。
その存在は手に矛を携え、全身に風を纏い浮遊し睥睨する。
⦅おめさは!!──嫁っこでねーが!? ⦆
「その不愉快な妄想、珍劇舞台セリフも聞き飽きたわね。いい加減、退場してもらおうかしら」
『リディ殿!? その姿は!?』
リディのその姿は、仏教神将型の神々しい甲冑姿。
「──レベル5 【完全霊将装
その装依の根源たるは、仏教においては十二天の一柱 西北の守護者【風天】。
それが十二神将に取り入れられ【
その手に持つ黄金の聖矛は、神話級金剛の
──
「この
地上冒険者の中にいたエルフのメルヴィも、この【
⦅なんだが、分がんねーげんとも、旦那になんつうDVだべやぁ!! 凶暴な嫁っこには、きづいお仕置きが必要だべやな!!⦆
そう言いながら、二本角から赤雷撃と鼻ビームを至近距離で同時にぶっ鼻放つ。
「五月蠅い」
【
⦅ぶふりゅあがぁあああああ!!⦆
ヒュウウウウウウウウウゥ……ィィイイイイイイイイイイイイン
間抜けな叫声を掻き消すかのように、リディの周囲に狂風が吹き、背に集まり三重光輪が超速回転。眩く輝き、戦闘機のターボファンエンジンのような回転音が轟然と鳴り響く。
「皆、少し離れてなさい。死ぬわよ」
『『『「「「は!?」」」』』』
『これは不味い 巻き込まれる!! 総員退避ぃいいいいい!!』
『『『「「「!!!!!!!!!!!!」」」』』』
一瞬の間が空いた直後に、朔夜が危機察知。緊急号令と同時に、一同一斉にドゥルナスの攻撃を止め、瞬時に跳躍し全力で退避。
「──
ドゥルナスを串刺す一筋の光。僅かに遅れ、ドオン!!ゴロロロロォオオン!!と、爆雷撃音。外殻全身に亀裂が入り、その亀裂が明々と発熱発光。
ドオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!!!!
大爆砕。更に暴風、雷を伴う竜巻が発生。ドゥルナスの巨大胴体は血肉、外殻共に粉々。荒れ狂う狂風に塵一つ残さず吹き飛ばされた。
残ったと言えば、切断され転がる両挟角と尻尾。
『『『「「「やりすぎだよ!!」」」』』』
暴風が吹きすさぶ中、危うく巻き込まれそうになった一同の総ツッコミ。
「レベル5は加減ができないわね……これじゃあカレンとトアに、偉そうなことは言えないわね」
リディは霊装を解除。魔力切れ寸前で片膝をつき息を荒げている。今日カレンとトアが「
ぶっちゃけ、ドゥルナスの虫唾が走るキモ発言にブチ切れていたのだ。
幸いにも【
『『『「「「ウォオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!」」」』』』
『『『『『ワオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!』』』』』
そして、盛大に湧き上がる勝ち鬨の
「フヘホヒヒヒ!! 甘ぇなああ! そう簡単にオラさを倒せるどでも思ってだが?」
『『『「「「!!!!!!!!!!!!!」」」』』』
「な!? ドゥルナス!! まだ生きておったのかぁ!!」
「しぶといわね……」
上空でブブブと制止飛行するドゥルナス。
その姿は、頭部はドゥルナスであるもの、胴体は2mサイズの大
その実、巨大キメラ化した際の核とも言うべき真の本体部分は、体内最奥にあり、この蠅型は云わば緊急脱出用ポッド形態。
ここは、即時に攻撃判断。ドドド!!と、トアの獄氷ガトリング弾の連射。
「フヘホヒヒ! 当だるがや、そんなもん!」
『速い! キモい!!』
超速、不規則な移動飛行で躱しきるドゥルナス。カレンと飛行隊も動き出す。
「おっと、そうはいがねーべや! 嫁っこ、結婚式は今度だなや! それど、おめだづ〝ヴェルハディス様〟に言いつげでやっから覚えでろやぁ! このバーガバーガ、ハーゲ! バイバイキーン! フヘホヒヒヒヒ!!」
そう捨て台詞を吐き、ドゥルナスバエはキモ飛行機動、超速一目散にキモ逃げ失せてしまった。
「クソ!! 逃げられおったか!」
『くっ! 動きが不規則過ぎて、影を追えぬ……』
「ヴェルハディス…〝様〟? あれの背後に何者かが……」
『ヴェルハディス』。現時点で何者かは分かり得ぬが、少なくともドゥルナスを従える、上位存在であることは確かであろうと想思うリディであった。
「フヘホヒヒ! とりあえずは、
ドゥルナスバエは、拠点を完全放棄。取り急ぎ地上に向け、地下迷宮をリベンジ卍戦を想描きながら、
「んあ? 何だあいづは…?」
ガガガガガ……ズズズズ……。
それは、3mはある人型。その手に持ち引きずるは、重厚な巨大剣。
「ぎっ、ギュスターヴ!!」
ブォン!!──ズシャ。
その巨大剣の幅広な刀身の側面で、文字通りのハエ叩き。脆くも潰され弾け粉々。
屍から生まれ、数々の非道暴走の果てに死に、煉獄送りで再び返り咲き。
ドゥルナスの一世一代の道化演舞は、観覧客も無く、ここで儚く
「
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