第125話 ミッション3 オールクリア!
トールの左腕の時計時刻で、PM23:58分。
上空は陰り、夜の帳が下がるも【
「──元気ですかっ!!! 元気があれば何でもできるー!はい、と言う訳で戦は見事勝利でーす。みなさんお疲れさまでしたー! あー、大分遅い晩メシとなりましたが、戦勝祝いと亡き戦友たちへの、新たな祝福すべき旅路への手向けも兼ねておりまーす!」
と、旅団団長トールが、顎しゃくれさせながらの深夜宴の挨拶。
『『『『「「「ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!」」」』』』
『『『『ワオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!!!』』』』
『『『『フィイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイ!!!』』』』
大狼、亜人種、魔獣ら連合部隊は大盛り上がりの大喝采。非常に野性味溢れる、色とりどりの面々で催される大饗宴。
会場となったここは、絶界トラファルガー内。戦場の奥にあった廃墟ビル群の中の都市大公園。
そこは、異様と言うべきか逆に正常と言うべきか、緑豊かなオアシス。
トールはそこに見覚えがあった。よく見れば、廃墟ビル群も朽ちてはいるもの既視感のある面影を残している。
遠くに見える上層階部が欠けたツインタワービルは、トールの亡き両親が嘗て務めていたオフィスがあった超高層ビル──。
ワールドトレードセンター。
つまり、ここはニューヨーク、マンハッタンの
その南西部に近い、15エーカー(約60700平方メートル。東京ドーム1.3個分)の牧草地「シープ・メドー」。幼少期から見知ったトールにとっては複雑な想いであったが、ここがわいわい宴会会場となっていた。
北側には歪な形に広がる池「ザ・レイク」。更に北側には公園内、最大の水源。106エーカー「シャクリーン・ケネディ・オナシス貯水池」
水源も正常十分に整っており、地下施設ながらもこの
まずは、最優先事項の戦後処理と食糧調達及びその調理。各行動別に班を形成、分担し分かれる。処理班が行ったのは、敵拠点の「清掃」と称した残党狩りと、精製培養されていたキメラ&ホムンクルス幼体群の完全駆除。
脳内オーバーヒートを起こしていたトールも、
これにて拠点内の脅威も空気も全てクリア。完全セーフティエリアと相成った。
食糧調達班は、拠点施設内と
大量の酒樽には余程酒好きなようで、
絶界側の調達班は、主にグリフォン、ヒッポグリフと魔獣らに任せられていた。
戦場の屍骸は浄化作用で大体は消滅していたが、最端の方に一部の屍骸が残っていた。それらはキメラでは無く、強制的に使役されていた魔獣類だが、どれも戦闘による損傷が激しい。反乱に加わった同胞ならば、喰らうに躊躇する。
だが「生き残る為には友すら喰らえ」ここはそんな弱肉強食世界。倫理観などの足枷をぶら下げていたら、まず生き残れはしない。
と言う訳で、比較的に損傷が少ない中で選んだのは、全長25mはある「ブラキオサウルス」と、15m級の「Tレックス」。
恐竜種は主に敵側に
とりあえずの「君に決めた!ゲットだぜー!」と言ったところだ。
繁殖されていた食用キメラもあるので、ここで食糧確保に困ることは無いであろう。サウルらの情報では、この絶界にも食糧となる生命が、多数生息していると言うことなので、ここに無ければ狩りに行けばいいだけの話だそうだ。
調理班は、宴会場となる絶界セントラルパーク内、
他にも広場内には、あちらこちらに大型岩製テーブルと丸太椅子。石で囲った原始的な焚き火台などもすでに用意されていた。
そして、運び込まれたどでかい恐竜などは、魔術の使える魔獣らの協力で、血抜きや、切り分け作業を行い、更に次々と食用キメラに調味料、器具などが搬入。それらであーだこーだと、調理班は仕込み作業で大忙しの状況だ。
そうした中、別目的、別行動をとっていたのはリディと朔夜だ。
その朔夜であるが、現在の姿は、ナイススレンダーボディ、黒髪 ボブヘアー、クール可愛系〝犬耳尻尾の獣人美女〟。
背には忍び刀を差し、露出度の高い忍び衣装。つまりは、人化の術による獣人形態に変容していた。
彼女らの別行動とは、ホムンクルス、キメラ製造ラボ施設のがさ入れ。
非常に悍ましい様相であったが、速攻それらは焼却処分。主に必要なのは薬品製造の器具類と、とある超希少アイテム。それは──
──賢者の石
「あったー!!」と、リディは戦の時より大テンション爆盛り上がり。素材は全て整った。
この地に来る前、修道院があった地下自然ドーム内、湿地帯に群生していた植物類。特に発光する植物には、リディが「お宝の山よー!」と、手当たり次第
ドゥルナスは、それらの素材をキメラ、ホムンクルス精製培養に使用していたようであった。
リディとその助手に朔夜。そのハーブ系素材らで作りだしたのは、上級回復系ポーション類。これらは今後の戦いに於いて、大きく役立つことであろう。
そして、採集した素材類の中にあったのは、淡く発光する超希少の【
その出来上がったものとは、超万能回復薬──
──エリクサー
このエリクサーにより、
これには一同大歓喜し、リディを神と崇め、生涯の忠誠を誓った者まで現れた。
それは、ゾイゼを筆頭とするリディ親衛隊が結成された瞬間であった。が、
リディは「うっとーしい。邪魔よ」と一蹴。
と、言った流れで一同が集まり、ようやくの大宴会、野外BBQ大会開催となった。
各岩製の大テーブルには、木製ジョッキに酒類、調理された大皿肉料理。
魔獣らと大狼の一部には、食べやすいように切り分けられた、各部位の生肉が盛りだくさんに並べられている。
あちらこちらの幾つもの焚き火台からは、ジュージューと大小の串焼きが焼かれ、香ばしい香りと煙が周囲に漂い、一同の眼と口元がヤバイことになっている。
この戦いで、反乱勢にとっては多くの犠牲があったもの、旅団側は犠牲ゼロでほぼ無傷での完全勝利。
その立役者の
「あーもう、とやかく語るのもアレなんで、乾杯?献杯? まぁいいや、とりあえず──好きなだけ呑んで喰らって謳えーーーーーーーーーーーーーーーー!!!」
『『『「「「ワウォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!」」」』』』』
この野生感満載の宴に、気の利いた洒落た言葉など無粋と、戦闘開始号令のような乾杯の音頭。これに一斉、盛大に呼応する多種多様の種族戦士たち。
いずれも超空腹状態であった為、眼を血走らせ、狂気の様相で目の前の大量食事にかぶりつく。大狼、魔獣らの方は「ガルガル」唸りながら喰らいついている。
亜人側は酒好きが多く、食前の先ずの一杯。木製のでかいビアジョッキにて一気にガブ飲み。そして一斉にガン!と、ジョッキを叩き置き──。
「く~~~~~~~~~~~~~~~!!」と、心身に染みわたる至高の瞬間を堪能。中には、感極まり号泣する者まで現れる。
カレンとトアのジョッキには、リディからコーラがあてがわれ、トールの左右隣に座り、同様に堪能しご満悦の様子だ。
それから、スパイスの効いた程よい塩加減の、骨付き肉にかぶりつき、再び一斉「うまし~~~~~~~~~~~~~~!!」と、大感動の大唱和。
この使用されているスパイスは、リディが
それと調理にトールが加わり、食用キメラや恐竜の肉についてあれこれ聞いたり、あーだこーだと指示を出したり、極上の味わいを叩きだしていた。
現在のカレンとトアは人化し、昨日の状態。可愛らしいケモ耳少女、少年に獣人化。朔夜も先ほどからの獣人型であるが、黒鉄と弥宵も人化の術にて獣人に変容していた。
黒鉄は、細マッチョ、長めの黒髪を後ろで束ねた、隻眼の精悍なクソイケメン。
弥宵は、黒髪サイドテールの小柄な美少女。
共に如何にもなケモ耳、尻尾付きのワイルド忍者型 狼獣人である。
他にも大狼たちの中に、獣人化スキル持ちがいるようで、ジョッキ片手に豪快に骨付き焼き肉を頬張っているのが見える。
「つうか、お前たちも人化できたんだな」
トールは空腹もあり、余りにも忙しないここまでの流れで問う暇も無かったが、ここでようやくこの話を切り出せた。
トールたちの岩製大テーブルのメンツは、リディ、双子、ガルム三忍狼と、交流を深めるべくサウル、ゲバル、ゾイゼの亜人戦士が加わり、主に各リーダー格が集まった席となった。
各自己紹介や、ここに攻め込んだ経緯、転移云々などの話を済ませてからの雑談である。
「ええまぁ、戦闘と移動以外は、人型の方が何かと便利でございますから、可能な者たちは人の住む街へ、情報収集や物資の調達によく繰り出しておりました」
「
「それと人型だと、こうして人種と同じ食事や酒を堪能できるでござりまするから、それを目当てで街へ通う者も多いでありまするよ。ねぇ兄上?」
「五月蠅い、弥宵! そう語るおぬしもであろうが!」
「フフ、楽しそうね。そういえば、ミゼーア様は人化状態でも神々しく荘厳とした美しさだったわね」
「リディは、ボクたちが生まれる前にお母たまに会ってたんだったよねー」
「それって、どれぐらい前なのー?」
「フフ、いつぐらいだったかしらね」
「私たち部隊がしばし、遠征に出かけていた時の話でございますな。あれはかなり前、確か……」
キッ!!と、リディに威圧眼光を飛ばされ、総毛立ち口を閉ざす朔夜。
「あー、リディ。お前って実際、年幾つなんだ? 経歴もあれだが、エルフって長命種族だろ? 見た目も相まって年齢不詳過ぎるんだよなー」
「あら? 地球では、女性に安易に年齢を聞くって、失礼なマナー違反行為に当たるって習わなかったかしら? 死ねばいいのに、このサバンナツェツェバエ!」
「やかましい! どんな罵倒言葉だよ! つか、おま、そう云うの気にするタイプだったのかよ。まぁ、言いたくなければ別にいいよ ハゲ」
「フフ、そう云うのは気にしない礼儀知らずのタイプのようね。まぁいいけど……
ハゲは余計よ。ハゲって言うあなたがアラビン・ドビン・ハゲチャビンね」
「なんのことだよ!」
この二人にとってはお馴染みの
「「キャハハハハハハハハハハハハハ!!」」
だが、カレンとトアにとっては、ほのぼの
「それで勇者よ。今後の話だが──」
「あー勇者はやめてくれ トールでいいよサウル。それとも「王子様」って呼んだ方がいいか?」
本来の名は「トオル・クガ・クレイン」それがいつしか「トール」へと変わり、「雷神」「おとたま」「団長」そして「勇者」と、これ以上、妙な呼び名が増えるのは勘弁だと、訂正改めを物申す。
「いや、サウルで頼む……では、改めてトールよ。我ら生き残った亜人戦士と魔獣共々、貴殿ら旅団の列席に加えてもらえぬであろうか」
「「「!!!」」」
「ワシからも頼むけぇのう。今度はおそらく、ドゥルナスの後ろの奴が動くじゃろうて、おんしゃらと行動を共にしとった方が互いに得じゃけぇのう」
「ソレト勇者…トールヨ。オヌシノ武ヲ、我ラニ指南ノホドヲ是非トモ頼ム!」
気づけば、他の亜人戦士らや魔獣たちも集まり、跪き
「そう言う事だトール。我ら一同は貴殿の力…いや、その人柄と絶対的な指揮者としての在りように惚れ込んだのだ。我らをその眩き光で導いてくれ!」
「何やら団長にベタ惚れのようでございますが、如何が致しますか? ドゥルナスが去り際に告げた名も気になりますし……」
「〝ヴェルハディス〟と、言ったかしら。推測だけど、私たちをこの世界に招待した祭りの主催者かもしれないわね…それで、どうするの団長?」
「あー、まぁ断る理由なんざねーし、何より、もうお前たちは共に戦った戦友だろ? 理由はどうあれ、ついてきてくれんなら有り難てー話だよ」
「それでは、我らを受け入れてもらえるか!?」
サウルは勿論、他の亜人戦士、魔獣らもその表情に晴れやかな光が差し込む。
「あー、よろしく頼むよ 戦友たち!」
『『「「ウォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!」」』』
その言葉に一同、盛大に大歓喜の歓声、咆哮を叫び奏でる。
「つうか、そうなるとこのメンツに新たな部隊名を考えねーとな……」
そして宴は、更なる大盛り上がりを見せ、亜人戦士、大狼獣人らと
仔狼たちはトールにじゃれつき、そこにカレンとトアがダイビングで絡み付く。
他の大狼たちは
「フフ、ゆかいな仲間たちが増え、大賑わいね」
──Mission3 Final Phase War Mission All Clear.! Congratulation!
NEW! バージョン UP!──Ver.16→Ver.20!
第5章 アビス ウォー 絶界の戦い 完
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