第74話 ジャバウォック
其れは、禍々しく
正に悪魔に取っての
『(なんやねんあれぇ!?アカンアカン!!天使が来よったでぇ!!)』
『(は!?何でこない所におんねん!?こいつ、まさか
『(俺ら下級やで! んなヤバイもんが、何でこないなとこ来んねん!? ワレぇ、何かしたんと、ちゃうんか!?)』
『(するかい! 慎ましく厳かに過ごしとったわいボケがぁ!!)』
『(アホか!おどれら騒ぎすぎや!あれの姿をエコロケってよく見いや!羽根なんぞ生えとらんやんけ!!)』
『『『(ホンマや!!ばったもんかあれ!?)』』』
『(なんやねん紛らわしい!天使ちゃうんならワシらでもイケるやろ!まだ、こんだけ数おるし!)』
『(せや! とりあえずワレ逝ってみいや!俺らその後に付いたったるきに、早よ逝けや!)』
『(ええやろ。俺がまず行くがな。ほな、おどれらちゃんと付いてきぃやな!おい押すなや!!)』
たった一人の人間だと侮り、完全にナメ腐って処刑を楽しむつもりでいた悪魔らは、予想だにしていない状況にパニック状態となるが、一部の悪魔らは戦意と殺意を高めているようだ。
「
ドン!!!
アフターバーナー点火、ロケットスタート。トールは更に『聖闘気』の出力を上げ群のど真ん中へとライフルを構え、ストロボライト照射をしながら雷撃が如く
『(アカン!!ごっつい勢いでこっち来よったで!!速やっ!!怖わ怖わ!!)』
『(おい!だから押すなや! あん? 何が来よっ熱っ!熱っ熱っ!なんやねんこれ身体が動かっ)』
ドオオオオオオオオオオオオオオオオン!!!
イキリ立った悪魔の一体だったが、轟音
脳内ヘッドアップディスプレイでは、気探パルスレーダー波により、
ロックオン ロックオン ロックオン ロックオン ロックオン ロックオン
ダダダ!!ダダダ!!ダダダ!!ダダダ!!ダダダ!!ダダダ!!
そこから、左右傍の悪魔らへとアサルトライフルを棒術のようにくるりくるりと鮮やか回し操り、
こんな調子で撃ちまくっていれば、弾薬は
ドオオオオオオオオオオオオオオオン!!!
もはや爆撃。そこに群がる悪魔らは一斉に薙ぎ払われる。直撃を受けた部位が破砕され千切れ飛び、その背後に連なるものまで衝撃波で大きく吹き飛ばした。
それは、質量200kgを超える鈍器と言うよりは重機。高度の低い自然落下とは違い、その無慈悲な暴威の膂力で振るわれ、秒速100m/sに加速された運動エネルギーは100万J。弾丸節約も兼ね、尚且つ範囲攻撃。破壊力も上々。
だが、左手を見れば歪な脚だけ残る。その凶悪な遠心力に耐えきれずに千切れて、本体は何処かへ消え去っていた。もういらん、とその脚はポイと捨てる。
「ハハハ!! さぁ、パーティタイムだ! 派手にダンスをキメて盛大に歓迎してくれよ お前ら! ここの楽曲は『ジョニー.B.グッド』が欲しい所だな!!」
トールは、更にギアを上げ速度が上昇。向かう雷光に、左右の二体が「負けられない戦いがここにある」と、必死に長爪を横薙ぎで振るうも、テンションMAXギターリストが如く、ライフルをギターのように抱えて膝スライディング。
ニーパットが床との摩擦でギャリリと火花を散らし、身体を仰け反らせてその下を軽快に滑り抜ける。
ロックオン ロックオン ロックオン ロックオン
ダダダ!!ダダダ!!ダダダ!!ダダダ!!
その通り過ぎ様に、その二体と続くもう二体を、斜め顎下から超速左右に振って各スリー射撃。頭頂を抜け、
そこから、流れるような手際で空マガジンをリリース。同時に新たなマガジンを嵌めリロード完了。
リズミカルな射撃音に回り回るストロボ照射は、舞台照明のスイングライトのようにライトアップされ彩られてゆく。そこは正に悪魔が踊り、血肉舞う、雷神演奏演出、狂気のライブハウス。
この時のトールの脳内再生BGMは『チャックベリー』の名ロックナンバー『ジョニー.B.グッド』。バックトゥザなんちゃらでも使われた名曲。世界を代表する
『地球代表』と称される理由は、太陽系外調査探査機 ボイジャー2機に『ボイジャーゴールデンレコード』と銘打った「地球の音」を録音されたレコードが搭載されており、これには『地球外生命体』に向けたメッセージが収められている。
その中、ロックの代表曲として録音されたのが、この名ナンバー。そうした事から正真正銘、正に『地球の代表曲』であると言えよう。
ロックオン ロックオン
ダダダ!!ダダダ!!
そうこう、ロックのリズムでロックオン。滑りながら身体を起こし、その勢いで立ち上がる。ライフルをくるりと逆さに右腕小脇に抱え、背後に銃口が向いたところで、ストックを右手で押さえ左手親指でトリガーを引く。ノールックで、後方二体の頭部を左右に振って撃ち抜く。
雷神と悪魔たちが織り成す演舞台。
──守るものは、ここには何も無い。誰かを気遣うことも一切の加減も、その死に罪悪感を抱く必要も無い。ただ殺傷するのみ。
嘗ては、人間であったものの、悪魔化した時点でその魂の救済は不可。その因果体まで魔に浸食さているが故に、完全
『聖闘気』のエクセルギーに満ちた神聖属性の一弾一撃が、彼らにとっての唯一の救済。
そして、この魔の瘴気に汚染された空間を浄化し、その撃壌之歌を詠むべく、祈りの
第五チャクラ『ヴィシュッダ』の開門状態。これが位置するのは言葉を発する喉。
過去、トールが死者への弔いの際に開いた【ヘブンズゲート】は、この奇跡の力による神からの祝福の神秘現象と言えよう。
──ヨハネ福音書 第1章 1節~。
「初めに
ティイイイイイイイン……。
そう
「
『『『『『(アカ──ンっ!!!!)』』』』』
『(アカン!アカン!アカンオカン!アカンオトン!オジンオバン!オジンオトン!オジンオジン!オジンオジン!オバン言い過ぎやな! あ、オジンか!?)』
『(何言うとんねん!!あいつを早ようぶち殺したりや!!焼け死ぬで!!)』
下級の悪魔たちに取って、それは灼熱で
「この
ダダダ!!ダダダ!!ドオオオン!!ダダダ!!ダダダ!!ドオオオオン!!
そうしてトールは、福音書の伏魔の言を謳いながら、射撃の合間に武術も交えて雷轟電撃、激しさを増してゆく。
前方射撃、右側射撃、旋風脚。右肩に銃を掲げ、後頭部越しに、左側射撃から後方射撃と同時に震脚。右肘で八極拳『
リロードしつつ高速回転しながら360度。次々と爆音を上げ迎撃するが、目まぐるしく続く包囲攻撃に、剛体術で強化しギリギリで躱すが、さすがに無傷とはいかない。上半身が幾つも
「この人は証の為に来た。光について証をし、彼によって全ての人が信じる為である。全ての人を照すまことの光があって、世に来た。」
背中のハイドレーションキャリアバックやボディーアーマーにも、複数切られた跡が見られる。幸いにも中の水や食料は何とか無事なようであるが、攻撃は休まること無くまだまだ続く。
だが、そんな紙一重の状況の中、トールの集中力が更に増す。情報管制、火器管制システムがその精度を上げ、視覚を排除。感覚のみで対応する。
その情報管制は、旧式のパルスレーダーからイージス艦が如く、フェーズドアレイレーダーに進化。脳内一人称真正面のディスプレイ映像から、
「彼は世にいた。そして、世は彼によってできたのであるが、世は彼を知らずにいた。彼は自分のところに来たのに、自分の民は彼を受けいれなかった」
ロックオン ロックオン ロックオン ロックオン ロックオン ロックオン
ドオオオン!!ダダダ!!ドオオオオオン!!ダダダ!!!ドオオオオン!!
『聖闘気』の付与を纏った『M27 IAR』は、もはや
続々と折り重なるように、上下から襲い掛かる悪魔たちに螺旋回転。上方の悪魔にはストック戦槌&射撃。下方には大鎌のような旋風蹴りで頭部を刈り取る。まるで暴風、竜巻のように薙ぎ払い、トールを中心に満開の血肉の花が咲き乱れ、彩られてゆく。
「しかし、彼を受けいれた者、すなわち、その名を信んじた人々には、彼は神の子となる力を与えたのである。それらの人は、血筋によらず、肉の欲によらず、また、人の欲にもよらず、ただ神によって生まれたのである」
そうして、ヨハネ福音書 第1章の1節から詠みあげ、13節を終えたころには、瘴気に覆われて
ウエポンライトをハイライトに切り替え見渡せば、一部では燃え上がり、いずれも煙が昇る
ダダダ!!ダダダ!!ドン!!ダダダ!!ダダダ!!ドン!!
辛うじて生存をしているものも虫の息。皮膚が焼け
「そして、
そして、伏魔式聖書の祷りの言、最後の14節を綴ったところで、その場の全ての『レッサーイビル』は沈黙した。総司令部の知らぬところで密かに、アリの巣コロリ作戦は完遂を迎える。
因みにヨハネ福音書の一章は51節まであるが、
他にも悪魔祓いに使われる他の章や詩編の節が多数あるが、今回詠まれたのはその一部分に過ぎない。
「エイメン」
ティィィィィィィィィィン……。
祈りの終いの言と同時に、不可視のティンシャの清浄な音色が響き渡る。
完全浄化されたことにより、悪魔らの死骸が分解し塵と化し、この聖域と化した空間一帯に厳かな静寂が訪れた。
不思議な事に、この空間に最初に来た時に見たテロリストらの血肉など、負のイメージを抱くもの全てが消滅。
劣化損傷具合はそのままだが、ただの寂れた古い施設の空間だけとなった。
──First mission 所定のエリアに巣くう
「あーウルフ
『ザー…ザザッ…ザー……』
「分かってるっつーの。一応報告だよ」
──Congratulation! First mission clear!
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