第73話 アップグレード
「‶
──戦闘体勢 デフコン2に上昇。
──M.A.T システム スプレマシーモード発動。
トールの脳内の
警戒レッドアラートが鳴り響き、慌ただしく雷速で各オペレーターが配置に就く。
この「
──M.A.T System Supremacy mode activate.……system error.
現在使用中のOSソフトウェアでは このシステムに対応できません。
──新システム対応用アップグレードファイルは、 すでにダウンロード完了。
フォルダーに保管してあります。 インストールしますか? YES/NO?
──YES
──・・・・・・インストール完了。 起動しますか? YES/NO?
──YES
──了解。起動を開始します。
これにより、脳内でのルート演算、格納複数データの
これは、地球では使う事は無いであろうと、イメージだけの上級戦闘アーツシステム。この状況では使わざる得ないとの判断。新たな『気剄力』の運用、増強
──NEW!──パッチファイルネーム Thor Ver.14.0.
この6日後にCSTのキャロルが、初のバージョンアップを経験することになるが、このプロセスは、トールにとっては13度目である。
その内容は、Ver.2『【
Ver.3『
Ver.5『細胞活性化により身体修復、回復機能の向上』。
因みに「戦闘狂」と呼ばれる者の要因として、この『脳内麻薬βエンドルフィン』の分泌による多幸感を
Ver.6『格闘能力強化及び習得の効率化』。Ver.7『
Ver.8『気剄の発現、発剄の会得』。Ver.9『気剄力の制御術による身体各機能の向上』。Ver.10『遺伝子の変化による大幅な肉体強化』。
Ver.11『脳稼働率の上昇及び、思考加速により情報処理能力の更なる劇的向上』。
Ver.12『
Ver.13『銃器を含めた現代戦術と、剄格闘術を取り入れたシステムの創案。及び、その運用の確立による戦闘術の大幅な上昇変革と、闘争における意識変化』。
この意識変化は、戦闘や殺傷行為における、不必要な部分的感情の完全遮断だ。
これにより、苛烈な戦場においての精神強化が成され、PTSDなどの精神疾患を患う心配も無い。この狂気の状況下でも平常心を維持できるのは、このパッチバージョンの効果が如実に表れていることが窺える。
尚、『アジュナ』他のトールのチャクラ開眼具合は、頭頂部、脳内作用に影響する第七チャクラ『サハスララ』。喉に位置する第5の『ヴィシュッダ』は、浄化、創造、学習能力に霊能力、危機感知にも影響し『
心臓に位置する第4『アナハタ』は、太陽からのエネルギーを吸収。大気、触覚、手の動きに関連している。
尾骨に位置する第2『スワディシュターナ』は、生殖を司るチャクラだが、遺伝子情報がここに休眠している。遺伝子の変化による、外見そのままの正常な肉体強化は、このチャクラの開眼によって引き起こされた現象。
尾骨、骨盤の間に位置する第1『ムラダラ』は、まだ開眼しておらず。つまりは、第2から第7の6輪までのチャクラを開眼しているということだ。
以上が異常なトールの、現在のバージョンスペック情報だ。地球人類が到達できる最極地に、限りなく近い位置に立っている。
だが、この神秘的身体論から遥か
そして、この進化には瞬間的に効果を示すものと、一定期間、時間を要するものがある。このバージョンアップは、RPGにおけるレベルアップと、スキル習得で人体内に起こり得る、メカニズムに近いことが想像できる。
──【
そして、トールは何を思ったのか、ウエポンライトの電源をオフにした。この悪夢のような
煌々たる強い光の焦熱が消失したことにより、天井を含めた360度全てが、業火の如し悪魔の群が覆い尽くす。
命の灯火が明滅を繰り返す中、トールは、額から胸に掛けて左手で十字を切る。
この恐々とした極限状態極み入る状況の中、トールは犬歯をガチンと噛み鳴らし、獰猛な笑みを浮かべる。その眼には明らかな捕食者の
その体内では、大気から取り入れた霊素を変換し、濃密な闘気が練られて圧縮集束を繰り返す。それが超高密度のエクセルギー流動波と化し、全身を隈なく雷速を超える速度で循環する。更に加速は続き、体表面の発光現象が起き、視認できるほどの闘争エクセルギー、所謂【オーラ】へと変容する。
『エクセルギー』とは、熱力学において自然科学の「系」。今回では霊素に当たるが、外界との仕事を交換しながら、平衡するまで状態変化する時「系(霊素)」から理論上取り出せる最大の仕事量。
この際に、仕事ができる部分とできない部分で区別されるが、この仕事ができる有効エネルギーが『エクセルギー』と呼ばれる。
『『『『『ギャイ!!!???』』』』』
強い光源という、悪魔たちの弱点が露呈されたにも拘らず、そのアドバンテージを自ら消し、悠々ゆらゆらと群が囲う中央に歩き出たと同時に、突然の獲物の発光現象に、驚きの反応を見せる悪魔生物たち。
そのオーラの光に、真夏の太陽の陽射しが如く、ジリジリと照りつける熱を感じる。
『(前の方、何しとんねん!? 後ろが
『(やかましわい!俺に言うなや!こっからやと見いひんて!って、俺目ぇ無かったやんけ!ちょっやめや、爪でケツの穴突くなや!こそばゆいって!ちょっちょっ、うひゃひゃひゃひゃほい!)』
『(お前らうっさいねん!しかし、なんやねん おどれらのその頭!?チンコみたいな頭しよってからに!かっこええと思っとるんとちゃうんか!?きしょいねん!)』
『『(いや、お前もやろ!)』』
などと、この包囲の後方や柱の影にいる悪魔らは、この混雑で
「
ドン!!!!
【縮地】に気剄力を織り交ぜた、強力推進アフターバーナーによる、カタパルトいらずのゼロ距離離陸発進。雷速で高機動、統合打撃戦闘機が、暗雲が如き密集する悪魔の群の中へと、超低空高速飛行で突き進む。
そこから、ウエポンライトを「ハイパワーストロボモード」にて点灯。急激な高速点滅照射を受けた前線の悪魔らは、全身の感覚が混乱しフリーズする。
実際の作戦では、このストロボ照射によって、標的の視界を大いに攪乱して視覚を奪い、戦闘能力を著しく低下させる効果があるが、視覚が退化しているこの悪魔たちには、体感感覚でそれが起きた。
ダダダ!!
まずは一番手前。標的に定めた1体を飛行しながら、その這いつくばった低い位置の頭部に、上から『M27 IAR』の銃口を押し当て、
透かさず銃口を上げ、飛行の勢いそのままで、背後の一体に接触。その頭部を、パイルバンカーが如し蹴りで踏みつけ破砕し、アフターバーナー点火。方向を真上に変えて離陸。
ダダダ!!ダダダ!!ダダダ!!ダダダ!!ダダダ!ダダダ!!ダダダ!!ダダダ!!ダダダ!!
ストロボ照射を受けた悪魔らは、強力殺虫剤を浴びたGのようにボトボトと落下していく。
その落下途中の刹那に、回転しながら高性能火器管制システムによる精密射撃で、悪魔らの頭部に5.56mm弾
通常5.56mm弾に対しては、高い防弾性能を示したその旧軍用ヘル型形状の頭部だが、トールは銃に『気剄力』を練り込んで弾丸に流し込む。そのエクセルギーを纏った弾丸は、脅威的な破壊力を生み出す。
凡そ8mからの落下。優に200kgを超える死骸は重力加速も加わり、地上に群がる他の悪魔らへと爆撃の如く落下。その運動エネルギーは15,690J。
岩のような肉の塊がドスリ、グシャリと降り注ぎ、直撃を受けて圧し潰されたりと混乱が生まれ、群の動きが激しいものへと活発化。
今ので30発消費。8m上空天井に逆さ状態で着地したトールは、鮮やかに高速リロードしながら天井を蹴り跳び、電光雷轟と群の中へと振り落ちる。
オーラを纏った発光により、その光景は正に落雷。
ドオオオオオオオオオオオオン!!!!
その着地衝撃により、数体が粉々に弾け飛ぶ。コンクリート製の床が大きくクレーターのように陥没。爆風が激しく周囲を薙ぎ払う。
この『M.A.T システム』は、以前イラクで見せた、拳銃射撃手法『C.A.R(センター.アクシス.リコック)システム』に、それまで会得した武術を織り交ぜたオリジナルシステムを更に練り上げ、
これまで
しかし、本能に訴えるこの凶悪な危機的状況に、脳神経はそれに見事に応えて、新たな
加えて、悪魔生物に対してこれまでの気剄力を、
そして、周囲の床に悪魔たちの血肉が飛び散る中、粉塵舞うクレーター中央に力み無く、
その両手の『
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます