第6話 説得

 翌日の昼食会も又贅を尽くしたものだった。今日は海鮮系のイタリア料理が並べられていた。


 僕はコホンと咳をしてゆっくりと議題を持ち上げた。


「皆さん、料理の前にですが不謹慎な話をさせて頂きます。皆さんには僕に隠し事がありますね? 特に棺さん」


 棺さん、金丸さん、英知さん共に戸惑う。英子さんだけ落ち着いている。


「私の泊まった部屋から人間の胴が発見されました」


 棺さんがみるみる青ざめる。金丸さん、英知さんは動揺していた。


「棺さん、何があったのですか? 僕はあなたが根っからの悪人じゃないと思います。理由がある筈です」


 傲慢ではあっても人間性まで棄てていない筈だ。そう信じて訊ねる。


「……元々この教会には埋蔵金があると噂されておりました。達治も私はね、最初は教会の活動の為にそれを探そうとしました。しかし、達治は吹聴癖がある男でしてそれを周囲に漏らしていた。そのままでは不味い。そう思い話し合いになりましたが、口論になりました。もみ合いの末、達治は打ち所が悪く死んでしまった。これは教会にとって大変不名誉なことです。その天啓が私に降りてきました。幸いにも私は狩人で調理も出来た。達治の血と肉を強力な臭い消しで肉を発酵させて調理してこの教会に来る客に徐々に振舞ったんですわ。まさか、全て処分する前に見つかるなんて」


 なるほど、匂い慣れして教会員達は気付かなかったのだろう。客も客で迂闊に尋ねるのも野暮だと考えたのだろう。


「それで神が喜ばれるとお思いですか?」

「誰かが教会を守らなければいかんのですよ」


 棺さんは喉下にナイフを突きつけようとする。切っ先からほんの少し血が垂れていた。


「それはずるいやり方です。棺さん」

「では、どうしろと?」

「聖パウロはサウロだった頃、多くのクリスチャンを殺しました。ですが、改心後多くのクリスチャンを牧す人となったのです。あなたもそうなるべきだ」

「しかし、私はもう年で先が……」

「信仰に年も序列も関係ありません」

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