第5話 言質

 翌朝、眠気を催しながら英子さんの部屋に向かおうとする。丁度英子さんが部屋から出て来て「散歩しませんか?」と言うので同伴させて頂く。


 散歩がてら今までの会員についてそれとなく話していく。前代の会員の話になって英子さんは溜め息を吐く。


「どうして財宝は人の眼を眩ませるのでしょうねえ、先生?」


 年配者から先生と呼ばれるのはあまり嬉しくないが、同意する


「それで前代の方が失踪した時、英子さん達はどうされたのですか」

「その日は役員会でして。生憎と達治さんは会員であっても役員ではなかったのですよ。ですから失踪に気付いたのは数日後でした。警察に届出を出したもの、達治さんは天涯孤独の身でしたので何処に行ったのか当てが判らなかったのです」


 少し言い訳染みた口調にも感じられるが、これで棺さんのアリバイは崩れたと言っても同然だ。


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