大軍を前に降伏勧告しました。
フィーアネン王国はこじんまりした小国だ。
人口は20万人もいず、わが公爵家の半分以下、面積はもっと小さい。
その国境の村はのどかでのんびりしていた。
普段は……
でも、今は厳戒態勢だ。
しかし、国境と言っても小さい砦があるだけで、城壁があるわけでもない。
柵がおざなり程度にあるだけだ。
その砦に騎士や兵士が動員されていた。
そして、騎士の数は元々千人もいず、多くの騎士が現在反逆容疑で拘束中だ。
今は動員した兵士も含めて数百人もいないだろう。このフィーアネン王国の全戦力だ。
そして、目の前の巨大なクレーターのような窪地を挟んだ前にはバイエフェルト王国の大軍が勢ぞろいしていた。
その数二万以上。戦力的には圧倒的にバイエフェルト王国の方が多かった。
こちらの砦の連中はもう顔面真っ青だった。
我が国の連中を除いて。
エルグランは王家の影と我が家の騎士団に一部が間に合った。
総勢50名もいない。
でも、横には昼寝しているギャオギャオがいる。
昼寝なんてしてないで少しは働けよ、と思わないでもなかったが、まあ、戦場に出すつもりはないので、良いんだけど。
まあ、ギャオギャオがいて、騎士や兵士たちは最初は少しは安心していたようだが、着いてから昼寝を始めたので、皆茫然としているんだけど。
私としては何度も言うように全然ギャオギャオを戦場に出すつもりはないのでいいんだけど、主人が働いているのに昼寝されているのはちょっと何かかムカつく。
それとピンク頭だ。
「ちょっとそこの騎士さま。凛々しいお姿ですわ」
ピンク頭が厳つい男たちの中のイケメンを見つけると所かまわず声をかけまくっているのだ。
注意したら、
「あんたはお相手がいるから良いでしょ。私は今はフリーだから別に問題ないのよ」
そう言って私にはない胸を強調して男にしなだれかかるのは本当にむかつく。
まあ、ダダ下がり気味の士気を少しは上げるのに貢献しているのでお目こぼしをしているが、我が家の騎士に手を出したら殺す。
「私は伝説の聖女様なのよ。生きてさえいれば手足が千切れようが全て治してあげるから」
「よろしくお願いします」
大口叩くピンク頭に近衛の騎士隊長が頼んでいるが、その隊長にしなだれかかるのは止めろって言うの!
女王の機嫌がめちゃくちゃ悪くなっているじゃない。
「女王陛下。申し訳ありません。うちの聖女はその少し素行が悪くて」
私がすまなさそうに言うと
「ちょっと、冗談で山一つぶっ潰すあんたに素行で文句を言われたくないわよ」
横からピンク頭がちゃちゃ入れてくるんだけど、ちょっと誰のお陰でこんな言い訳しなくてはいけないと思っているのよ!
「いえいえ、聖女様のお相手をするのも当然近衛の隊長の役目です」
女王の目が完全に怒っているんだけど、
「いえ、陛下、これは」
近衛の隊長が必死に言い訳しているが、
「隊長様。女王陛下のお許しが出ましたわ。あちらでもっとお話をしましょう」
「えっ、いえ私は護衛の役目が」
「何を言っているのですか。フランがいれば全然問題ありませんわ。さあ、こちらに」
嫌がる近衛の隊長を強引に引きずって行こうとするんだけど。でも、腕に豊満な胸を擦り付けられて隊長の顔が緩んでいる。
女王の頬がピクピクひくついているんだけど、後は知らない……
そんな時だ。
突如として私達の目の前に巨大な顔が映り込んだのだ。
魔術で拡大投影したんだろう。
「げっ、ガマガエル二世」
でも、それ以上にその顔を見た私の大声が陣内にこだましてしまった。
いや、本当に私が殴り倒した商人のブルーセマそっくりだったんだって!
バイエフエルトのカスペル王の渾名がガマガエルとなった瞬間だった。
「誰がガマガエルだ! 小娘」
男が大声で反応した。
「へ、陛下。余計なことをおっしゃらずに本題に」
横から誰かが必死に叫んでいる。
「そうであった。小娘など何のことはない」
ガマガエルはそう言うと取り繕った笑顔をした。
でも、ますます醜くなったんだけど。心が醜いと見た目も醜くなるのだろうか?
「私はカスペル・バイエフエルト。偉大なるバイエフエルト王国の国王である」
その後大口を開けて笑っているんだけど。
「なんかますますガマガエルになってきたね」
ジェドの声に皆失笑した。
「なにがおかしいのだ」
「陛下、続きを」
「おお、そうであった」
ガマガエルは笑顔を取り繕って
「フイーアネン王国に継ぐ。我が国の子爵テュール・ブルーセマに乱暴狼藉を尽くしたこと。また、我が国に援助を請うてきた王配や王太子並びにその配下の貴族たちを拘束したこと。重大な我が国への侮辱行為である。
反省するならば、直ちに降伏せよ。
その証としてラウラ女王を人質として差し出せば許してやろう。
返答いかんによっては直ちに全軍で攻撃を開始する」
なんかガマガエルが変なことを言っているんだけど。元々内政干渉をしてきたのはバイエフエルトの方だ。謝るのはそちらだろう。
「私はフィーアネン王国女王ラウラです」
ジェドの持ってきた拡大魔導具で女王の拡大画面が空に浮かびあがった。
「元々、ブルーセマを使って王国内に扇動させたのはそちらの内政干渉に当たります。謝るのはそちらでしょう」
「何を言うやら、陛下。あなた一人が私の愛人になる事でこの国は救われるのですぞ」
「何を言うのです。汚らしい」
女王は汚らしいガマガエルを見るようにカスペルを見た。
「わっはっはっはっはっ。あなたのそのきつい顔が私の手にかかって悲鳴を上げるさまが目に浮かびますな」
「な、なんですって」
女王が手を震わせた。
もう、下品な男は許さない。
私は女王を押しのけて画面に出た。
「そこのカス王・ガマガエル」
私は大声で叫んでいたのだ。
「だ、誰がカス王だ。俺はカスペルだ」
「カスは同じじゃない」
「カスではないカスペルだ」
「だからカスでしょ」
私達は言い合った。ガマガエルも口角泡を飛ばして反撃してくる。
「頭のレベルが同じだ」
うちの騎士団のモーリスの声がした。じろりと睨むと首をすくめてくれたが、
「陛下、相手に合わせてはなりません」
向こうでも何か言っているけれど、
「まあ、いいわ。私はフランソワーズ・ルブランはここに宣告する。直ちにバイエフエルト軍は降伏せよ。さもなくば殲滅する」
私は大上段に宣告したのだった
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さて、大軍を前に降伏勧告したフラン。
結果は今夜更新予定です。
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