反省房の中は退屈で、礼儀作法の先生の悪口を呟いたら転移してしまいました
とても、危惧した食事はちゃんと運んでくれた。
見たこともない騎士が出してくれたんだけど。
でも、何でこの王立学園で見たこともない騎士が私を監視しているんだろう。
というか、反省房なんて絶対に学園にあるのはおかしいと思うんだけど。
今言っても仕方がないけれど。
出された食事はちっぽけなカビの生えたようなパンが一個と何かわからない野菜のスープだった。
何か酷い匂いがする。
まあ、母に騙されてさせられた魔の森の試練とかの時に、食料無くなって、魔の森で適当に食べていた草に比べればマシだったが。
スープも何か臭かったけれど、まあ、無いよりマシだ。
でも、たかだか生徒会室でアドとキスしていただけで、この反省房行きなんて絶対におかしい。
それなら大半のカップルは反省房行きだ。
まだ、裸でアドと抱き合っていたというなら判るけれど、フェリシー先生はキスしていたことが悪いって言っていたし。
それでこの食事はないと思う。
絶対にこれは改めさせないと。
でも、私がフェリシー先生に逆らうのは無理だし……。あの先生の前に出ると基本的に言葉は出ない。
反論すると100倍になって返ってくるし、私では絶対に無理だ。
うーむ。
そうだ。メラニーに相談しよう。メラニーならなんとかしてくれるだろう。前世でもキスは普通にしたことあるみたいだし、男に騙されたのだ散々言っていたから、キスに対してもおおらかだろう。それに何故かメラニーはフェリシー先生のお気に入りだし。
うまいこと言ってくれるだろう。
基本的に、人前ではアドとキスするのは嫌だけど、アドがこの前みたいにいつやってくるか判らない。それにフェリシー先生の考えだと絶対に食べさせ合いもだめだ。
でも、そんなのアドとは既に何回もしている。これがフェリシー先生に見つからないとも限らない。
昔から普通にやっていることだし、これでまた反省房に入れられたらたまったものではない。
なんとかしてメラニーに言いくるめてもらわないと。
後で言ったらメラニーにそんなの出来るわけ無いじゃないとか散々文句言われたけれど。
しかし、反省房の中はやること無いから暇だ。
落書きを良く見たら大半は母が書いたものみたいだった。
何でもこの塔は初代ルブラン公爵が作ったみたいで、お祖父様の馬鹿とか……これは絶対に三代目た。死ねとか、耄碌しろとかボロカスに書かれている。
ただ三代目はファドーツの会戦の英雄で歴史の教科書にも出てくる。
英雄がこんな事書いて良いのか、と思わず笑ってしまった。
「あんた何他人事だと思っているのよ。あんたも教科書に残るのはもう確実なのよ。何か変なもの残していないでしょうね」
メラニーに後で話したら言われてしまったけれど。
うーん、暇だから、フェリシー先生の鬼って書いた気がする。それだけなら私が書いたってバレないよね?
何しろ母の落書きがすごかったのだ。
フェリシー死ねから始まって鬼ババア、行き遅れババア、一生男にもてずにそこにいろとかボロクソに書かれている。
そんな事書いているからフェリシー先生に嫌われるのだ。
私も前世なんて男の子に振り向いてもらったこと無かった。病弱だったし、病院には年の近い男の子もいなかった。年いった先生とか、10歳の男の子とか。
その子には将来お姉ちゃんを嫁にしてやるって言われたけれど、子供に言われもね……。
今もアドに振られたら、こんな魔力が化け物みたいに大きい女なんてモテるわけ無いし。
私にはフェリシー先生が母に怒るのも少しは理解できた。というか、フェリシー先生って未来の私かもしれない。私もアドに捨てられて、結婚せずに魔術の教師なんてやっていたらあんなふうに厳しくなってしまうのかもしれない。
しかし、ひょっとしてフェリシー先生が私に厳しいのって私が母の子供だからだろうか?
あの生意気なアンナの娘だから。
そう考えたら全部理解できるんだけど。
ああああ、まだこの学園は2年もあるんだけど。
それにフェリシー先生は王宮の礼儀作法の先生でもある。
という事は、アドと一緒になったら一生涯虐められるんだろうか?
それは嫌かも……
思わずそう思ってしまったんだけど。
うーん、こんな所に一人でいたら変なこと考えてしまうかも。
でも暇だ。
母の落書きは延々に続いていた。
先生に対する愚痴と父に対する愛が延々と。
こんな所に書くのはやめてほしい。
まあ、父と母が仲が良いのは良い事だが。
あの二人喧嘩したら、世界大戦もかくやという状況になってしまうのは確実だし。
昔荒野と化した魔の森の一角を通った時に説明されたのだ。これが父と母の喧嘩の跡だと聞いた時には唖然とした。
でも、惚気を読まされる娘としてはどうかと思うのだ。
と言うかやめてほしい。
そして、その下に『逃げたければ、この壁に向けてフェリシーの悪口を叫べ』
と書かれているのには笑ってしまった。
「ふんっ、そんな悪口を言って逃げられる訳無いじゃん」
母らしい冗談だと私は思ったのだ。
「フェリシー先生の馬鹿!」
私は冗談で言ってみたのだ。
その瞬間だ。
壁が少し光って転移魔法陣が浮かび上がったのだ。
私は声を上げるまもなく、転移していた。
そして、一瞬後には誰かのベッドの上に転移していたのだ。
「ギャッ」
女性の押しつぶされたような悲鳴が部屋に響いた。
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ここまで読んで頂いてありがとうございました。
フランが落ちたのは誰の上でしょうか?
続きは明日更新予定です。
そして、明日はついに本が出来る日です。
本当に皆さま有難うございます!
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