王弟の息子視点3 邪魔な暴虐女を反省房に閉じ込めました

父たちはXデーを学園におけるサマーパーティーの日にしたようだ。

公国の大公が、留学している息子達の様子を見に来るのに合わせて決起しようとしたのだ。


父達はその日に向けて着々と手を打っていた。

もともと王弟として、配下の兵力は100名ほどしかいなかったが、昨年の侯爵反逆時に反逆して、許された元近衛の多くを雇って数は増えていた。

国王には「罪を憎んで人を憎まずですよ」とか調子のよいことを言っていたが、その実は決起時の戦力にするためだ。


今まで陰で雇っていた戦力の私兵の500も変装させて次々に王都に潜伏させていた。


更には当日は大公が200の兵に守られてやってくる。

それ以外に私兵を300旅人に紛れさせて連れてくる予定だった。


それ以外に父に付き従う、貴族たちが20、しかし、大半が男爵家や伯爵子爵家の二男三男だ。合わせたら彼らだけで千は越えるだろう。


ただ、クラリスの父のトラクレール公爵は味方に引き込むのは諦めたようだ。


事が成ってから味方にするらしい。


何しろその娘は完全に俺の手の内に下ってしまったのだから。



計画では、サマーパーティーの時に集まった国王とアドルフとシルヴァンを一網打尽にして、高位貴族を拘束、一気に事をなす予定だ。


侯爵の反逆が失敗したのは国王らを一気にやらなかったことにあると父は言っていた。

決起した時が、国王の叔父らが死ぬ時なのだ。

まあ、アドルフやシルヴァンには可哀そうだが、仕方があるまい。小さいころから王族、特に王太后にいじめられていた父はもうそこまで、屈折していた。

その横でぬくぬくしていた実の兄の国王も許せないみたいだ。まあ、俺から言わせれば王太后の前でぬくぬくしていたのは暴虐女だけだったが。



そして、当日会場にいる近衛と中央騎士団は連れて来た兵士らで制圧できるが、邪魔なのは暴虐女だ。

こいつは昨年、帝国が企てた侯爵の反逆時も、アルメリア王国の政変も、ズンダーラ教の教皇らもほとんど一人で制圧しているのだ。

エーリックの魔力量がこいつと匹敵する量だと聞いていても、一抹の不安があった。


当日はなんとしても王族やアドルフから離れさせる必要がある。


どうすれば二人は離れてくれるだろう?


観察してみると暴虐女は嫉妬深いみたいで、しょっちゅうアドルフと喧嘩していた。


試しにクラス対抗戦の時にクラリスをアドルフに近づけると即座に反応してくれた。

本当に単純で、馬鹿だ。


こんなに楽に離れてくれて良いのか?

と呆気にとられたが、試験を機にまた仲直りしてしまったらしい。

やはり片手間では無理だ。

俺は作戦を練り直すことにした。



取り合えず付き合いだした公爵家のクラリスを、こちら側に取り込むのは割と簡単だった。

旧帝国の魔道具魅了の髪飾りをクラリスにうまい具合にプレゼント出来たのだ。

そして、徐々に魅了して、今では完全に意のままに動くように魅了できた。


今まで、散々ルブランとラクロワのわがままな子供たちに翻弄されてきたクラリスは

「今まで大変だったね」と今までの労を労ってやると、

「私の事をそこまで褒めていただけたのは殿下が初めてです」

嬉々として、魅了にかかってしまったのだ。


そして、そのクラリスと、決起時に利用するわが屋敷と生徒会室をつなぐ転移装置のテストを行った時だ。


その時はテスト期間中で、絶対に誰も生徒会室にいないと思っていたのに、アドルフと暴虐女がいたのは驚いた。装置を設置したのを知られたかと一瞬青くなったが、キスをしていた二人の慌てようはそれ以上だった。


そうだ。これを利用しよう。俺は思いついたのだ。


「クラリス、酷いよね。あの二人は。俺達が必死に生徒会のことをしているのに、裸で抱き合っていたなんて」

「えっ、殿下、彼らは別にキスしていただけで」

戸惑ったクラリスが言うが、


「何言っているんだ。クラリス。確かにあの二人は裸で僕らの前で抱き合っていただろう」

「えっ、そうでしたっけ」

更に俺が言うと、クラリスは考え込むようになった。


「そうだったろう。僕らが外で必死に生徒会の仕事をしている時に、神聖な生徒会室であんな淫行をしていたんだよ」

「そうでした。本当に」

クラリスの目がぼうっとしてきた。


「許せないよね」

「本当です」

本気で怒り出したのだ。


「これは皆に言ってなんとかしてもらわないと」

「本当ですわ。殿下。神聖な生徒会室であんな事しているなんて停学になるんじゃないですか」

「いや、それは当然だが、反省房で反省してもらわないと」

俺は暴虐女をいざという時に出られない反省房に閉じ込めることにしたのだ。


あそこは、昔から酷いいたずらょした者が閉じ込められた由緒正しき反省房だった。


と言っても入れられたのが大半がルブラン家の人間だったが。血は争えないらしい。


最後は20年くらい前に、帝国の現皇帝の髪の毛を燃やしたとかで、今のルブラン公爵夫人が入れられたのが最後のはずだ。


強力なルブランの人間を閉じ込めても大丈夫なように強力な結界が張られているはずだ。

いくらあの凶暴女でも、あの中に入れられたら出られないはずだ。


あいつさえ閉じ込めておけばこちらには大公の子供達を始め強力な魔術師達もいる。万が一失敗する可能性はないだろう。


そして、国王さえ殺せば全ては成功するはずだった。


俺達はせっせと二人の淫行の噂話をばら撒いたのだ。


そして、アドルフが大公を迎える準備のために王宮に呼ばれている間に、事を起こすことにしたのだ。

いくらアドルフがあがいたところで、反省房に入れてしまえば、事を起こすまでに暴虐女を反省房から助け出すなんて無理だ。


俺達はアドがいない間に生徒会代表としてフェリシーのところに面会しに言ったのだ。


「なんですって、フランソワーズさんと殿下が生徒会室で裸で抱き合っていたですって」

フェリシーは一瞬で怒髪天になった。


「キスだけでも、反省帽ですのに、裸で抱き合っていたなど、許されることではありません。E組から100点減点します」

フェリシーは何か訳の判らないことを言ってくれた。E組から減点されて、何が悲しいんだろう?


でも、キスだけで、反省房になるのか?


そこは何か俺には理解できないことだったが、それならこんなに時間掛ける必要も無かったのだ。


俺は直ちに暴虐女の所にフェリシーを連れて行ったのだった


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着々と進められる謀反の準備

捕まったフランの運命やいかに。

ここから最大の山場の開始です。


ついにこの物語の書籍の出版社からの出荷が、明日になりました。

本屋さんに並ぶのはその一日から三日後との事ですが、もうドキドキです。

ここまでこれたのも応援して頂いた皆様あっての事です。

本当にありがとうございました。

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