クラス対抗戦が始まって、友人に婚約者との間を引き裂かれました

そして、その日はアドと久しぶりに二人だけで過ごせて私はルンルンで帰って来たのだ。

その日の夜も幸せな気分でぐっすり眠れた。


そして、今日からはあの最悪の補講もない。

アドとはルンルンだし、嫌な補講はないし、あのエーリックの憎たらしい顔を見なくていいし最高だった。


そう、そのまま幸せな気分で、放課後まで過ごせたのだ。


放課後までは。


その放課後、クラス対抗戦委員のアルマンとメラニーが帰ってくるまでは……



私は珍しく、補講もなく空いた放課後を学食で皆とダラダラしていた。


「フラン様。昨日殿下とデートされたんですって」

そこへジャッキーが飛び込むように入ってきた。


「聞きましたわよ。公衆の面前で殿下にキスされたとか」

「キャッ」

「凄い」

「えっ、そうなの」

周りの者は歓声を上げる。

イヴォンヌらが興味津々と見てくる。


「他クラスで見た方がいたみたいで、凄まじい噂になっていますわ」

「本当に? アドの奴、いきなりキスしてきたから」

真っ赤になった私がブツブツ文句を言う。


「まあ、フランも照れちゃって」

ソレンヌにまでからかわれる。


「嘘ッ、殿下と婚約者って熱々なのね」

「噂では殿下は婚約者の尻に敷かれているって話なのに」

一年どもがよからぬ噂話をしてくれるが、


「フラン、あんなこと言われてるけど」

ノエルが振ってくるんだけど、

「まあ、言う奴には言わせとけば」


「おおおお! さすが、フラン! 余裕だ」

「さすが11年の貫禄」

「何が11年年の貫禄なのよ」

私がアルマンの言葉を問い詰めようとしたら、


「だって、街では今その話で持ちきりだぞ」

「えっ、何が?」

私が判らずに聞くと


「フランと殿下の婚約11周年記念だろ」

「ああ、アドがそんな事言っていたけれど、11周年までやっているんだ」

私はそれを聞いて少し赤くなった。


「だってどこもかしこも婚約11周年の映像だらけだし」

ノエルの言葉に昨日見たあの赤面物の映像を思い出した。

あの映像、やっぱり色んなところに出しているんだ。


「便乗商品も溢れているよな」

「ほら、これもそうよ」

ノエルが消しゴムを見せてくれた。これはアドがキスしてくれた小物店の物だ。

私とアドの並んだデフォルメに、11の数字が書かれている。

「こんなのまであるんだ」

「全部で1000点以上ある」

後ろからぬっとアドが現れた。


「きゃっ」

驚いて思わず私が叫ぶと、


「殿下だ」

「殿下よ」

一年生の黄色い悲鳴が上がる。


「あいつらも、いい加減慣れればいいのに」

「俺たちはもう見慣れたよな」

アルマンとバンジャマンが言っている。


「それ、本当に多すぎない?」

私が言うが、

「利益の一部は全て恵まれない子供たちのために使われているんだ」

アドからそう言われれば、何も言えない。


「はい、これは君たちに」

アドがノエルにドットケーキの11周年のカップケーキの入った袋を差し出す。


「殿下、ありがとうございます」

効果てきめんでノエルらが満面の笑みを浮かべる。


「これからも我が婚約者をよろしく頼むよ」

「お任せ下さい」

とか、ノエルは安請け合いしているけど、別に私はノエルらに助けてもらってはいないんだけど。


カップケーキは大きなハート型になっていてイチゴとチョコロートのミニケーキが入っているのだ。

イチゴが私にチョコレートがアドに見立ててある。

アドがカップを開けてくれた。


そして、スプーンですくうと自分の前まで持ってきて、

「先に食べるか?」

と聞いてきたので、思わず頷いていた。


そして、そのまま、スプーンを私の口の前に持ってきたので、パクリと私は条件反射で食べてしまったのだ。


「キャーーーー」

「殿下が食べさせした」

「凄い」

一年生から黄色い悲鳴が上がる。


「これ美味しいね」

「本当に」

ノエルらは慣れているのか全く無視して、自分のケーキを食べているんだけど。


「アド、自分で食べるから」

「何言っているんだ。俺が食べさせるよ」

私達の言い合いを生暖かい視線でジャッキーらが見てるんだけど……


「ちょっと、待った!」

そこにクラス対抗戦委員会を終えて、メラニーが帰ってきた。


「はい、殿下。これより我が二年E組はクラス対抗戦モードに入ります。当然殿下も敵なので、出ていっていただけますか」

メラニーがアドに言うんだけど。


「えっ、バロー嬢、ちょっと」

抵抗しようとするアドは、あっさりとアルマンとメラニーによって外に追い出されるんだけど。


「えっ、メラニー、せっかくアドがお菓子を持ってきてくれたのに」

私が言うと

「そうよ。メラニー、殿下に横暴よ」

お菓子命のノエルが抵抗するが、

「何言っているのよ。あなた達、今回は去年より厳しいのよ。

お菓子なんて私達が勝てばまた、殿下は奢ってくれるわよ」

「そんな事言ったって」

その言葉に途端にノエルの抵抗が弱まる。


「フラン、゜あなた、ピンク頭のクラスに負けたいわけ」

「いや、それはないわ」

ピンク頭は自慢する時、必ず私にない胸を突き出して自慢するのだ。その横にいるグレースの馬鹿にしたような顔を思い出して思わず首を振る。


「1年のA組にはあんたと一緒に補講を受けた俺様殿下や緑頭がいるのよ。あの子らに負けたらどうなると思う」

それは最悪だ。絶対にずうーっと自慢される。それだけは嫌だ。


「だから、フランも対抗戦終わるまでは殿下と一切の接触禁止よ」

「えっ、そんな」

私が無駄な抵抗をするが、


「負けてもいいと思うの」

「いや、それは」

そうメラニーに面と向かって言われると私のトーンは小さくなった。

これは駄目だ。勝てる気がしない。アドに会えないのは少し辛いけれど、ここは我慢してもらうしか無いみたい。



「今回は前回みたいないろんな手は使えないと思うし、それだけ難しいのよ」

メラニーは皆を見回した。

たしかに前回は勝つためのありとあらゆる手を使ったが、今回はそれが規制されている可能性は大だ。


「判ったわね。皆」

メラニーの言葉に頷くしか無かったのだ。


「返事がない、もう一度!」

「「はいっ」」

私達は大声で返事させられた。


メラニー軍曹の前に私とアドとの間はあっさりと引き裂かれてしまったのだった


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