散々な目にあった私は婚約者に八つ当たりをしました
その日は本当に最悪だった。
お昼も食べられずに、夜まで怒られたのだ。
余程王妃様の機嫌が悪かったのだろう。
「たとえ王子様だろうが、公爵家令嬢だろうがこの学園では平等だそうですね」
とか
「私、平民でも上級生に頭を下げろとフラン様に命令されましたの」
王妃様が疲れて終わろうとする度にマドレーヌとその母が余計な一言を言ってくれてその度にまた怒られだすという悪循環だ。
こいつら覚えておけよ。絶対に王妃になったら仕返ししてやる。
日頃は温厚な私も流石に腹に据えかねるものもあった。
最後は空腹で死にそうになったし、もう私の頭も働かなかったんだけど。
最後はマドレーヌのお腹が鳴ったことは笑えたが。
王妃様もその母親も唖然としていた。
必死に笑って誤魔化していたが。
「フラン大丈夫?」
フラフラになって食堂に行った私をノエルらが暖かく迎えてくれた。
「本当にもう、最悪よ。アドも私を見捨てて行ってくれるし、もう絶対に許さない」
私は怒りで指を握り締めていた
「いや、あの、フラン様。殿下は殿下で陛下に呼ばれてあの後大変だったんです。」
オーレリアンが必死に言い募ってくれるが、疲れ切った私はそんな言い訳は聞きたくなかった。
「はい、フラン」
疲れ切った私の前にノエルが残っていた夕食を差し出してくれた。
「有難うノエル」
私は喜んでそれに飛びついた。
もう礼儀作法も何もあったものではない。
がっついて食べたのだ。
「フラン、あんたの今の姿、王妃様に見せたらまた怒られるんじゃない?」
呆れてメラニーが言うが、
「何言っているのよ。戦場に礼儀作法なんて関係ないわよ」
私は言い切ったのだ。
「どこが戦場なんだか」
そんなメラニーの呆れた声が聞こえたが無視だ。
「あれ、でも、この食事、野菜がめちゃくちゃ多いんだけど、何か肉も小さいのね」
私がボソリというとみんな吹き出した。
確かにご飯は山盛り野菜も山盛りだ。でも、肉だけはいつもの三分の一くらいなんだけど。
「食堂のおばちゃんが、フランは可愛そうだって言って全て山盛りでくれたんだけど……大きい肉はノエルが食べちゃったんじゃない」
「ええええ! ノエルどういう事よ」
メラニーの言葉に私はノエルを見ると
「ごめん、何か目の前に美味しそうなものがあったからつい……」
「……」
まあ、食い意地の張ったノエルはいつものことだ。
でも、私の肉が……
これも全ては余計なことを吹き込んだシュタインの奴らが悪いのだ。私は切れていた。
食い物の恨みの恐ろしさを目にもの見せてやる。
「ああ、姉上、無事で良かったね」
「本当に」
そこにジェドとヴァンが寄ってきた。
「何言っているのよ。あんたらが見捨ててくれたんじゃない」
私がムッとして文句を言うと
「えっ、そんな、俺たちが王妃様に適う訳ないじゃないか」
「僕が居たら却って王妃様を刺激したと思うし」
二人が言うんだけど。
「そんな言い訳聞くと思うの!」
お腹の減った挙げ句に延々怒られた私はそんなのでは許さなかった。
「ええええ! それ言うなら、一番悪いのは義姉上を見捨てた兄上だと思うし」
「本当だよね。自分の実の母親なんだから、唯一対抗できるのが殿下なんだし」
ヴァンとジェドが言い出した。
「ちょっと、殿下とジェド様。余計なことをフラン様に言わないでくださいよ。それでなくても怒っているのに」
オーレリアンが悲鳴を上げたが、それは二人の言うとおりだ。
私は完全に切れていたのだ。
「フラン大丈夫だったか?」
そこへ扉が大きく開いてアドが飛び込んできたんだけど。
私はそれでまた、私がアドに手を伸ばしたのに、それを避けられたことを思い出していた。
「フラン」
そう言って飛びついてきたアドの眼前に鉄のトレイを差し出したのだ。
ガツン
大きな音がしてアドが顔面からぶつかって弾け飛ばされた。
みんなそれを唖然としてみていた。
特に一年生が……
「凄い、あの女、殿下を弾き飛ばしたぞ」
「しっ、何言っているんだよ。あの方は破壊女として有名なフランソワーズ様だ」
「破壊女?」
「帝国教の教皇もアルメリア王国の国王陛下も一撃で張り倒されたんだよ」
「そうなんだ」
「凄い!」
何か外野で酷いこと言われているようなきがするんだけど。
「フラン、いきなりトレイを突きつけるなんて酷いじゃないか」
顔を押さえてアドが文句を言うが、そんなのは関係ない。
「何言っているのよ。王妃様の前において行ったのはあんたじゃない!」
私が切れて言うと、
「いや、フラン、俺も母は苦手で」
アドが頭をかいて言うが、
「私はもっと苦手よ。王妃様はあんたの実の母でしょ。普通は婚約者を守るのが男の努めじゃない!」
私が怒って言い放つと
「いや、フラン、フランならなんとかやると思ったんだ」
「お陰であの小国のおばさんと娘との3人でサンドバック状態になっていたんだから」
「さすがフラン、シュタイン公国を自分が息を吹いたら飛んでいくって言っているぞ」
「まあ、事実だろう。フランの怒りの魔術をモロに食らったらあんな小国、国ごと消滅するって」
アルマンとバンジャマンが横で碌でもない事を言ってくれているんだけど。
「いや、フラン、いくら事実でもそう言うことを人前で言うのは良くないぞ」
アドまで余計な事を言ってくれてるんだけど。
「煩いわね。婚約者を見捨てる男なんて見たくもない」
「えっ、フラン、俺もあの後父に呼ばれていて仕方がなかったんだって」
「フン、どうだか」
「いや、フラン、だから」
必死に私に縋ろうとしたアドを私は無視した。
「まあまあ、兄上、ここはお引取りを」
「そうですよ。殿下、こうなったら姉上はしばらく許してくれませんから」
二人はそう言うとアドを捕まえて連れて行こうとしてくれた。
「いや、ちょっと待てお前ら」
「ヴァンとジェド、邪魔だから外に連れて行って」
私はアドの懇願を無視して邪険に二人に頼んでいたのだ。
自分の母の前に人身御供で置いていくなんて絶対に最低の男だ。
しばらくは絶対に許してやらないんだから。
切れた私はアドに八つ当たりをしていたのだ。
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