翌朝、礼儀作法の先生の補講で頭が痛くなったのに、友人が更に公国の令嬢に喧嘩を売りました

次の日の朝から気分は最悪だった。

昨日は昼から夜まで延々怒られたのだ。本当に久々の長時間耐久レースだった。


それもだ。何故かメラニーがフェリシー先生の補講の案内を持ってきたんだけど……


これがまた最悪だった。

なんで王妃様の言うことを聞いて授業に出なかったのに、フェリシー先生の補講にまで出ないといけないのだ。

授業に出ない間延々怒られ、なおかつ、また補講で怒られるってありか?

踏んだり蹴ったりだった。

本当にもう最悪だった。


私は朝からどよーーーーんとしていた。


「ちょっと、フラン、あんた、昨日と比べて落差激しすぎよ」

「本当に昨日の元気は何処にいったのよ」

ノエルとメラニーに言われるんだど、私の気分はもう最悪だった。


食堂に入ると、

「どうしたんだ、フラン、いつもの元気が無いぞ」

アルマンらに心配されるんだけど。


「いつもより取ってくる食事の量も少ないんじゃないか」

バンジャマンも心配してくる。


「昨日の王妃様の叱責がそんなに堪えたのか」

「フェリシー先生の補講が堪えているみたいよ」

メラニーが余計なことを言ってくれる。


「ああ、昨日は最悪だったよな。フランが居ないせいで俺らが集中攻撃にあってしまって」

「本当に最悪だった」

アルマンとバンジャマンが頭を押さえて言うけれど、私はいつも集中砲火を浴びているから、せっかく一回飛ばせたと思ったのに、補講なんて最悪だ。

私は頭を抱えてしまった。


「姉上、おはようございます」

ヴァンとジェドが来たけれど、

「ああ、おはよう」

私は適当に挨拶する。


「どうしたんですか。義姉上。いつもの元気がないんですけど、そんなに昨日の王妃様の叱責が堪えたんですか?」

「何言っているんだ、ヴァン。姉上が今までどんなに怒られても、1晩寝て元気にならなかったことなんて無いだろう」

「それは確かに」

「ちょっとあんたら何言ってくれるのよ。私も叱られた後は静かにしているでしょう」

私が二人の言葉にムッとして言うと

「よく言うよ。いつも翌朝には怒られたことを忘れているじゃないか」

「そうですよ。この前もくれぐれも国際問題は起こさないようにと陛下らに釘を刺されていたにも関わらず、平然とアルメリア国王を張り倒してたじゃないですか」

ジェドとヴァンがあることないこと言うんだけど。

アルメリア国王は私が何もしていないのに喧嘩を売ってきたから、当然それを買っただけで、私は悪くないはずだ。その後、陛下たちに怒られたけれど、現アルメリア国王やルートン国王には感謝されたのだ。本当に!


「フラン、どうしたんだ。フランが食欲がないって大騒ぎになっているんだけど」

そこへ来なくていいのにアドが飛んで来た。

元々こいつが私を見捨てたからこんなことになっているのだ。

私はじろりと一瞥して無視することにした。


「兄上が昨日見捨てられたのが、余程義姉上には堪えたんじゃないですか」

「そうですよ。昨日泣いておられたみたいですし」

ちょっと待て、この二人は何を言い出すのだ。


「えっ、フランは泣いていたのか?」

アドが慌てているけれど、


「フランがそんなことでなくわけないよな」

「でも、肉をノエルに取られて泣いていなかったか」

「食事の恨みは怖いからな」

アルマンとバンジャマンらが好き勝手に言ってくれるんだけど。


「アドルフ様」

そこにいきなり、ピンク頭ならぬ、緑頭のマドレーヌが現れた。

いきなりアドのことを名前呼びしていたし。流石にピンク頭みたいにいきなりアドに抱きついたりしなかったけれど。


「アドルフ様。昨夜はお食事をごちそうして頂きありがとうございました」

私に見せつけるようにきれいな所作で頭を下げて何か爆弾発言をしているんだけど。


「へええええ、兄上は義姉上に冷たくされたからって子爵令嬢と食事していたんだ」

ヴァンが私の言いたいことを代弁してくれた。

「いや、ヴァン、何を言うんだ。俺は母に言われてだな」

アドが言い訳を始めたが、私は無視した。


「貴族用の食堂ってとても雰囲気のあるところなんですね。私感激しました。フランソワーズさんもこんなところで食事しないでそう言うところで食事したら良いのに」

何かムカつくことを緑頭は平気で言うんだけど。


「あれが、フランの頭痛の元凶か」

「そうそう、なんでも、フランのご先祖様のお情けで生き残れた公国の令嬢らしいぞ」

アルマンとバンジャマンが大きな声で言ってくれんだけど。


「ちょっと、そこのあなた方、何か言った」

きっとして緑頭は二人に突っかかるんだけど。


「ああ、怖い」

「また、王妃様に泣きつかれるぞ」

二人がふざけて言ってくれるんだけど、ちょっと待て! その被害に会うのは私では……


「アドルフ様、酷いです。これはシュタイン公国に対しての侮辱です」

「ちょっとアルマン君とバンジャマン君、それは流石に言いすぎなのでは」

でも、アドが緑頭の肩を持って言い出したのだ。


「でも、殿下、先にこの食堂を侮辱したのはそこの子爵令嬢ですが」

ムッとしてアルマンが言った。

「そうです。殿下。この食堂をこんなところでと言い切ってくれましたけれど」

それにバンジャマンも少し怒り気味で言い足す。


「えっ、まあ、確かにそうだけど、ここは先輩としてだな、軽く流してくれても良いのではないか」

アドが猫なで声で言うんだけど。


「ちょっと兄上、それを言うならばまず、後輩に謝らせるのが先ではないですか。そちらの子爵令嬢はこの王立学園の食堂を馬鹿にしたのですから」

ヴァンがアドに反論した。


「いや、あのシルヴァン」

「アドルフ様、もう良いんです。みんなして、我がシュタイン公国をばかにするんですね」

そう言うと緑頭は頭を振って部屋から飛び出して行った。


「ちょっとマドレーヌ嬢」

アドが呼びかけたが、緑頭はそのまま走って出ていったのだった。


「ちょっと、シルヴァン、あれはまずいんじゃないか。また、母に何か吹き込むぞ」

「何を言っているのですか。兄上。どう考えても悪いのはあの令嬢ですよ。母上も母上です。バンジャマン先輩が言うように、義姉上のご先祖様のお情けで生き残らせてもらった公国なんですから、そんなに優遇する必要ないのに」

「でも、また言いつけられた母が怒ってフランを呼び出したらどうするんだ」

「その時は俺が今言った事をはっきりいいますよ」

「凄い、ヴァン、あなたもおとなになったのね」

私はシルヴァンの言葉に感激した。

「兄上と違って、義姉上のためなら何でもしますから」

「でも、この前は見捨てていったけれど」

「えっ、いや、だから、それはちょっと」

私の言葉にヴァンはしどろもどろだったけれど。


でも、当然これだけで終わる訳はなかったのだ。

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さて、怒った令嬢は誰に泣きつくのでしょう?

フランの運命は明日の夕方です。

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