第一王子にペチャパイって言われて、また張り倒してしまいました

な、何でこうなった! 


「フランソワーズさん。首の角度が5度おかしいです。顎引いて。それと背筋を伸ばす」

お礼の仕方について、フェリシー先生に注意される。5度って何よ5度って、そんなの調整できるわけないじゃない!

余程文句を言いたかったけど、ここは我慢だ。私は言われたようにした。


それを横でエミーリアが笑ってみていた。


「エミーリアさん。横で流し目しない。下品です」

わーい、怒られてやんの!


「フランソワーズさんも脇見しない」

思わずにやりと笑った私にもフェリシー先生の叱責が響いた。こうした授業が延々続いたのだ・・・・





「ああん、もう、最悪じゃない。メラニー! どうしてくれんのよ」

やっと開放されて私は食堂でメラニーに文句を言っていた。


「退学を取り消してあげたでしょう。なおかつ、帝国の皇女も同罪にしてあげたじゃない。感謝こそすれ、怒られるのは筋違いよ」

メラニーが胸を張って言ってくれるんだけど・・・・


「まあ、そらあ、そうだけどさ、何も罰を私が一番苦手な淑女教育にする必要ないじゃない。せめて魔術の特訓とかにしてよ」

私が文句を言うと


「それじゃあ、罰にならないじゃない。それにあんたがやると間違って帝国の皇女を焼き殺しかねないし」

「流石に私もそこまではしないわよ。火傷するくらいはやるかもしれないけれど」

メラニーの言葉に私が言い返す。


「あんた、魔力の調整が出来ないんだから、同じでしょ」

なんか酷い言われようだ。


「私も人を殺さない程度には出来るわよ」

「今度こそ退学になりたいの?」

メラニーの言葉に、確かにそのとおりだ。しばらく帝国の皇女に近付くのはやめよう。

私は思ったのだ。


「それよりも、フラン、後ろにいらっしゃる方をいい加減許してあげたら」

ノエルが畏れて言ってきた。


そう、私の後ろ10メートルでアドが土下座しているのだ。

皆それを唖然としてみていた。


起き上がれるようになって、アドは慌てて謝りに来たのだが、私は絶対に許さなかった。

10メートル以内に接近したら殺す、の一言を添えて。


そうしたら今度は10メートル離れて土下座してきたのだ。


本当にもう、鬱陶しい。


皆は私の周りを通る度に、ギョッとした顔でアドと私を見るし・・・・。


私への贈り物部隊もアドに威圧されてか10メートル離れて90度の角度でたむろしていた。まあ、その牽制役にはうってつけだったが・・・・



「ふん、絶対に嫌。もう絶対に許さないんだから」

私が明後日の方を向いていった。


「でも、フラン、流石にこれじゃあ、あんたもまずくない」

メラニーが言ってきた。


「まずいって何が」

「王子を土下座させる悪役令嬢なんて可愛いものよ。さすが破壊の魔女の娘はエゲツいだとか、エルグラン王国では一番偉いのはフラン様だとか。フラン様に取り入れば帝国も怖くないといいうのまであるわよ」

「そうなんだ。凄いねフラン」

ノエルが感心するんだけど、ちょっと待ってよ。それじゃあまるで私が悪の権化みたいじゃない?

そう言ったら


「事実そうじゃない。殿下も可愛そうよね。たまたま、飛んできた皇女を抱き止めただけなのに、いつまでも許してもらえないなんて」

「あんた知ってて言っているでしょ」

「そうよ、フラン、いい加減に許してあげたら」

ノエルまで言う。


「ノエル、あんたなんでアドに優しいのよ」

「だってハッピ堂のプリン皆にって持ってきてくれたし」

「えっ、私のは」

「あんたは殿下からのお菓子は絶対に要らないって言ったじゃない。だから私が頂いたわ」

な、なんてことだ。普通は婚約者が謝りに持ってきた物だ。私がそう言ったからと言って普通は取っておいてくれるよね。私も、後で誰もいなくなったところで食べたんだから。

ノエルの大食いは私並みだって事を忘れていた。そう、私は余計なことを言ったのを後悔した・・・・



「あーーーら、殿下、如何なさいましたの」

そこに聞きたくもないハスキーな声がした。アドの幼なじみの帝国の皇女だ。


「殿下ともあろうお方が、頭なんか下げてはいけませんわ。フェリシー先生が知ったらなんておっしゃられることか」

そう言うとアドの手に触れようとした。


ピキッ


と私のこめかみが震えて、後ろにいた私のクラスメートたちが思わず、腰を浮かして逃げようとしたほどだ。


パシッ

と音がして皇女の手をアドが振り払ったのだ。


「ほっておいてくれ」

アドが振り払ったのだ。


えっ、私は少しホッとした。


「な、殿下、婚約者がつれないからって、何も私に当たらなくてもいいではありませんか」

涙目で帝国の皇女が言う。


「何を言うんだ。そもそも、君がフランに胸がないのを知っていながら、そのでかい胸を見せびらかせて俺の顔を挟み込んだのが全ての原因だろうが。君がそんな事をしなければフランもここまで怒らなかったはずだ」

「あーーら、殿下は婚約者がペチャパイだとはっきり言われますのね」

私の我慢も限界だった。ペチャパイって言った。アドが私のことをペチャパイって



「ペチャパイで悪かったわね」

私はつかつかとアドに歩み寄った。


「いや、そんな事は決して・・・・・」


パシーン

次の瞬間には私は思いっきりアドの頬を張っていた。


悪かったわね。ペチャパイで。帝国の皇女様は胸は大きくてよかったですね!

怒り狂った私は、アドが窓ガラスをぶち破って中庭に飛び出したのなど、見てもいなかった。

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