退学にされそうなところを友人が救ってくれました
私の頭は真っ白になった。そんな、退学なんて!
前世では病弱でほとんど学校にも行けなかったのだ。今生はやっと健康な体を手に入れて学園生活を楽しんでいるのに、それが退学だなんて・・・・
「学園長。生徒同士の喧嘩で退学など聞いたことはありませんが」
メラニーが私に代わって言ってくれた。そうだ。退学はおかしい。
「喧嘩と言っても、フランソワーズさんの場合は、本気を出したら死人が出かねません。エミーリアさんは命の危険を感じたとおっしゃっていらっしゃいました。殺人未遂となると退学も致し方ないかと」
フェリシー先生が言ってくれた。
「ええええ!、私殺そうなんて思ってもないです」
私は慌てて言った。
「あなたが思っていなくても、相手の方がどう感じたかは別の問題です。少なくとも帝国の皇女殿下は命の危険を感じたそうです」
「まあ、あの方ならば、そういうでしょうね。何しろフランが軽く押しただけで、わざと大げさに後ろに吹っ飛んでいましたから」
メラニーが笑って言った。
「先生がお叱りになったら、それだけで死ぬかもしれませんよ」
メラニーは更に言う。
「メラニーさん、それはどういう意味ですか?」
目を吊り上げて、フェリシー先生が言うが、
「私は事実を述べているだけです。先生は叱責して死にそうになったと言われて殺人未遂で逮捕されたらどう思われますか」
「怒られただけで、死ぬわけはないでしょう!」
「でも、押しただけで死にそうになったって先生は言われましたけど。押しただけでは死にませんよね。それも軽くですよ」
「しかし、フランソワーズさんの軽くは普通ではないでしょ」
「私が見ても軽くでした」
なんか二人共、変なこと言っているんだけど・・・・。私はムッとして二人を見ていた。
「しかし、メラニーさん。殿下は重症でしたよ」
「まあ、あれはフランの前で帝国の皇女殿下が自分の大きい胸を強調して、なおかつ、殿下の顔を胸に挟んでいましたから。私は彼女こそ、不敬罪と淫乱罪とフランを煽った罪で停学処分にしたほうが良いと思います」
メラニーがズバズバ言ってくれた。
「皇女は自分の胸で殿下の顔を挟んでいたのですか」
驚いてフェリシー先生が目を見開いた。
「そうです。本当に慎みがないです。学園でもそのようにして男どもに媚を売っておられるのかもしれませんね。そして、それがフランの怒りに火を注ぐ結果につながったのです。十分なあおり罪になると思います」
「しかし、彼女はフランソワーズさんに迫られて怖かったと」
「それは自らがあれだけ煽っていたのだから、怯えもしますよ。先生は檻もなしに猛獣を挑発していたら恐怖を感じるでしょう」
ちょっと待て! メラニー、今、何かとんでもないこと言ったよね。
「まあそれは」
先生も何頷いているのよ! その後ろの学園長も頷くな。あんたも否定してよ。
「そもそも、王女殿下はホルム王国の王子殿下を張り倒されていたのですよ。それをフランが助けようとしただけです」
メラニーが言う。
「先生は帝国について小国のホルム王国の王子はどうでもいいと思われるのですか」
メラニーが突っ込む。
「しかし、王子殿下に対して女性の皇女殿下が叩いても大したことはないでしょう」
「フランも女性ですが」
「フランソワーズさんは無敵ではないですか。いまメラニーさんも猛獣に例えましたよね」
「いや、それは言葉の綾で」
3人で頷くな!
「ここは喧嘩両成敗ということでどうでしょうか。どちらの顔も立ちますし、依怙贔屓にはならないかと」
メラニーが上手くまとめてくれて、私はホッとした。
さすがメラニーよくやってくれた。これでまだまだ私の青春は続くのだ。私はメラニーの言葉には思うところもあるが、まあ、上手くまとめてくれたメラニーに感謝の気持ちでいっぱいになった。
そう、ここまでは順調だったのだ。
「では罰則はどうすればいいと思いますか?」
「もともと、ホルム王国の王子を張り倒すという、淑女にあるまじき行為をした帝国の皇女殿下には淑女教育が不足していると思われます。そして、王子殿下を殴り倒したフランにもそれは当てはまると思うんです」
私はメラニーの言葉に最初は喜んだが、私のことにメラニーが言及したので、ぎょっとした。
「やはり、ここはお二人には淑女教育をもう少しし受けていただいたほうが良いと思うんです」
「なるほどメラニーさん。そのとおりですね」
嬉々としてフェリシー先生も頷いた。
「では、皇女殿下とフランソワーズさんには罰として私の淑女教育を1週間受けていただきましょう」
ええええ! なんで、何でこうなった!
私は開いた口が塞がらなかった。
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