隣国王子視点2 パシリをさせられるも第一王子とその婚約者の仲を裂くのはあっさりと成功しました 

作戦は第2段階で、頓挫してしまった。

フランをクラスで孤立させるのは失敗してしまったのだ。そもそも、あのボケナスビスマークがいい加減な情報を俺にくれるからだ。フランの前では皆に虐められたと泣けばいいとか書かれいたが、全然上手くいかなかったじゃないか。最もそれを鵜呑みにした俺も悪かったが。

使えたのは失敗すれば土下座して謝れば許してもらえるとかいう、本当に使えない情報だけだった。



「おーい、ベン。授業の座席とっておいてくれ」

「はい」


「おーい、ベン、購買でおにぎり買ってきてくれ。」

「はあい、只今」


俺はクラスの皆のパシリを・・・・パシリをさせられているのだが、何故だ?

俺は小国と言えどもホルム王国の王子だぞ! それも実際は帝国の皇子だ。普通ありえないだろう!


「おーい、ベン。これ教室に持っていってくれ!」

「了解しました」

でも、クラスメートに言われたら体が自然と動くのだ。


最後に皆の前でフランに土下座したのが悪かったのかもしれないし、それともアルマンに殴られたのが、トラウマになっているのかもしれない。


おいおい、でも何で王子を殴った奴が停学とかにならないんだよ。可怪しくないかと思わないでもない。


やらなくてもいいのに、フランが必死に手を回したのだ。


「あんたもその方が良いでしょ。クラスに溶け込むには」

フランに訳知り顔で言われれば頷くしか無かった。


おかげで俺は完全にクラスのパシリになってしまった・・・・




フランのクラスでの孤立化が完全に失敗してしまって、第三段階、『王子とフランの間を裂く』作戦

なんてうまくいくわけはないと思った。その旨をエミーリアに言いに行くと、『当然やるわよ』とエミーリアは乗り気だった。


「失敗するなんて、あなた本当に役立たずね。何失敗しているのよ。私は王子と上手く行っているのに」

エミーリアが文句を言ってきたが、俺もフランとは上手く言っているっていうの!

フランの孤立化作戦が失敗しただけだ。


「あの王子なんてちょろいものよ。ちょっと『お母様が、無理やりあの悪逆非道の帝国の皇帝の妃にされてしまって』そう言って泣いたら王子はころっと態度を変えてくれたわ。本当に単純よね」

何か自慢タラタラ話してくれる。


いやいや、そんな事言えば、フランも、『姉さん』と言って甘えるだけで懐に入れてくれたって・・・・。


ということはこの二人は超単細胞なのだ。この二人が国王と王妃になったらこのエルグラン王国も簡単に帝国の意のままに操られるのではないか。


帝国としてはそのまま二人が結婚してくれたほうが、良いのではなかろうか。


こんな腹黒皇女が王妃になるよりも。と思わず思ってしまった。


こいつの母親も無理やり皇帝の手がついたとかなんとか言っているが、恐らく生き残るために自ら皇帝のお手つきになったにちがいない。何しろこいつの母親は一勢力を帝国の王宮内に既に築いているみたいだから。



そして、この腹黒皇女が考えた作戦が、またえげつなかった。こいつの性格か?

思わず、こいつにはあまり近寄りたくないと思ってしまうほどの酷さなのだ。

俺はため息を付きつつ、作戦の了承をした。




そして、腹黒皇女の二人の仲を裂く作戦が敢行された。



フランが近付いてきた時を見越して、

「あなた、何故、平民にぱしりなんてされているのよ!」

エミーリアが俺に向かって叫んだ。そして、俺の胸ぐらをつかむと、


パシンッ

と思いっきり俺を張り倒しやがったのだ。


嘘ーーーー! こ、こいつ、思いっきり張り倒しやがった。形だけにすると事前には言っていたのに!


俺は張り倒されていた。その痛さ半端じゃなかった。


その俺の姿を見て、取り巻き共がどっと笑いやがった。


俺はムカついて立ち上がった。こ、こいつ、絶対に覚えてろよ。絶対にいつか張り返してやる! 俺がキッとして睨むと、一瞬エミリーリアは怯んだ。でもその怯みを跳ね返すように


「あんた、何その態度! 皇女の私に逆らうの?」

エミーリアはつかつかと俺に近寄って、もう一発俺の頬を張りやがったのだ。今度は俺の視線にビビったのか、少し弱かった。でも痛いのは変わらない。こ、こいつ・・・・・


「ちょっといい加減にしなさいよ」

もう一発張り倒されようとしたところで、やっとフランがその手を止めてくれたのだ。

遅いぞ、フラン! 俺は理不尽にも何も知らないフランに怒っていた。


「何すんのよ」

エミーリアがフランを睨みつけた。


二人が言い合いをしているところで、ターゲットの王子が向こうから来るのが見えた。


俺が合図をすると、再度エミーリアは俺を張り倒そうと手を振り上げたのだ。


「いい加減にしなさいよ」

フランがエミーリアを押した。軽くだ。軽く。


「きゃっ」

しかし、エミーリアは大げさに叫ぶや、フランに弾き飛ばされたみたいにわざと飛んで行った。そして、そこにいた王子の胸に飛び込む形になった。


よし、そこまで上手く行った。ナイスだ! 王子をクッションにして倒れ込む。


「きゃっ、殿下! 助けて下さい!」

更に体をずらして、自分の胸に王子の頭を抱き込む形にしたのだ。胸の小さいフランの前で、その豊満な胸でアドの顔を抑え込んだのだ。なんてあざといというか、えげつないというか、これで、こいつの母親が皇帝に無理やり迫ったのは確定だ。母娘揃ってやることがえげつない!


「な、何をしてるのよ!」

フランがその姿を見てキレた。更に怒らせるためにエミーリアは胸にギュッと王子の顔を抱き込んだのだ。


フランが更に切れるのが見えた。こめかみをピキピキ引き攣らせている。


エミーリアは鬼畜だ。女の武器をこれでもかと使っている。


王子は逃れようとして更にエミーリアの胸に触れて慌てたりしていた。エミリアの想定通りだ。


「姉さん。殿下と皇女はハレンチな関係になっているんじゃない?」

俺は更にフランを焚き付けた。


「キャーーー、殿下、脳筋女に殺されます!」

フランの怒りの形相に、エミーリアが、更に胸を王子の顔にこれ見よがしにプルプルすり付ける。


その行為が更にフランをヒートアップさせた。


「アド、どういうつもりよ」

「いや、フラン、これは不可抗力で・・・・」

王子の顔を皇女の胸から引き剥がしてフランが言う。もう般若の顔だ。よし、上手く言った。


「言うことはそれだけなの?」

「いや、だからフラン・・・・」

プッツン切れたフランは、必死に言い訳するアドの顔面にアッパーを御見舞したのだ。


ズドーーーーン!

大きな音とともにアドは隣の校舎の壁に次の瞬間、突き刺さっていた。


少し王子には同情したが、これで二人の仲は完全に決裂だ。俺とエミーリアは目で合図して喜んだ。


「で、殿下、大丈夫ですか」

エミーリアは大声を出して王子に駆け寄っていた。


「だ、誰か、殿下が私を脳筋女から守ろうとして狼藉にあいましたの。誰か来てーーーーー」

大声で助けを求めだしたのだ。


自分で煽っておきながら、エミーリアはなんかとてもえげつないんだけど。

まあ、俺もその一味なのだが。さすがの俺も少し良心の呵責を感じた。

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