第一王子視点6 怒った婚約者になぐられました
俺は夏休みはこの世の春を経験した。
ついにフランを手にいたれのだ。
まあ、今まで婚約者だったが、いつ婚約破棄されるか判らない薄氷の上にあった。
フランの周りを牽制するのは元より、フランの女友達にも媚を売り、母親にも甘えて、何とかここまで持ってきたのだ。
最後は俺が殺されそうになった時に、フランが死んでは嫌だと泣き叫んでくれたのだ。
俺が倒れている間はずうーーーーっとフランは側にいてくれた。
その後の夏休みもほとんど一緒に行動した。
公務もほとんど一緒にしたし、もともと第一王子とその婚約者なのだから何も問題はない。
本当に有意義な夏休みだった。
でも、流石に新学期を迎えるとフランといつまでも一緒にいる訳にもいかなかった。
フランの両親が帝国に侵攻するというとんでもないことをやってくれたお陰で、その後処理に忙殺されたのだ。
そして、気付いた時には、フランの周りにはフランの両親の帝都襲撃を聞き、急遽留学してきた他国の王族共が群がっていたのだ。
「俺の婚約者の周りをうろつかせるな」と近衛共に言ったが、近衛も再編成中で人がいない。俺も仕事で忙殺されていなければ、フランの周りに俺が行ったのに、行けなかったのだ。
その間にフランの周りに幼なじみのホルム王国の王子が出没していると聞いて、心安らかではなかった。何しろフランは年下に甘いのだ。
我が弟しかり、実の弟然り。年が同じとはいえ、ホルムの王子は背も低く、弟よろしくやっていると聞いて、心配が的中した。
しかし、その王子がフランとクラスメートを反目させようと画策したのはフランによって叩き潰されたと聞いて安心していたのだ。
後少しでこの仕事も一段落つくと思っていたのだ。
しかし、火の粉は思わぬところから飛んできた。
帝国の皇女が留学すると聞いて、牽制の意味も兼ねて俺のクラスに入れたのだ。
最初は皇女も静かにしていたのだ。
俺も父からはきちんと面倒を見るように言われていたので、無下にも出来ず、付かず離れずで見ていた。
帝国の皇女は見識もあり、あの皇帝から生まれたにしてはおかしいと思ったら、血は繋がっていないと言う。歴史古いベルサー王国の生き残りの王女だと言う。その母がベルサー王国陥落の時に皇帝の側妃に召し上げられて、連れ子として皇女の地位をもらったというのだ。
なんとも大変な経験をしているのだなと、ほだされたのが間違いだった。
俺と皇女の仲を疑って、フランが怒っているという噂を聞いて、俺は驚いた。
お前もホルムの王子と仲良くやっているではないかと思わないまでもなかったが、怒るとフランは長引くのだ。
直ちにフランのもとに言い訳しようとして向かった時だ。
その皇女とフランが争っているとの報告を聞き、俺は飛んでいったのだ。
それがまずかったのかもしれない。
「いい加減にしなさいよ」
との叫び声が聞こえて、
「きゃっ」
という悲鳴とともに皇女が飛んできたのだ。
まさかほっておくわけにもいかず、それを抱き止めたのだ。
でも、止められずに、私は地面に押し倒されるふうになったのだ。
「きゃっ、殿下! 助けて下さい!」
あろうことかぎゅっと皇女が抱きついてきたのだ!
「おい離れろ」
俺は叫ぶが、皇女は俺の頭を胸に抱いて離さない。
これは男にとってはたまらないことなのだが、、それをフランが見ていると思うと早急に引き離さねばと思うのだが、皇女は思った以上に馬鹿力だった。
「な、何をしてるのよ!」
フランの罵声が聞こえる。
俺は焦りに焦った。
どけようとして胸に触れてしまって
「キャッ」
という悲鳴が上がって俺は更に焦った。
「姉さん。殿下と皇女はハレンチな関係になっているんじゃない?」
ホルムのムカつく王子が余計な事をフランに吹き込んでくれる。
これは違うのだ。皇女から逃げられないのだ。
「キャーーー、殿下、脳筋女に殺されます!」
皇女が更に胸を俺の顔に押し付けてきた。
「アド、どういうつもりよ」
「いや、フラン、これは不可抗力で・・・・」
フランの力でやっと開放されたが、そのフランはプッツン切れていた。
「言うことはそれだけなの?」
「いや、だからフラン・・・・」
俺は言い訳の途中で、顔面にフランのアッパーの直撃を受けていた。
何故いつもこうなる?
ズドーーーーン!
大きな音とともに俺は隣の校舎の壁に突き刺さっていた。
さすがの俺もそれから後の記憶はなかった。
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