第11話 ゲーム上で悪役令嬢は処刑されるのを初めて知りました
私はぶすっとして立っているアドのところに向かった。
アドの後ろには怒っている私を見て、ぴくっとしたオーレリアンがいた。
そして、私の後ろからは皆が注視しているのが、視線を痛いほど感じて判っていた。
「何かご用ですか? 殿下」
私はぶすっとして言った。
「いや、フランが、私がオーレリアンに君を呼び行ってもらったら、『他の人を使うんなてどういう事? 来てほしかったら自ら呼びに来なさいよ!』と怒っていると聞いたから」
「えっ、私、そんな事言った?」
私は後ろのオーレリアンを睨みつけた。
「ヒィィィ、いや、それに似たことはおっしゃ、いえ、そんな事は仰っていらっしゃいません」
私が途中でギロリと睨むとオーレリアンは慌てて前言撤回した。
「あのう殿下」
私は上目遣いに下手に出ようとした。
「殿下じゃない。アドだ。フラン!」
アドが言い直させた。
私は少しムッとした。ええい、もう面倒くさい!
「じゃあアド、見ての通り、私今忙しいのよ」
ズバリと本音を言う。
「私も忙しい」
「じゃあ来なけりゃ良いでしょ」
私は売り言葉に買い言葉を発していた。
「いや、気になることを聞いたものだから」
慌ててアドが付け加える。何だ気になる事って?
「オーレリアン。何か余計なこと言ったの?」
私の啖呵に必死にオーレリアンが首をふる。
「いや、ジャクリーヌ嬢が、フランが俺という婚約者がいるにも関わらず、男達を侍らして喜んでいると言っていたから」
「何言っているのよ。そっくりそのまま返させてもらうわよ。今日は聖女様とグレース嬢と一緒に鼻の下伸ばしてニヤケ顔で食事していたんでしょ」
アドはそれを聞くと慌ててオーレリアンを振り向いて睨みつけた。
「いや、俺じゃないですよ」
必死にオーレリアンが首を振る。
「他に注進してくれる貴族なんて掃いて捨てるほどいるわよ。そもそも、何回も言うように、王宮で倒れたのに、見舞いにも来ない男を婚約者なんて思ってもいないけど・・・・」
私は未だに根に持っているのだ。
「いや、フラン。それは悪かったって謝ったじゃないか」
「他の女を侍らして喜んでいるのはあんたでしょ」
「いや、陛下からは聖女の面倒を見ろと言われたし、いきなり無視するのは悪いだろ」
「私も陛下にはクラスの皆と仲良くするようにって言われているんだから。今、仲良くなれるかどうかの瀬戸際なんだから邪魔しないでくれる」
「邪魔・・・・いや、俺はフランが一人で寂しく食べていたらかわいそうだと思って」
「何よ。それ! あんたらが皆して私を邪魔してくれたからそうなりかけたけど、今必死に修正しているのよ。邪魔しないでくれる」
私はプッツンキレて席に戻ろうとした。
「ちょっとフラン」
私は呼びかけてくるアドを無視した。
何今忙しい時に邪魔してくるかな。今までほっておいたのに。今更遅いわよ。
私は完全に切れていた。しばらくアドはそこにいたみたいだが、切れている私は完全に無視した。
「良かったの? フラン。王子様怒ってたけど」
食事が終わって教室に帰る途中でメラニーが聞いてきた。
「ふんっ、良いのよ。今まで私をほっておいたんだから。それに聖女がでてきたんだから、どの道、アドは聖女とくっつくんでしょ」
「まあ、ゲームではそうだけど、あんたそれでいいの?」
「良いわよ。別に男はアドだけじゃないし」
「そらあそうだけど」
「いずれサマーパーティーで断罪の上、婚約破棄されるなら早いほうが良いじゃない」
「えっ、でも断罪されたら下手したら処刑よ」
「しょ、処刑?」
私は驚いて大声を上げしてしまった。処刑ってなんだ。そんなの聞いていない。断罪されたら処刑されちゃうの? 私はパニックになりそうになった。
「しっ」
メラニーが注意してくれた。私が大声を上げたので皆私を見ている。私は慌てて口を閉じた。
「やっぱりあんた全然ゲームやっていないでしょ」
「だから最初で嫌になって止めたって言ったじゃない!」
「後で教えてあげるわ」
そして、その日の放課後、私はメラニーの部屋でゲームの内容を教えてもらっていたのだ。
メラニーはゲームをすべてクリアしたと豪語するだけあって詳しく覚えていた。
メラニーによると、これから悪役令嬢は王子と仲良くする聖女を虐めまくるのだ。それはよく知っている。何しろそこを私はクリアできなかったのだ。本を隠されるのはましな方で破かれたり、水をかけられたり、周りに無視されたり、変な噂流されたりとありとあらゆる事をされるのだ。心優しいヒロインはそれに耐えられずに自殺してしまうのだ。でも待った。今のピンク頭はどう見てもやられる方でなくてやる方だと思うんだけど・・・・。虐められてもびくともしないタイプみたいだし・・・・。どっちかというと私が虐められて自殺しそう・・・・。
そうメラニーに言ったら、「どっちもどっちよ」と言われてしまったが・・・・。あのピンク頭と同じにしてほしくないわ!
ゲームでは何とかいじめに耐えていると、周りが助けてくれるようになるのだそうだ。私の時はアドも周りも助けてはくれなかった。やっぱりアドはムカつく。
ゲームでは聖女は虐められているところをグレースや王子に助けられて、励まされて、耐えるのだそうだ。
フランによるいじめは更に悪化して、最後は人を雇って聖女を襲わせようとして、それが未然に発覚、サマーパーティーで断罪されて、場合によっては処刑されてしまうのだとか。
「えええ、そうなの。私処刑されてしまうの」
私は涙目になっていた。だってせっかく前世で楽しめなかった青春をエンジョイできると期待していたのに、それも叶わず処刑されるなんて、酷すぎる。
「いや、だからそれは聖女を虐めた場合だから。フランは今は聖女を虐めるつもりはないんでしょ」
「そらあ、そうだけど、あのピンク頭って本当に聖女なの? ちょっと見た感じは、とても性格悪そうなんだけど」
「うーん。普通聖女って言ったら清い心を持った女の子選ばれるもんだけど」
「いや、あれはどっちかって言うと悪役令嬢って感じよ」
「でも、そんな展開無かったわよ」
「どっちかって言うと、私が冤罪でっちあげられて処刑されるのかも・・・・」
私はとんでもないことを思いついてしまった。それは十分にありうる。そもそもグレースもグルで何か悪いことしそうだし。アドも一緒になって私を貶めるかも。
どんどん嫌な方向に想像していってしまった。
「まあ、それはないわよ。少なくとも殿下は今はあなたのこととても気にしているわよ」
「はん、そんなわけないでしょ。あいつ、私が王宮で気を失っていたのに、3日間全く見舞いにも来ずに帝国の皇女とイチャイチャしていたのよ。最低の男なんだから」
「まあ、あんたの言葉を信じると最悪なんだけど、さっきのあんたを思い詰めたように見ている殿下の姿見ていると違うと思うけどな」
なんかメラニーがやけにアドの肩をもつ。何でだろう?
まあ、でも、せっかく、転生出来て普通の健康な体になったのだ。行けなかった学校にもチャンと通えているし。絶対に私は青春するのだ!
取り敢えず、私は君子危うきに近寄らずで、できる限りアドとピンク頭から離れようと決心したのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます