Case.1 探偵なのに盗むんだゆ ㉒

 ヨーグルがリュックから出した水鉄砲、のように見えない宇宙ウォーターガンで消火すると、そこにあったのは黒いあとだった。

 巨大ヤドカリの姿は当然どこにもなく、ついでにいうと目的のものも、ない。


「……なあ、やま田」

「ゆ?」

「台座は?」

「どこゆ」

「いや、俺が聞きたいよ」

「はっはっは、どうやらやま田さまの一撃で焼失したようですな」

「へ?」


 ここまで頑張ってきたのに?

 かすったり、こすったり、落ちたり、さらにもう一回落ちたりしたのに?!

 最後なんて巨大白玉いくつも出したから、俺の|HPたいりょく激ヤバなんですけど?!


「……悪をたおすには、多少の犠牲ぎせいが必要なのゆ」

「目をつぶってなにさとったような表情になってるんだ」

「まあ、よいではありませんか。いずれにせよソトスにあの危険な代物しろものが渡っていたら、どんな恐ろしいことになっていたか」

「あなたがいいますか、それ! というかならんでしょ、結構常識人だって知ってますから!」

「ヨシナリ、実はソトスと知り合いゆ?」

「あああ、めんどくさいな、これ?!」


 俺は両手で頭を抱えて大地に仰向あおむけなり、ごろごろする。

 地面の固い感触があり、生えている草はれっきとした映像のはずなのに、なぜだか青臭あおくさにおいを鼻先に感じるような気がした。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る