Case.1 探偵なのに盗むんだゆ ㉑

 やま田が一気に駆け出すのと同時に、俺は両手を前に突き出し、下半身に力を入れる。

 

「ハッ!」


 手のひらから運動会で使われる大玉サイズの白玉が生み出され、ずしん、と重量感ある音をひびかせる。

 ヨーグルは手に持っていたかさたてに一回転させ、ゴルフで使われるアイアンへと変質させると、次々と生み出される白玉をナイススイングではるか上空へと打ち上げていく。


「やま田様、行きましたぞ!」

「がってんしょうちのすけ、ゆ!」


 助走をつけていたやま田は高く飛び上がり、巨大白玉群がちょうど最高到達点に達したくらいのところのすぐ下までくると、左腕を振り上げる。

 すると、白玉は次々とオレンジ色の火花を飛び散らせ、一気に赤く燃え上がる。


「ヤドカリ怪獣、ケセラセラ! 神妙しんみょうにおさば頂戴ちょうだいするゆ! 愛と!」


 やま田がいつもの口上を述べた。

 俺とヨーグルも、お約束の決まり文句を続ける。


「創造と!」

叡知えいちの!」


必殺ひっさつ! 白玉流星衝ホワイトメテオスウォーム!!」


 やま田が高々とかかげた腕を振り下ろすと、次々と燃える白玉群が青い巨大ヤドカリへと打ち下ろされていく。

 せまりくる圧倒的な暴力に、両のハサミを大きく振り上げたヤドカリ怪獣は、抗議しているような、ギブアップしているような複雑な表情をしているように見えた。


 すまん。


 俺は次々と白玉を浴び、いかにもかたそうな甲殻こうかくくだけ散り、最後に大きな轟音ごうおんと共に爆発炎上した敵に向かって、頭を下げ、合掌がっしょうした。


 どう考えても、オーバーキルである。

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