Case.1 探偵なのに盗むんだゆ ⑳


「さて、やま田様、良成様。三人そろったことですし、いつものやりますか」

「よし、やるか!」

「うゆ!」


 俺達は円陣を組むと、ヨーグルが白手袋に包まれた右手を差し出す。

 それに俺の右手が重なり、その上にやま田の小さくて可愛い手が乗せられる。

 その瞬間。


 頭の中に一つの縦線が走り、それはまるで樹形図じゅけいずのように分岐ぶんきしていく。

 分岐した先で、様々な公式のような、場面のような、イメージの羅列られつが浮かび上がっては消えていく。

 そんな数多あまたの分岐はそのほとんどが立ち行かなくなり、やがて一つの線へと収束していく。

 最後に出てきたそれこそ、今回の戦い方なのだ。


「見えましたな」

「ええ、さすが、ヨーグルさん。ちょっと信じられないほど豪快だけど……」

「ボクはこれ、楽しみゆ」


 先程、頭の中で展開されたのは、ヨーグルの特別な力だ。

 この一見無害そうな老紳士は、この宇宙における叡知えいちそのものであり、ありとあらゆる因果律いんがりつ走査そうさし、最適な結果を選び取る演算能力を有している。

 ……と、前にレクチャーを受けたのだが、あまりにも凄すぎる能力なので、完全には理解出来ていない。

 とにかく、あの円陣で手を重ねる体育会系っぽいノリは、この状況を乗り切るために三人で出来ることを調べるためのものらしい。

 そして、やるべきことは、頭の中に入った。

 あとは――。 


 俺達は目の前の巨大ヤドカリに不敵な笑みを浮かべる。


 こいつを、倒す! 

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