Case.1 探偵なのに盗むんだゆ ⑩

 というわけで。


「やま田、出すぞ!」

「うん、うん!」


 やま田の持つ黒茶碗へ、次々と俺の白玉がち出されていく。

 おわんの中が白で満たされると、その上にポットの中に入った甘くて温かい香りのおしるこをとぽとぽと注ぐ。


「出来たゆー! 頂きますゆ!」


 やま田は手に持った二又ふたまたの和菓子フォークで白玉を次々と口に運び、咀嚼そしゃくしていく。


「今日はモリブデン多め、濃いめ、硬め、最高ゆー!!!」

「そうか、最近ハマってるもんな、多め濃いめ硬め」


 便利なもので、最近の度重なる生成でコツをつかんだ俺は、モリブデンの含有量がんゆうりょうをある程度自由に出来ようになってきた。

 とはいえ、俺が食べる場合はもう少し少量で調整しないと、モリブデン中毒になって病院送りになってしまうだろう。


「うまゆ、うまゆ」

「……」


 本当においしそうに食べるやま田を見て、俺はまた何とも言えない気持ちになる。

 幸せなそうなやま田の顔を見るのは、嫌いじゃない。

 この見た目ロリっ娘宇宙人様は日々地球のしきたりを習得し、少しずつではあるが馴染んできている。

 言葉も覚え、前よりは意思疎通も出来るようになってきたと思う。

 きっと俺達は出会いがどうしようもなく悪かっただけで、本当はもっと――。


 いや、ないな。

 だって、宇宙人だもの。


 先週のミッションでの、腹に大穴空いてクラゲ型宇宙人に内臓少しもぐもぐされました事件の顛末を思い出して、俺は身震いした。

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