Case.1 探偵なのに盗むんだゆ ⑧

 宇宙人とはいえ、生きとし生けるものである以上、等しくエネルギーは必要だ。

 特に二足歩行型で擬態ぎたいまでしており、見ての通りとても活動的な生命体であるやま田は、地球人よりはるかに多量の栄養を必要とする。

 といっても、基本的には俺と同じで、普通に主食ごはんを食べ、副菜おかずを取り、デザートや飲み物を摂取する。


 の、だが。


 それだとどうしても彼女の属する種族である、やま田族(地球言語ではうまく発音出来ないので暫定的ざんていてきにこう呼称している)にとって足りない栄養素が出てくる。

 

「どうしても欲しいのか」

「うん、いっぱい欲しいゆ」


 俺を見上げるコスモブルーの美しい瞳は、どことなくうるんでいるように見える。

 もしくは、これから最高のごはんにありつけるという、よだれのようなものなのかもしれない。


「濃くて白いの出してほしいゆ!」

「……分かったよ。ヨーグルさん、準備は」

「は。整えております」


 右を見ると、ヨーグルさんが既にセッティングを終えていた。

 野外で日本の伝統的なお茶会である、いわゆる「野点のだて」の時に使われる赤い毛氈もうせんが敷かれており、真っ赤な和傘まで備え付けている。

 俺はやま田の小さな手を引くと、くつを脱ぎ、お互い正座で正対する。

 毛氈もうせんの上には、先程のコーヒーポットとは違う水筒が置かれており、黒光りする茶碗ちゃわんまで用意されている。


 時は満ちたのだ。


「早くするゆ」

「分かってるよ」


 れてきたやま田が催促さいそくする。


 ――なんでなんだろうな。


 俺は下半身の一点に力を集中させながら、平凡な高校生とはひとつだけ違う、俺の『能力チカラ』に思いをせた。

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