第105話


 「は〜、やっと帰って来れた! 帝国っ!」


 教国での事件が解決してから私達は休む間もなく船に乗った。

 元々そんなに長くいる予定ではなかったのに、色々予想外のことが起きすぎてバタバタの出国になってしまったのだ。


 でもこれでやっとやっと、クレンセシアに建てた家を見に行ける!


 「リア! 狩りだっ!」


 「大森林だっ!」


 しばらく狩りをしていなかった2匹は大森林に行けるのがよほど楽しみなようだ。







 「2週間後、獣国の王子が来るんだ」


 王宮へ行くと、皇帝陛下の元へ行き教国での報告を済ませた。聖女任命の祝いと急な教国への労いの後、皇帝陛下が言った一言がこれだ。

 

 「は……い……??」


 「ち、父上……?」


 これはウィルフレッド様も初耳のようだ。


 「2人が教国へ行ってすぐに連絡が来たんだ。特に何か用事があってくるわけじゃないんだけどねぇ。ほら、ウィルフレッドはわかるだろ? いつものだよ」


 「いつもの?」


 「あぁ、獣人は人より身体能力が高くて実力社会だろう? 獣国の王子もかなりの武闘派で、毎年のようにうちに来て大森林で狩りをするんだ」


 王子が大森林で狩り!?


 「まぁオレリアが住んでいるような大森林の奥へは行かなけどね」


 ウィルフレッド様は私が驚いているのがわかったのか笑いながらそう付け足した。

 

 「だから、ウィルフレッドとアールグレーン嬢にはその狩りに同行して欲しいんだ。この国で他国の王子が亡くなりでもしたら大変なことになるからね、いつも騎士団を同行させるんだけど獣人は結構無茶をするからアールグレーン嬢が同行してくれるほど安全なことはない」


 ええ〜……。


 「同行するのはいいんですけど、その狩りにはノアとネージュも連れて行ってもいいですか?」


 これだけ久しぶりで楽しみにしている狩りが先延ばしになったら、私が大森林に行っている間に勝手にどこに狩りに行かれるかわからない。


 「それはもちろん。むしろ安全性が上がるというものだ」


 「うーん、まぁそれなら」


 最優先はあの2匹のストレス発散だからね。


 獣国の王子がくるのはまだ1週間先だというので、とりあえずその間にクレンセシアの家だけ見てくることにした。

ノアとネージュとかっ飛ばせば全然余裕なのだ。


 必要なものはアイテムボックスに全て入っているので、私たちはそのままクレンセシアに向かった。


 「おいっ! 見にくるのが遅いぞ!」


 ロドリグさんのところに行くと、そんなふうに言いつつも早く見せたいのかソワソワワクワクした顔をしていた。


 出来上がった家はとっても立派で内装も家具も私好みの完璧な仕上がりだった。ちょっとした所まで柄が彫ってあったりで、ロドリグさんのこだわりがこれでもかというほど詰まっている。


 「やってやったぜ! 俺の最高傑作だっ!」


 元々町1番の大工と言われているロドリグさんに、大森林の最高級素材を際限なく思いっきり使って家を建ててもらったのだ。最高にならないはずがない。


 そんな最高な家に泊まれないことを嘆きつつ、次は大森林の家へと急いだ。


 大森林の家もこんなに長い間帰らない予定ではなかったので、色々片付けたいものやらやりたいことが溜まっていたのだ。

 その間ノアとネージュは大森林に放して狩りをさせておけばちょうどいい。数日でもちょっとした息抜きにはなる。

 そうしてノアとネージュを狩りに行かせている間に家の掃除や、改装、作っている途中だった家具などを完成させる。







 「リアー!! 大物だぞ!」


 「こーんな大きいぞ!」


 大森林最終日、まだ帰りたくないと駄々を捏ねる2匹を狩りへと送り出して夕食を用意していると、ノアとネージュが高揚した顔で家へと戻ってきた。


 見て見てとうるさいので家から出ると、家の前には小山が。


 「な、なにこれぇ!?」


 「「ふっふっふっ……!! 風竜だっ!!」」


 「竜!!?」


 竜種といえば、この家がある岩壁の向こうに生息しているはず。


 「まさかこの壁の向こうへ行ったの!?」


 「最終日だからな! ちょっと覗いただけだ」


「そうだ。ちょっと覗いたらちっこい風竜がいたから狩ってきたんだ」


 確かに風竜にしては小さいけれど、魔物としてはかなりの大物だ。


「危ないじゃない!」


 「危なくなんかないぞ! ちょっと浅い所を覗いただけだ」


「そうだ! 俺たちはフェンリルとグリフォンだぞ!」


 それはわかってるけど! 


「心配なんだよ〜」


ノアとネージュは勝手に岩壁の向こうへ行ったことを怒られ、今度からは行く時は一緒に行くと約束させられたのだ。

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