第61話
王宮に着くと皇太子殿下と騎士団長は皇帝陛下へ報告に行くと言い、私とノアとネージュを騎士に任せる。
私は客室へ、ノアとネージュは中庭へ案内すると言われたがノアとネージュが私と一緒に行くと駄々をこね、結局小さくなって私と客室で待つことになった。
うわぁ、すっごく豪華な部屋!
案内された客室はとても広く、豪華で華やか。でも派手すぎず品もあり絶妙なバランスだ。
ルボワール王国の王城にも妃教育で通っていたが全然レベルが違う。ルボワール王国の客室もすごく豪華だったけど金ピカでとにかく派手。上品さはあまりなかった。
部屋に入りソファに座るとメイドさんがお茶とお菓子を運んでくる。
「うわぁ、美味そうだ!!」
「私たちも食べていいのか?」
メイドさんは抱えている鳥と犬が突然話し出したことにギョッとするが、見た目が可愛いので怖がっている感じはない。
それどころか2匹の食べる勢いを見て追加でお菓子を持ってきてくれた。
そのままお茶を飲んだりお菓子を食べて30分ほど待っていると、部屋の扉がノックされる。
誰か来た! よかった! そろそろなにか進展がないとノアとネージュが王宮中のお菓子を食べ尽くすところだったわ!!
「失礼します。皇帝陛下と皇太子殿下が参りました」
皇帝陛下!? なぜ!?
急いで膝からノアとネージュを下ろし立ち上がると、すぐに扉が開いた。
この人がラルージュ帝国の皇帝陛下……。
皇帝陛下に続き、皇太子殿下、上級貴族らしき男性、騎士団長が入ってくる。
皇帝陛下は皇太子殿下と同じ美しいプラチナブロンドの髪にブルーダイヤの瞳。皇太子殿下のお顔は皇妃様に似ていると聞いていたが、色が同じだからか皇太子殿下が歳をとったらこうなるのかなと思うくらい皇帝陛下とも似ているように見える。
「私はラルージュ帝国皇帝、クウェトスラフ・ラルージュ。後ろにいるのはこの国宰相のトリスターノ・ビノヴァーだ。
この度は急に呼び出したにも関わらず王宮まで来ていただき感謝する」
私は片足を下げ膝を折り、深く頭を下げる。
「冒険者のリアと申します。こちらは従魔のノアとネージュです。
まだお力になれるかわかりませんが、できることは精一杯協力させていただきます」
「そんなにかしこまらなくてもよい。ここは非公式の場で私たちしかいないのだから。
さぁ座りなさい」
「失礼いたします」
ソファに座ると目の前のテーブルには先ほどまでノアとネージュがお菓子を山ほど食べていた痕跡が。
は、恥ずかしい……。
「ん? あぁ、よいよい!
どうだ? うちの料理人の作る菓子は美味いだろう?」
「美味かったぞ! 腹一杯食べた!」
「そうだな。美味かった!」
ひょえええぇぇぇぇぇ!!!!
「も、申し訳ございません!
ノア!! ネージュ!! あなた達皇帝陛下になんて口の聞き方なの!!」
「アッハッハッ! 本当に人語を話すのだな! ああ、私も魔物にまで敬えなどと言うつもりはない。そのままでよい」
皇帝陛下はノアとネージュに「本当に大森林の奥地に住んでいるのか?」、「魔法で小さくなっていると聞いたのだが……」などと気軽に話しかけてくれ、ノアとネージュもいつも通り返している。
「元の姿だとどのくらい大きいのだ?」
皇帝陛下がそう問いかけると、お調子者ネージュがこの1番大人しくしてほしい状況のなか段々と調子に乗りはじめる。
「このくらいだぜ!」
小さな状態のネージュが両脚を広げて一生懸命説明するが伝わらない。
「ん〜、このくらいか?」
「違う違う! もっとだよ!」
皇帝陛下は魔物など見る機会がないのか両手を広げ「このくらいか?」と聞いているが全然大きさが足りない。
「よし! じゃあ本当の姿を見せてやるぜ!」
え!?
「おぉ! 本当か!! この部屋でも大丈夫か!?」
えぇ!?
「おう! ここら辺なら大丈夫だ!」
ネージュはそう言うとピョンとソファから飛び降りスペースのある場所へ移動する。
本気なの!?
冒険者でも気絶するくらいだというのに!
ここで皇帝陛下が気を失ったら大変なことになる。
宰相様も皇帝陛下の後ろで「本気か!?」と青い顔をしている。
「ネージュ、やめましょう! 危ないわ!」
「危なくないぜ! ここなら広いし大丈夫だ!」
違う! 危ないのはネージュじゃなくて皇帝陛下だよ!!
「よいよい! 私が見たいと言っているのだから、何か壊れても怒らんぞ! ハッハッハッ!」
違う!! そうじゃないんです!! 私は陛下の心配をしているんです!!
「いくぜ!」
陛下がいいと言っているので強く止めることもできず、ネージュは魔法を解き元の姿に戻り始める。
ああぁぁぁ〜!!
元の姿に戻ったネージュは部屋が広いから物を壊しはしないが、外にいる時よりも圧が強い。
「陛下! 大丈夫ですか!?」
騎士団長が声を上げた方を見ると、皇帝陛下がソファに沈むように座り青い顔をしている。
「失礼しました!!
ネージュ! すぐに小さくなって!!」
「……大丈夫だよ。思っていたよりも大きく立派でな。少し足が震えただけだ。すぐに慣れる。」
皇帝陛下は自身を落ち着かせるように何度か深く深呼吸する。
「いやぁ〜、私は世界中の重鎮達と会って張り詰めた空気の中取引をしてきたつもりだったが、こんなに圧を感じ足が震えたのは初めてだよ。ハッハッハッ」
そう笑う皇帝陛下の顔色はもう戻りつつある。さすがとしか言いようがない。
「……触っても良いかな?」
それどころか皇帝陛下はネージュを触ることもチャレンジしようとしている。
皇帝陛下よりも、そんな皇帝陛下を側で見守っている宰相様の顔色がどんどん悪くなってきていて心配だ。
「いいぜ! 俺の毛はリアがクリーンを使ってくれるからいつもピカピカふわふわだせ!」
「おぉ〜! ふわふわで艶々だ! 触り心地が物凄くいい!!」
皇帝陛下は先ほどまで青くなっていたのを感じさせないほどネージュと戯れている。この調子では乗りたいとか言い出しかねない。
そんなことになったら宰相様が心労で倒れてしまう。
「父上、そのへんにしてください。本題に入りましょう。」
良いタイミングで皇太子殿下が声をかけてくれる。救われた!
「おお、そうであったな! では本題に入ろうか。」
そう言ってソファに座った皇帝陛下は先ほどまでの親しみやすい雰囲気が消え、真剣で威厳のある顔つきに変わった。
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