第36話
「ウォ〜ン! ウォンウォン! ウォ〜ン!」
う、うるさっ!
体が大きいからかものすごい声量で耳がおかしくなりそうだ。
「おい! 白銀の!!」
フェンリルは上を向いて大声で吠えておりノアの声が聞こえていないようだ。
「ウォ〜ン! ウォンウ「おい!! おい!! 白銀の!!! うるさいぞ!!」
ノアが何度も呼びかけたらやっと気がついたようで、ん?と小首を傾げてこちらをみる。
「お? おぉ! 黒羽の! ここずっと縄張りにいないようだったから心配していたんだぞ!」
おお! この子もかなり流暢に人語を話すのね! さすがノアのお友達!
フェンリルはノアが無事だったのを確認できたからか嬉しそうにニコニコしながらこちらに歩いてくると、ノアがフェンリルを嘴でつんつんしたりフェンリルがノアをはむはむしたり。
もふもふ2人でわちゃわちゃしててすっごく可愛い……!
しばらく2人のわちゃわちゃを後ろで眺めていると、私に気がついたフェンリルがこちらを見ながら「なんだこの人間は?」とノアに聞く。
「あぁ、リアは私の主だ」
「……なんだと?」
先程のニコニコ元気なフェンリルの雰囲気が途端に変わる。
「だから、私に主ができたんだ」
ガルルルルル!!
「お前!! よくも黒羽を!!!」
最初にノアを追っていた人のように私が無理矢理ノアを従魔にしたと思ったのだろう。
フェンリルは牙を剥きこちらに飛びかかってくる。
「おい! 白銀の!! やめろ!!!」
ノアは自分の友達が私に攻撃をするとは全く思っていなかったようで、止めに入ろうとするが間に合わない。
「【シールド】!!」
私が急いでシールドを張るとフェンリルはそれに気がついたのか驚いたように目を見張り、地面に爪を立て止まろうとするが近距離からものすごい勢いでこちらに向かっていたのでもう止まれない。
「危ない!」
ごっちーーーん!!
ものすごい勢いでシールドに頭から突っ込んだフェンリルはそのまま白目をむいて地面にひっくり返った。
慌ててシールドを解きフェンリルの元に駆け寄るがピクリとも動かない。
「ど、どうしよう! ノアのお友達なのに!」
リアは慌ててノアを見るが、ノアは呆れたようにため息をつく。
「いやいや、今回のことは話を聞かなかったこいつが悪いのだ。
まさか白銀のがいきなり攻撃を仕掛けるとは……」
自分の友達がしでかしたことにショックを受けたのかションボリとうなだれて落ち込んでいる。
「とりあえずこのままにして置けないから中に運びましょう」
このフェンリルもかなりの大きさだが、ノアほど横幅がないのでこのままでもなんとか家に入れられそうだ。
重力魔法でフェンリルを浮かし奥の部屋に運ぶと、ノアの寝床を借りてクッションの上に寝かせた。
「一応ヒールかけたから大丈夫かな?」
「大丈夫大丈夫! そのうち起きるだろう。
それよりさっき言っていた違う味のピザというのを焼こう!」
友達が気を失っていると言うのにノアは呑気なものだ。
まぁフェンリルだからこんなことくらいでは怪我もないと思うのだけれど。
まぁ確かにただ起きるのを待っていても仕方がないので作っている途中のピザを作ってしまおう。
釜から出してまずは涎を垂らして待っているノアに出し、私も食べようと椅子に座った時にフェンリルの鼻がヒクヒクと動いているのが見えた。
「ノア、この子の鼻が動いたわ! 起きるんじゃないかしら?」
「確かに動いているな」
ノアと一緒にフェンリルの顔の前に座り覗き込むと、確かに鼻が動いているのがわかった。
「そろそろ起きるかな?」「まだか?」なんて言いながら眺めていると、耳がピクピクッと動き目がゆっくりと開く。
「ん?なんだこの良い匂いは……、って、お前は!!」
目の前にあった私の顔を見るとカバッと立ち上がり後ろに下がろうとして壁にぶつかると驚いて飛び上がり慌てて周りを確認する。
グルルルルルルル!!
周りをぐるっと見回すと今度は私を見てまた威嚇をはじめた。
「いたっ! 痛いぞ黒羽の!!」
そしてノアに嘴でつつかれる。
「何をするのだ!」
「それはこちらのセリフだ! 私の主に何をする!」
「なっ! 俺はお前のためにやっているのだ!!」
「いいから大人しくしろっ!」とノアにまたつつかれ、フェンリルは渋々と一旦腰を下ろした。
はじめはなぜ自分が怒られなければならないんだ! と思っているのが誰が見てもわかるような表情をしていたが、ノアから私と出会い従魔になった経緯を聞くにつれて、不機嫌な顔が真顔になり、今は口を開けてプルプルしている。
人間だったなら青ざめているんだろうな。
フェンリルだから毛が生えていて顔色はわからないんだけれど。
「す、すまないっ!」
ガバッと伏せの体勢になり頭を下げると無理矢理ノアを従魔にしたと勘違いしたと謝る。
攻撃されたとはいえ私は無傷だし、ノアを思っての事だし。 むしろ私がフェンリルさんに痛い思いをさせてしまったのだから全然気にしないでほしいと伝えるが、フェンリルさんはそれでは気が済まないのかさらにペコペコ頭を下げ謝ってくる。
もういいよ、怒ってないよ。と伝えているのに、しまいには「く、黒羽のっ! 命の恩人に……なんでごどおぉ〜!!」とうぉんうぉん言いながら泣き出してしまった。
しばらく宥めていると、フェンリルはいきなりお腹を見せて手足を広げ仰向けになった。
「黒羽を助けてもらったにもかかかわらず、勘違いで命を狙ったのにそれを許してくれると言う。
そうですかとこのまま去るなどフェンリルの恥だ!
お詫びに私も従魔になろう」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます