第35話


「ふぅ」


 ノアのお家の大改造を始めて数時間。

 途中から楽しくなってきてしまい魔法をフル活用してどんどん作業を進めている。

 正直やりすぎた感もある。

 しばらく泊まれるようにと思って始めたのにもはやここに住んだほうがいいんじゃないのってレベルで改造してしまった。


 まず洞窟のままだったお家の壁と床は風魔法でツルツルに整えた。入り口から枝分かれしていて何部屋もあるから時間がかかるかと思ったが風の刃でシュンシュンシュンっとやったら一瞬だった。

 ノアがキマイラに使われたと騒いでいた寝床はノアのお宝部屋にあったマジックバッグに入っていた高級そうな毛皮に鳥魔物の羽を敷き詰めてふわふわで大きなクッションを作った。草の寝床よりはだいぶ寝心地もいい思うのでこれなら気に入ってくれるはず。

 後は家具も必要だわ! と風魔法を使って外から木を伐採してきてベッドフレームやテーブルや椅子などの家具も作った。

魔法操作の練習だー! なんて言ってデザインにも凝っちゃったりして。公爵令嬢だった頃に沢山の高級品を見て培ったセンスで作成したので素晴らしい出来になった。

 しかもどれも大森林の巨大木から削り出した継ぎ目のない一級品だ。買ったらものすごく高いだろうという品が次々とあっという間に出来上がった。


 家具制作が終わって、お宝部屋で使えるものがないか漁っていたらおしゃれな魔道ランプがいくつも出てきたのでそれも天井から吊るしてみた。

 今までは私が光魔法を使っていたから私がいないと真っ暗だったけど、これならノアしかいなくても明るくていいね! おしゃれだし!


 あと料理もするからキッチンもないとね! ってことでかまどを作り、お宝部屋にあった魔道コンロを設置する。

 立派な窯もあってピザとか丸鳥も焼ける仕上がりだ。


 それと家があるならクリーン魔法だけじゃなくて湯船にも浸かりたいよねってことで空いている部屋を丸ごと1部屋使いお風呂も作る。

 せっかくだしノアも入れるような大きな浴槽を作った。

お風呂の習慣がないグリフォンもこれでお風呂の虜になること間違いなしだ!

 排水をどうしようか悩んだけど力技で魔法を使って地面を掘って川まで繋げた。

 ついでにキッチンと洗面台も排水できるように掘った。

やってみれば意外となんとかなるものね。


 うーん、なんか元々の洞窟が広すぎて部屋が寂しく見えるわ。

 そうだ! 盗賊討伐の時のデブブ伯爵の絨毯を敷いて絵画を飾って……。

 うん、いい感じ!


 最後に各部屋と玄関にドアをつけて、完成〜!

 ドアの下には小さな扉をつけた。これならノアも鳥魔物に擬態すれば通れるはず。


 途中から変なテンションになってここまでやってしまったが、後悔はしていない。

 短期間とはいえ住みやすいほうがいいに決まっているわ!


 うんうん。と出来栄えに感動していると玄関から「な、な、なんだこれはー!!」とノアの叫び声が聞こえた。

 縄張りの見回りに行ったノアが帰ってきたようだ。

 きっとノアもこの出来栄えに感動しているところだろう。


 しばらく待っていると小型の鳥型魔物に擬態したノアがぴょこぴょことドア下の扉から部屋に入ってくる。


「リア! なんなのだこれは!」


「えっと……、お家?」


「ちっがーう!

どう考えてもやりすぎだろう! 旅の途中で泊まってきた宿よりも豪華になっているぞ!! ここは一時的な拠点のはずだろう!?」


 一気に喋ったからかフーフー息を切らしている。


「まぁまぁ、ノアも住み心地が良いほうがいいって言ってたじゃない!

ほら! ノアの新しい寝床もあるよ!」


 そう言ってノアの新しいフカフカな寝床をお披露目すると、「まぁいいだろう」とかなんとか口では言いながら気に入ったようでしばらく寝床から動かなかった。


 今日の夕食は窯を作ったのでピザにした。

 出来立てのピザはすごく美味しくて、ノアも美味しい美味しいとたくさんおかわりをしている。

 さっそくこの家の素晴らしさがノアにも伝わってきたようだ。


 せっかくだし違う味のピザも焼こうかな〜なんて思いながら準備をしていると、外から急に魔物の鳴き声が聞こえ始める。


「なに!? もしかしてピザの匂いで魔物が寄ってきたのかしら」


 流石に大森林でピザはダメだったか……。と思い反省していると、ノアが「違う」と言う。


「この声はアイツだ!

ほら、縄張りが隣の友達がいるって言っただろう。

きっと私が久しぶりに戻ったのに気がついて様子を見にきたんだ!」


 あぁ!

 挨拶に行こうって言っていたお友達ね!


 それなら待たせてはいけないと急いでノアの後について外に出ると、立派な白銀の毛をもつフェンリルがお座りをして玄関に向かって遠吠えをしていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る