第33話
「よし、私たちもそろそろ出ようか」
大森林の魔物は奥に行くにつれて強くなっていく。
グリフォンの中でも上位のノアが住んでいたのはかなり奥の方らしい。
魔物を出来るだけ狩っていって隣国に着いたら売る予定なので空は飛ばずにノアに乗って地を移動する。
荷物をササッとアイテムボックスにしまうとノアに跨り、道を逸れて森の中へと入っていく。
「さすが大森林。凄いわね」
大森林の木々は他より大きいからからか圧があるような気がしてしまう。
それに大森林には強い魔物が多いだけではなく、レアな素材や大森林にしかいない種もいるからかなんだか不思議な雰囲気だ。
「リア、さっそく何か来たぞ」
ノアに言われて横を見ると、木々の奥がガサガサと揺れているのが見える。
「あれは……、虎かしら?」
奥から見ててきたのは黄色に黒い模様の入った虎だった。
虎と言っても大きさは4メートル程あり、顎の上下から鋭く大きい牙が飛び出している。
普通の森だったらその森の主になるほどの魔物なのに、この大森林では浅いところに出るその他大勢の魔物になってしまうのが恐ろしい。
鑑定したところキラーサーベルタイガーというらしいこの魔物は私たちの元に辿り着いた瞬間にノアの爪によるひと払いで首元を掻き切られて倒れた。
「ふん、バカめ。私とリアの力量も読めないとはな!」
さすがノア! 大森林の奥に住んでいただけあってこの辺りの魔物じゃ相手にならないわね。
キラーサーベルタイガーをアイテムボックスに入れ、ノアに乗ったままどんどん森の奥へ進む。
ノアがいるからか弱い魔物は寄ってこないのでアイテムボックスにはどんどん良い素材が溜まっていくし、弱い魔物に煩わされないから進みも早くて順調だ。
ノアの縄張りまで1週間くらいはかかるかなと思っていたけど、この調子ならもう少し早く着けそうだ。
夜も普通なら大森林の中で寝たらその辺にいる魔物にパクっと食べられちゃうけどノアがいるから安心!
元々大森林に住んでいたノアは魔物の気配で起きられるらしい。
私の従魔になったきっかけの事件の時は寝ている時に魔道具で攻撃されてやられたんじゃなかったっけ? 本当に大丈夫? と思ったが、あれは久しぶりに大森林から出てきて疲れで熟睡していたのと、大森林の奥から出てきていたから自分を襲うような強者はいないと油断していたかららしい。
「だから大丈夫だ! 夜の見張りは任せろ!」と張り切って言ってくれたので夜の見張りはノアに任せて私はゆっくり寝ることにした。
そんな日々を続けること5日。
「ここら辺からが私の縄張りだ。私が住んでいた洞窟までもあと少しだ」
「おぉ! やっと到着するのね!」
馬よりも乗りやすいといっても5日もノアに乗りっぱなしは流石に大変だった。
回復魔法をかけながらとはいえ、そろそろ腰とお尻が限界を迎えるところだったわ。
もうすぐ着くと聞いてから10分ほどすると森の奥から岩壁のようなものが見えてくる。
「あそこに洞窟がある。しばらく空けていたがそのまま残っているといいが……」
確かに私がノアと出会ってから結構経つから荒らされていないか心配だわ。
「うわぁ、大きい」
岩壁の前に立つとその大きさがよくわかる。
高さもかなりなものだが、右を向いても左を向いても終わりが見えない。
「この岩壁の向こうは住む魔物のレベルが違う。
主に竜種のような、私でも勝てないような強者がうじゃうじゃ住んでいるぞ。
まぁ私が一緒にいるから大丈夫だろうが、この岩壁の向こうには行かないように気をつけてくれ」
竜種!!
上位の竜は前世でも1度か2度見たことがあるくらいだ。
ワイバーンやレッサードラゴンなんかの下位のやつは狩ったことがあるけどね。
下位と言ってもそこらの魔物じゃ比べ物にならないくらいには強かった記憶があるけど。
つい行ってみたい! と思ってしまったけど、残念だけどここに住んでいたノアが行かないようにと言っているのだから言うことを聞いたほうがよさそうだ。残念だけど!
「着いたぞ! あそこが私の住処だ」
先を見ると岩壁の一部が窪んでおり洞窟のようになっている。
洞窟と言っていたが入り口は思っていたよりも大きく中も広そうだ。
「おおー。凄い! けど、真っ暗だね」
中に入ろうとしたが真っ暗で何も見えない。
そうだよね、洞窟だもんね。
「【ライト】」
魔法で光球をつくり宙に浮かべる。
「さ、これで大丈夫ね! お邪魔します!」
入っていくと中には空間がいくつかあるようで、先が枝分かれしている。
「空間はいくつかあるが主に使っていたのは1番奥の大きな所だが……、お呼びでない客が来ているようだ」
探知を使ってみると確かに奥に大きな反応がある。
ノアと目を見合わせ、すぐに魔法を発動できるように準備をしてから奥の部屋へと進む。
グルルルルルルル
光に照らされて見えてきたのは獅子の顔に山羊の角、蛇の尾を生やした魔物だった。
「あれは……、キマイラだわ」
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