第10話

 魔法をかけるとグリフォンが温かく優しい金の粒が輝く光に包まれる。

 数秒経つと光が徐々に収まり、怪我も治り羽ツヤも良い立派なグリフォンが立っていた。


「な!? 治った……!?」


 グリフォンは驚いたのか翼を広げたり脚を動かしたりして自身の身体をキョロキョロと見回している。

 一通り身体を確認した後、こちらを向き頭を下げた。


「助けてもらっただけでなく傷まで治してもらい、本当に感謝する」


 こんなに強そうなのに何故ここまで追い詰められたのかと聞くと、久しぶりに大森林の奥から出て来て散歩していた時に、遠出して疲れたので休憩していたらいつの間にかぐっすり寝入っていたらしい。

 それで人間が近づいていたのに気がつかず、気づいた頃には魔道具で一斉攻撃を受けていたということだ。

 もともとグリフォンは強い魔物でこのグリフォンはその中でもかなり強いほうらしい。

 なので普段は気をつけなくても何かに襲われるようなことはないので油断してしまったということだ。


 偶然でも私が居合わせて助けられてよかった。

 グリフォンを襲っていた8人はまだ気を失って転がっている。

 ……この人たちどうしよう。 

 知能があるとはいえ別に魔物を倒したり捕まえたりするのは犯罪じゃないのよね。

 とりあえず起きて追いかけられても嫌なので手は縛っておこう。


「【植物生成】」


 魔法で蔦を創り出し8人の両手首を縛る。


「さ、これで時間稼ぎはできるでしょう。怪我も無くなったんだし今のうちに逃げなさい」


 「翼も治ったから空も飛べるし、空を逃げればもうこの人たちに捕まることはないでしょ」。そう伝えるがグリフォンはなかなか逃げない。


「助けがなければあのまま捕まり、魔道具で自由を奪われ戦争の道具にされていたかもしれん。こんな大恩を受けたまま立ち去ることはできない。側にいて恩を返したいのだ」


 えぇ!?


「そばにいるって……、それって従魔になるってこと!?」


「恩が返せるのならそれでいい。それに旅をしているなら私に乗って進んだ方が速いぞ」


 ええー。

 すごく強そうだし嬉しいんだけど、グリフォンなんて連れてたら目立ってしょうがないんだけど。

 それにグリフォンに乗って向かうにしてもそんなにすぐ国境に着いたら時系列が合わなくなっちゃうし、町を通った形跡がなくて急に国境に現れたら不審だ。

 国境を通ったのは本当にオレリア本人か? なんて話しになったら大変なことになる。


「申し訳ないんだけど、今は事情があって目立つわけにはいかないの」


「ではこれならどうだ?」


 そうグリフォンは言うと身体がどんどん小さくなり、最終的には肩にギリギリ乗るくらいの大きさの鳥になった。


 なんの鳥だろう? ミミズクみたいに頭の上にピョコっと羽が生えていてかわいい。

 これなら目立たないから大丈夫かな。


「グリフォンとバレなければ大丈夫だけど、でも従魔になるって本当にいいの?」


 こんなに強い魔物なのに人に従うなんて、本当にいいのだろうか?


「男に二言はない。恩人には恩を返す」


 何度聞いても着いてくると言うので、とりあえず従魔にすることにする。

 もしこの子が嫌になったらその時お別れすればいいわよね。


「じゃあとりあえずはこいつらが起きる前に出発しちゃいましょ!」


 街道を国境に向けて走り出す。

 きっとこいつらが気がついたら追ってくるだろうから、身体強化とヒールを使い出来るだけ先に進んでおく。


「ねぇ、これから一緒に過ごすわけだから聞きたいんだけどあなた名前はなんて言うの?

私はオレリア。でも今はリアって名乗ってるからリアって呼んでね」


「リアか。これからよろしく頼む。

私は大森林の中で魔物ばかりの環境だったのだ、名前などない」


 そう言うがこれからずっとグリフォンって呼ぶわけにもいかないし……。


「主人になったのだからリアが名前をつけてくれ」


 ええ! 名付けって、重大任務じゃないの!

 うーん、そうね。この立派なグリフォンにぴったりな名前がいいわ。


「……ノアはどうかしら?

“自由”って意味なの。空を自由に飛び回れるあなたにピッタリでしょう?それに私とお揃いみたいだわ!」


「ノア、か。気に入った!

それに私は今日リアに自由を貰ったのだ。この出会いにもピッタリな名だ」


 よかった。気に入ってもらえたみたいだ。


 あれから1人と1匹で街道を爆走。

 グリフォン事件で時間を取られた分は取り返せたかな。


 食事は私は今まで通り。

 ノアは一応なんでも食べれるが、今までは自分で魔物を狩って食べてたというので肉を少し焼いてレアで出してあげた。

 ただ食べる量が多いのでこれからはノアにも魔物を狩ってもらわないとね。


 そう伝えたらノアが張り切って魔物を倒してくれたので3日間でものすごい量の魔物が狩れた。

 今までは街道に出てきた魔物だけ狩っていたけど、ノアは近くに魔物の気配があると「ちょっと行ってくる」と言って狩りに出かけてしまう。

 まぁ数分したら周りに人がいない時を見計らって獲物を持って私のところに戻ってくるからいいんだけどね。


「もうそろそろフィリベールに到着するわ。

ノアは念話もできる?せっかく鳥に擬態しても喋ったら目立ってしまうから」


『できるぞ、この通りだ』


 これなら一緒に町に入っても大丈夫そうだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る