第9話
「えいっ! 【ウィンドカッター】、【ストーンバレット】!」
こちらに群れで向かってきた昆虫型の魔物をまとめて魔法で倒す。
「うえぇ。
昆虫型って肉も食べれないし、何より見た目が苦手だわ。
【鑑定】、メタルマンティスね」
肉は食べられないけど甲殻が硬いから良い素材が取れるみたいで特に2本の鎌が武器の素材として人気みたい。
気持ちが悪いけどお金のためだ、と異空間収納にしまう。
一息つきまた街道を進もうと走り出そうとした瞬間、探知魔法大きな反応が現れる。
「こんなところにこんなに強い魔物がいるなんて、おかしいわ」
急いでその場を離れようとするが魔物のスピードが早く間に合いそうにない。
「これはまずいわね、かなり強い魔物だわ」
このままだと鉢合わせてしまうけれど、伝説の魔法使いだった私も今世ではまだ魔法を使い始めて数日。こんな肩慣らし中の状態では手こずることは間違いない。
そんなことを考えているうちに街道横の林が揺れ始めた。
出てくる……!
ガサガサと木をかき分け、ズッシリとしたものすごく立派なグリフォンが飛び出してくる。
グルルルルルル!!!
私を見つけ威嚇をするが、なんだか力がない。
「ひどい!ボロボロだわ」
よく見ると翼と足は折れ、身体中に傷ができている。
こんなに立派なグリフォンがここまでやられるなんて!
「こっちだ! こっちにいたぞ!!」
「魔道具を用意しておけ!」
「反対側にも回れ! 絶対逃すなよ!」
誰かに追われている?
けれど追っている人物にはあまり強さを感じない。
王侯貴族には強い魔物を魔道具を使い飼い慣らし戦に使ったり愛玩用に飼う者もいると聞くから、捕まえて売るために不意をつかれ魔道具を使われたのだろう。
グリフォンは近づいてくる追手を気にしつつも、もう足の力が入らないのか諦めてその場に倒れ込む。
普段は私も魔物を狩るけれどグリフォンとかドラゴンとかフェンリルとか、力が強く知能の高い魔物は必要がない限りあまり狩りたくない。
それに私は言葉のわかるような知能の高い魔物を無理矢理従わせるのはあまり好きじゃない。
「うーん、とりあえず【シールド】」
グリフォンは急に防御魔法をかけられて驚いたのか頭を上げてこちらを見る。
「おい! どうなってる!
なんで魔道具が通じないんだ!?」
そこへグリフォンを追っていた人たちが追いつき魔道具を使い攻撃をし始めるが攻撃が通じなくて戸惑っている。
うーん、グリフォンは助けたいけどこの人たちはどうしよう。
えいっ、「【パラライズ】」
これで動けなくなったはず。
えーっと……8人、結構いるのね。
「何者だ!」とか「何をした!」とか「邪魔するな!」とか、8人がそれぞれ同時に叫んでいるからものすごくうるさい。
「【パラライズ】」
うるさいのでもう1回、さっきより多めに魔力を込めると気を失ったのか大人しくなった。
「さて、大丈夫? 人の言葉はわかる?」
「あぁ、助かった。
礼を言う。ありがとう」
グリフォンはしっかりとした人間の言葉で返してきた。
「驚いたわ。あなた話せるのね」
初めに見た時からものすごく立派なグリフォンだと思ってはいたが、まさか人の言葉をここまで流暢に話せるなんて!
力の強い魔物は人の言葉が分かるというが、それは分かるというだけで話せるわけではない。大体は仕草で返事を返してきたり、念話で意思を伝えてきたり。話せてももっと片言の言葉で返してきたり。
上位のドラゴンなどは流暢に話すと聞くが、強い魔物が多い大森林の最奥に住むという上位のドラゴンには今のところは会ったことがない。
「あなたの傷を治したいんだけれど、シールドを解いても襲わないでもらえるかしら?」
「ありがたい申し出だが、この通り翼は折れ足は千切れかけている。
回復魔法が使えたとしても治すのは難しいだろう」
グリフォンはそう悲しそうに言うが、前世で伝説の魔法使いだったアデライトの記憶と今世の私の膨大な魔力をナメないでほしい。
「いいから、やってみるだけやってみるわ!」とシールドを解き、ふー! っと息を吐き気合いを入れる。
よし!
一気に魔力を練り込みグリフォンに向けて魔法を放った。
「【エクストラハイヒール】!」
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