第8話
「ここだわ」
1、2店舗目のことがあったから気合を入れて店に入る。
この店はジュエリーが専門というわけではなくて、ジュエリー以外にも服や革製品や美容用品など色々扱っているみたい。
なんだかこのお店聞いたことある名前なのよね。なんて考えていると店の奥から男の人がこちらに向かってくる。
「え! ラムダさん?」
街道で野営をしていた時にスープを売って欲しいと言ってきた商人さんだ。
そうだ! 《金色の小枝》って、ラムダさんの店の名前だわ!
別れる時に必要なものがあったら買いに行くと約束して名前まで聞いたのにすっかり忘れてた!
「リアさん! 来てくれたんですね。
いやー、よかった! 約束したのはよいものの旅の方のようですし、寄る時間はないかもしれないなと思っていたのですよ。
それで、今日はなにをお探しですか?」
「実は買い物じゃなくて、買取先を探してるジュエリーの査定をしていただきたいんです」
そう言うとラムダさんは、「うちは買い取りもしてますからね。任せてください!」と胸をドンとたたき、査定ができる者を呼びに行った。
店の商品を見て待っていると、少ししてラムダさんと一緒にシルバーヘアの60代くらいの上品な男性が出てくる。
「リアさん、お待たせしました。うちの査定担当のイレールです」
そうラムダさんに紹介されたイレールさんはこちらを見ると丁寧に頭を下げる。
「イレールと申します。よろしくお願いいたします」
今のところイレールさんは今までの2店舗の査定担当と違って私の見た目で侮ったりはしていないようだ。
「よろしくお願いします」
テーブルに案内されて2人と向かい合ってソファに座り、イレールさんがジュエリーが傷つかないようにテーブルに柔らかそうな布を敷き、手袋を着ける。
「こちらにお出しください」
そう言われ今まで通り試しにネックレスを1点出す。
「おぉ! これは素晴らしいですな」
イレールさんはそう言うとルーペを出しじっくりと査定を始める。
「状態も良いですね、これならば大金貨6枚ほどで買い取れます」
大金貨6枚だと、60万リルね。
買った時は新品で100万リルくらいだったはずだからかなり良い金額だわ! ここなら信用できるし、もう何点か売っても大丈夫だろう。
「その値段で買い取りをお願いします。
他にも何点か見ていただいてもいいですか?」
「もちろんですよ!」
最終的に5点買い取りしてもらったが、どれも納得のできる値段だった。
持ってきたジュエリーはまだまだあるけれど、高価なジュエリーを一気に売って怪しまれたら嫌なので今日はもう辞めておこう。
今日の5点で340万リルになったので、このままいけば隣国に行った後に家を買えるかもしれない。
「また何かありましたら当店をよろしくお願いします」
そうイーレルさんに言われたがすぐに隣国に向かわなければいけないし、隣国に行ったらここには戻れない。
旅の途中なのですぐ旅立たなければいけないと伝えるとラムダさんがすごく残念がってくれた。
ラムダさんのおかげで冒険者登録もできたし今回町に寄る目的にしていたジュエリーの買取も済んだ。
今日はまた宿に泊まってゆっくり過ごして明日の朝にでも出発しよう。
さっそく昨日と同じ宿に向かい女将さんにもう1日泊まれるか聞くと、ラッキーなことに部屋が空いていたので部屋をとって休む。
明日からまた歩き通しの日が続くからね。
結局夕食以外は部屋でだらだら過ごして朝になってしまった。
宿で朝食を食べて女将さんにお礼を言い宿をでる。
この町にきた時は身分証がなかったから玉で確認されたけど、今回は冒険者カードがあるから出る時の身分証はバッチリだ。
早く国境に着きたいからできるだけ町には寄らずにサクサク進みたいけど、ジュエリーの換金があるから宝石店のあるような大きな町には寄らなくちゃいけない。
となると次に向かうのはフィリベールね。
ここからは身体強化とヒールを重ねがけして走れば3日くらいだろう。
「よし、出発しよう!」
私は門を出て街道に向かって歩き出した。
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