第11話
「こんにちは、身分証をお願いします」
テスパトールで作った冒険者カードをみせる。
「その鳥は?」
「この鳥はここにくる途中で従魔にしたんです。冒険者ギルドで従魔登録をする予定です」
そういうと小型の鳥の魔物に見えるからかあっさり通してくれた。
「従魔が問題を起こすと主人が罰せられるから気をつけろよ」と門番さんが声をかけてくると、『私は問題など起こさないぞ!』なんてノアはぷんすかしていた。小型化している状態で怒ってもかわいいだけだ。
町に入り冒険者ギルドに向かう。まずはノアの従魔登録をしておかないとね。
カランコロン
重い扉を開け冒険者ギルドに入る。
中にはカウンターと酒場。テスパトールも同じような内装だったから冒険者ギルドってどこもこんな感じなのかな?
「こんにちは。ご依頼でしょうか?」
「いえ、今日は魔物の買取りとこの子の従魔登録をお願いします」
そういって冒険者カードを渡すと受付嬢はチラリとノアを見る。
「でしたらまずは従魔登録をしますね。
そちらは、えーと、なんの魔物でしょう?」
やばい、小さくなったからいいと思って全然考えてなかった!
「……えーと、なんの魔物でしょう?
野営してたら近くにいて、ご飯を分けてあげたら懐いたんですけどねぇ」
「うーん、珍しい種類なんですかね?
まぁ小型の魔物ですし、小型の鳥の魔物で登録しておきますね。従魔だとわかるようにこちらのタグをどこかに着けておいてください。鳥型だと脚か、大人しい子だと首に付けることが多いです」
種類の話が流れてよかった。
いくら探してもこの子の種類なんてわかるはずないからね。グリフォンだし。
あとはタグをどうするかだよね。
受け取ったタグは金属で出来ていて、穴が空いておりチェーンなどを通せるようになっている。
従魔とわかるように早く着けておきたいから考えておかないと。
「って、え? えぇ!?」
従魔について冒険者カードに記録している受付嬢が急に驚き出す。
え、なんだろう?
受付嬢がこちらに近づいてきたかと思うと小声で話しかけてきた。
「あ、あの。アイテムボックス持ちと記載があるのですが、本当でしょうか?」
あぁ! 前回テスパトールで説明の手間がかからないようにって記載してくれたのよね。それを見て驚いてたのか。
「本当です。
なので量もありますし、魔物の買取は倉庫でお願いします」
「かしこまりました。ご案内します」
そう言って立ち上がりギルドの奥へ向かう受付嬢について行く。
「魔物の買取の方お願いします」
倉庫には体格の良い男の人が何人かいる。
魔物を運ぶのも解体も体力がいるから、怪我や歳で引退した元冒険者が多いみたいだ。
その中でも特に体格の良い筋肉ムキムキのお兄さんが受付嬢のところへ来る。
片目に眼帯をしてるから、もしかしたら目の怪我で引退して冒険者ギルドで働いてるのかな?
魔物は? とか嘘だろ。とか聞こえるので、アイテムボックスのことを説明しているのだろう。
とりあえずは納得できたのかお兄さんがこっちにきて魔物を出せる場所を空けてくれる。
「ここに出してくれ」
そう口では言っているがこんな小娘が本当にアイテムボックスを持ってるのか? という半信半疑の目で私を見ている。
私は気にせずノアと狩った3日分の魔物を次々だした。
一見無反応に見えるが、お兄さんの目が見開かれているので驚いているっぽい。
しばらくはアイテムボックスから魔物が出てくるのを呆然と見ていたが、ノアが初めに狩った魔物を見ると声をかけてきた。
「なんだ? これだけ傷がひどいな」
そう言われてノアがムッとしている。
『初めだから知らなかっただけだ! こっちの綺麗な方も私が狩ったんだぞ!』
ノアは今まで魔物を狩るのは自分で食べる時だけだったから素材を傷つけないという考えすらなかったのだ。
私の従魔になると決まって歩き出して少しした頃、横の林から街道に出てきた魔物を見つけたノアは自分の力を見せたかったのか何も言う間もなく魔物に飛びかかって行ってしまった。
走って追いかけて、追いついた頃には鋭い10本の爪と4本の牙を持つここら辺で出る魔物の中では特に強いはずのクローグリズリーがズタズタになって転がっていた。
これからは肉以外の素材は売るから攻撃は最小限でとお願いするとわかりやすく落ち込んでいたが、そのあとすぐにまた出たクローグリズリーはきっちり急所を一撃で倒してくれた。
「量があるから今日金額を出すのは無理だな。
明日の夕方以降にまた来てくれ」
「わかりました。
食べられる肉は持ち帰りたいので別でお願いします」
これからはノアの分も必要だから肉は引き取らないとね。
ギルドの外に出るともう暗くなり始めていた。
早く宿を決めないと。今回からはノアもいるから従魔OKのところにしないとね。
一応冒険者ギルドで従魔も泊まれる宿を2か所聞いておいたので、まずは近い方に向かってみる。
冒険者ギルドから10分ほど歩くと入り口に男性の店員さんが立っている綺麗めな宿が見えてきた。
「すみません。
ここは従魔も泊まれるって聞いたんですけどこの子も一緒に泊まれますか?」
そう聞くと入り口の店員さんが答えてくれたが、従魔も泊まれるが部屋には連れられず、従魔には専用の厩舎があるらしい。
そうだよね。宿だもん流石に一緒の部屋は無理か。
『ノア、厩舎でも大丈夫?』
『今までずっと森で生活していたのだから気にならない。
だがあまりに狭いと嫌だな』
そうノアが言うので一旦厩舎を見せてもらったが、掃除も行き届いていて狭くもなさそうだ。
ノアがここならいいと言うので宿をここに決め厩舎にノアを預けた。
『何かあったら念話を飛ばしてくれ。
リアの魔力ならここまでも届くはずだ』
ここは食事も別で払えば従魔にも食べさせてくれるというので、肉をレアで出して欲しいと伝え大銀貨3枚を支払い私も宿に入った。
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