第6話


「アロイスさん! 買取希望の方です」


 倉庫の奥の方でイカツめの中年男性が魔物の解体をしている。この人が担当の人だろうか?


「なんだぁ?

どこに買い取るもんがあるんだよ。

小物はカウンターでやってくれって言ってるだろ」


「違いますよ!

それがこの方魔法使いで、なんとあのアイテムボックスを使えるらしいんです!!」


「そいつは本当か!?」


 なんて目の前でコソコソ言っている。

 個人情報だだもれだよ……。


「じゃ、この辺りに出してくれ!」


 そう言われたので順々に2日分全て出す。


「おおお!! 本当にアイテムボックスだ!!」


 おじさんがすごくキラキラした目でこっちを見つめてるよ……。


「そんなに珍しいですか?」


「あぁ! そもそも魔法使いとして冒険者になれるほど魔法のできるやつが少ねぇ!

アイテムボックスはそんな魔法使いの中でも使える人は少ねぇんだろ!? そりゃそう簡単には見られねぇさ!

俺は30年ギルドで働いてるが見たことあるのは、そうだなー、5人くらいだな」


 毎日何十人もの冒険者に会う仕事の人が6年に1人くらいしか会わないのか。結構少ないんだなぁ。


「ホーンラビット5匹、ワイルドウルフ2匹、ビッグホーンカウ1匹、ビッグボア3匹だな。

すごいな、全部急所を一撃だ! 皮も傷がなくて綺麗だし、アイテムボックスに入れてるから全部新鮮だ。これなら高値がつけられるぞ」


 前世ぶりにきちんと攻撃魔法を使ったから肩慣らしに精度や威力を気をつけたからね。


「ワイルドウルフ以外の肉は引き取りたいです」


 ワイルドウルフは食用向きじゃないからね。

 アイテムボックスなら腐らないし、これからの旅に必要だから食べれる肉は全部ほしい。


「わかった。

ホーンラビットの皮と魔石5匹分で金貨3枚、ワイルドウルフは肉は食えないから皮と魔石2匹分で金貨4枚、ビッグホーンカウは皮と角と魔石1匹分で金貨6枚、ビッグボアは皮と牙と魔石3匹分で大金貨1枚と金貨5枚、全部で大金貨2枚と金貨8枚でどうだろうか?

肉は明日取りに来てくれ」


 28万リルか。結構いい値段になった。


「それでお願いします」


「じゃ、受付に行って金受け取ってくれ」


 そう言われてお姉さんと受付に戻る。


「こちらが報酬の28万リルです。

あと早速ですがここまで出来る方をFランクにはしておけないのでDランクまでランクアップになります。それと次回から説明不要になるようにアイテムボックス待ちだというのは冒険者カードの記録に記載しておきました」


 そう言われて小さな布袋を渡される。

 袋に入れてもらえるのはありがたいわね。


 サッとカバンにしまうフリをしてアイテムボックスに入れる。


 冒険者カードはランクの欄が変わっただけであとは同じだ。Cランクになると銀色に変わるみたい。

ランクが高くなると身分証としての使う時の信頼度も上がるみたいなのでありがたい。


「ありがとうございました」


 さっきからチラチラと視線を感じる。魔法使いが欲しいパーティーに勧誘される前にさっさと帰りたい。


 そう思い不自然にならない程度に早歩きで出口に向かうが間に合わなかった。

 1人が声をかけてきたのをきっかけにどんどんと勧誘が増え、ギルドを出るのにかなり苦労した。


 はぁ……。ギルドを出るのが遅くなったせいでもう外は真っ暗。

 宿が並ぶ通りに向かっているが空いている部屋があるのか心配だ。

 毎日魔法を使って体は綺麗にしているからシャワーはいいけど、せっかく町に来たんだからベッドで眠りたい。


 歩いていると宿がポツポツと増えてきたがなんとなくピンとくる宿がない。

 部屋は魔法でクリーンをかけちゃえば綺麗になるけど、気分的にも最初からしっかり掃除されててそれなりに綺麗なところがいいわよね。


 ここ綺麗でいいな、と思う宿があっても思っていたより高級だったり満室だったりなかなか見つからない。


「お、ここいいかも!」


《小鳥のさえずり》


 ウッド調で素朴な感じで落ち着きそう。

 外側をパッと見ただけだけど、掃除もきちんと行き届いてる。


 カランコロン


「はーい、ご宿泊ですか?」


 女将さんかな?

 30歳くらいの優しげな女性が出てきた。


「宿泊でお願いします」


「素泊まりが大銀貨5枚で、夕食と朝食付きが大銀貨6枚です」


 食料はたくさん持ってるけど、せっかくなので宿の料理が食べたい。値段も6千リルなら全然オッケーだ。


「食事付きでお願いします」、と大銀貨6枚を渡しながら伝え、部屋の鍵を受け取り部屋に向かう。


 うん、広くはないけれど手入れの行き届いた良い部屋だわ。

 だけど念のためクリーンはかけておこう。


 食事は一階の食堂に行けばいいみたいなので持っていたカバンをアイテムボックスにしまい下に降りる。


 空いている席に座ると、もうメニューが決まっているのかすぐに料理が運ばれてきた。


「うわぁ、美味しそう!」


 今日の夕食はパンと、お肉と野菜の入った熱々のシチュー、新鮮なサラダだ。


「そうでしょう!?

うちは料理が美味しいって評判なのよ!」


 そう給仕の女性が自慢げに言うが、本当に美味しそうだ。シチューにも柔らかくなるまで煮込んだお肉がゴロゴロ入っている。


「はふ、はふっ。美味しい!」


 ここ2日間は自分で作った簡単なご飯だったし、舞踏会で倒れてからは体に優しいものを料理人が作ってくれていたのでここまでガッツリ食べたのは久しぶりだ。


 直感で入った宿だけど当たりだったわ!

 疲れもあるけど、美味しいご飯で満腹になって幸せな気持ちでぐっすり眠れた。

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