第4話

「人間の性別は、大まかに分けると三つの要素で決まるんだ。それぞれの要素が組み合わさって成り立っている」

「マイクラみたいに?」



 弓槻くんの例えに僕は小さく吹き出してしまう。なるほど、歳相応の表現ではある。



「まぁ、そうだね。

 ひとつは肉体的な性別。見た目で最も分かりやすい部分だ。学校のクラス分けや公的な書類等の記述でもここが重視されている」



 実際には性分化疾患、いわゆる半陰陽が存在するためそう単純な話ではないが、そこまで話すと弓槻くんが混乱してしまいそうなので割愛する。



「次に精神的な性別。自分のことを男の子だと思っているのか、女の子だと思っているのか。性自認とも言うね。

 ここと身体の性別が食い違っている場合をトランスセクシュアルと言うんだが、聞いたことないかい? たまにドラマや映画にもなったりしているだろ」

「? ……知らない」



 僕はおいおいと突っ込みたくなった。今の子は動画の広告表示をすぐ飛ばしてしまうのが当たり前だけど、ほんの少しはCMも見ようぜ? 自分の知らないもの、知らない世界がまだまだたくさんあるんだと知ることが出来るのだから。



「そして三つ目が性的嗜好だ。自分が男性に惹かれるのか、女性に惹かれるのか。どんな相手のどういうところを好きになるのか、と言い換えても良いだろう。

 ……さて」



 僕は弓槻くんの顔をまっすぐに見つめた。



「君は男子生徒であり、自分のことを男子と認識しており……そして、さっきの話からすると同じ男の子に対して性的な興味を抱いている。ごく健全なゲイ……ホモセクシュアルであり、ごく『普通』の人間だ。

そこを前提として、もうちょっとシミュレーションしてみようか。この三つを組み換えてみたらどうなるのか」

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