2



「……っ、どうして、優成」


「沙羅、大丈夫…?」


隣で泣きじゃくる彼女を、私はそっと慰める。


「雨音っ…!優成が…、優成が…」


私の目の前には、棺の中で、穏やかな顔をして眠る優成の姿があった。


「…っ結婚式、まだなのに、どうして!」


「辛いよね、沙羅。でも、大丈夫だから」


涙に濡れた彼女を、そっと抱き寄せる。


傷心状態の人間を落とす事は、容易い。


ー優成、あなたも使った手段だもんね


大学時代、当時沙羅と付き合っていた恋人を、私は寝取った。


その結果、傷心状態にあった彼女の心に漬け入り、彼は沙羅と交際する事になったのだ。


全ては、優成の描いた構図。


彼が女を落とす時の、常套手段であり、私は彼にとって、体の良い駒でもあった。


ー結婚する事になって、罪悪感でも芽生えたのかしら


先日、喫茶店で彼と会った際、優成は一つのUSBメモリを、私に渡してきた。


もう、私を都合良く、利用する必要は無くなったのだろう。


あれは、彼なりの手切れ金だったという訳だ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る