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「…そうか、良かったよ」
彼が、ほっと胸を撫で下ろす。
本当に、自分勝手な男だ。
「あ、そうだ。これ」
私は、白い薔薇の花束を彼に手渡す。
「え、何だよ、これ。照れるじゃん」
白薔薇を受け取った彼は、みっともなく頬を緩めている。
「お祝いよ。白薔薇には、心からの尊敬とか、相思相愛って花言葉があるの。友人の結婚へのお祝いに、好んで送られる花なのよ」
「そうか、ありがとう。あ…」
彼が、花束の中にある、一輪の折れた白薔薇に気付いた。
「あ、持ってくる途中で折れちゃったのね…。ごめんなさい」
「いや、気にしなくていいよ。折れてたって一緒さ。有難く頂戴する」
席を立った彼が、「ここは、俺が」と言ってお会計へと向かった。
私は彼に礼を告げると、一足先に店を出る。
「…雨音。君には、本当に世話になった。あの時の事も含めて」
「…気にしないで」
彼が、望んでいたであろう言葉をかける。
「雨音も、何時までも、あの時の事気にしてないでさ、早く良い人見つけろよ」
それに満足したのか、慰めの言葉をかけながら、彼は帰路へと着いて行った。
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