第4話 当然の結果

 愛海初女の告白を受け入れてから、俺の世界は一変した。


『それでですね~、明日、鶴来くんとのデートなんですよ~。どこに行くかは決まってなくて、鶴来くんの住んでる場所って田舎だから遊ぶところがないって彼は言うんですけど、だからこそいい場所っていうのが絶対あると思うんですよねぇ~』

『うん、初女ちゃん黙ろうか。今君はクイズ番組に出てるんだからね。新婚さんいらっしゃいみたいなプライベートを赤裸々に話す番組に出てるわけじゃないからね』


 ゴールデンタイムのクイズ番組。

 何を思ったか、初女は問題と問題の間のトークでのろけやがった。


「お兄。初女ちゃん、またやらかしたよ」

「ああ、見ている」


 プルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルル‼‼‼


 電話がけたたましくなる。


「お兄。また抗議の電話が来てるよ」

「ああ、聞いてる」


 初女と付き合いだしてからこれが日常になった。

 初女が全国放送でのろけ、そのたびに俺の家に電話が鳴る。

 いったいどこから調べたのか。ストーカーじみた初女のファンたちが、のろけるたびに電話を鳴り響かせる。

 時間問わず鳴り響くせいで、妹は寝不足になり、眼の下にクマを作ってしまった。

 

 ガチャ


 とりあえず電話に出てみる。


『死ねえええええええええええええええええええええええええええええ!』


 プツ……プー、プー、プー……。


 受話器を戻す。


「今回は短くて良かったね」

「だな。長々と理屈をこねてねちねちと言ってくる奴よりかは十倍良い」

「そもそもイタ電してくるなって話だけどね」

「それな」

「で、どうするの。お兄」

「どうするって?」

「こんな生活、続けてらんないでしょ?」

「…………」


 テレビを見つめる。

 そこではまだ、「俺がああしたこうした」とのろけ続けている初女が映っている。


「アイドルは恋愛しちゃいけないんだよ? このままだとお兄はともかく、初女ちゃんはストーカーに刺されて死んじゃうんじゃない?」

「ともかくってなんだ。妹よ」

「お兄からはっきり言ってやるべきなんじゃないの?」


 正論だ。

 それが正しい、全国放送で告白してきた彼女は常識で考えると明らかに間違っている。

 公共の電波はそのように使用するべきではない。


「だけど……そんな法律はないよな」


 罰則を受けるわけではない。実刑判決を受けるわけでもない。

 そりゃ、俺は凡人だから、知らないだけで放送倫理的な、放送のルール的なものを破っているのかもしれないけれども……それでも、いい悪いを判断しているのは国じゃない。世間、会社、一般の人間だ。


 俺はどうするべきか……。


「明日のデートで答えを出さなきゃな」

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